× ×
2016年12月7日

読書や自主学習だけでなく、生徒同士の興味や関心が深いところでつながる図書館

取材日:2016年12月7日
インタビュイー:司書教諭 道川恭子先生
インタビュアー:教育図鑑編集部 田口亮太

田口:在庫書籍数を教えてください。

道川先生:7万冊から8万冊くらいです。

田口:分野はどんなものが揃えられていますか?

道川先生:一番多いのはどうしても読み物系になりますけれど、それに限らず幅広い分野を取り揃えるように心がけています。図書館の分類で言えば、0から9までという形で幅広く選書しています。

【※編集部注釈:公共図書館の99%、大学図書館の92%が使用する日本の図書館の標準的な分類法「日本十進分類法」では図書は以下のように分類されています。0類 総記 /1類 哲学・宗教/2類 歴史・地理 /3類 社会科学 /4類 自然科学 /5類 技術/6類 産業 /7類 芸術 /8類 言語 /9類 文学。ちなみに図書館学の分類法はきわめて完成度の高い整理法として、情報爆発の時代ともいわれるインターネット時代にあらためて再評価されています。】

田口:同一書目が一クラス分用意されているものはありますか?またその本は何ですか?

道川先生:中学では学年ごとに30から50タイトルの課題図書を設定していまして、その中から必ず月に1冊以上読んで、ノートに感想を書いて授業を担当する国語科の教員に提出する、というのを課しています。その課題図書は貸出用として各クラスに1セットずつ揃えています。それからこれについては図書室にも貸出用のものを1セット、貸出禁止にして必ず室内にあるようにしているものを1セット、それぞれ閲覧室の専用の書架に設置しています。これに加えてさらに貸出用として書庫においている図書もあります。

田口:課題図書は誰が選んでいるのですか?

道川先生:国語科で選んでいます。何年かごとに見直して、少しずつ入れ替えています。

田口:文学作品が多いのですか?

道川先生:ノンフィクションも入っているんですけれど、やっぱりなかなか生徒は手に取らないところもあります。まずは本を読んでほしいという思いがあるので、どうしても小説が中心になるようです。

田口:毎月毎月、みんな感想を書くんですね。

道川先生:そうなんです。ただ、難なく2冊3冊と書く生徒もおりますけれど、必ずしもみんなが得意ではないですから。なかなか 書かない、書けない生徒もいるようです。もうほんとに書けないので、残して図書室に座らせて、「私も待ってるからここで読んで書いていきなさい」という場面も目にしますね(笑)。でも卒業生に会うと、そのノートを今でも持っていてくれてる子が多いようです。「〇〇先生が書いてくれた感想を覚えてます」っていう言葉を聞くことがあります。

田口:授業担当の先生が毎回感想を書かれるんですね。

道川先生:はい、コメントを。保護者の方も教員がどのような感想を書いているのかと楽しみに読んでくださってるみたいで、授業参観の時とかに呼び止められて、「先生の感想、いつも楽しみにしてます」ってプレッシャーをいただくこともあるようで…(笑)。まあ、コミュニケーションツールにもなっているんですね。

田口:それは国語の先生が人数分のコメントを書かれるんですか?

道川先生:そうですね。3クラス持っていたらだいたい120冊分。

田口::毎月?大変ですね。

道川先生:国語科の教員泣かせですよね。でも一生懸命書いてくるのに適当な感想は書けないので、真剣に書くからとても時間かかったりしているのを見ます。うれしい悲鳴でしょうね。

でも、やっぱり読書が好きな生徒ばかりではないので、提出締切日の前日になって図書室に来て「薄いのはどれですか?」とか、先輩たちに「後ろのあらすじだけを見て書けるものはどれでしょう?」「どれが書きやすいですか?」って聞いていたりとか、そういう声もちらほら耳にしてしまいます。

田口:でもそれ、ありますよね。課題図書を始めた理由はなんですか?

道川先生:本の感想を毎月1冊以上書くこと自体は、かなり昔からやっているんです。ただ自由にしていたら毎月選んでくる本が、それこそ写真集とか部活のルールブックとか、そんなものばかりが多くなってきたそうで。それなら、近現代の有名な良い文学作品に触れる機会もあまりないから、こちらである程度縛りをつけてでも、この中から読んでごらんという風にしてみようと。そういう経緯があるそうです。

課題図書:「人間失格」
課題図書:「心は孤独な数学者」
課題図書:「恩讐の彼方に」①
課題図書:「恩讐の彼方に②」

田口:図書室の座席数を教えてください。

道川先生:全部で120席あります。

田口:それは自習スペースと読書スペースを含めてですか?

道川先生:そうですね。一人ずつのブースになっている席が62席。開放的になっている席が48席あります。あと5人ずつ座れる丸テーブルが2卓です。

田口:授業で1クラスまるまる入ることはありますか?

道川先生:中学1年生の2回目か3回目の国語の時間に、こちらまで教員が連れてきます。そこで図書館の仕組みのようなものを含めて図書室の使い方などについて、私の方から、講義をするという時間を必ず設けています。

田口:生徒の利用頻度を教えてください。

道川先生:よく使う生徒はほとんど毎日のように来ますし、あまり来ない生徒もいます。自習スペースを設けていますので、本を借りるという目的以外の生徒も来ています。

田口:多い生徒だと1か月に何冊ぐらい借りますか?

道川先生:原則として1回3冊借りられるんですけれど、ほとんど毎日のように来て2、3冊借りていくという生徒もいます。

田口:月60冊とか。

道川先生:そうですね。

田口:全く借りない生徒もいますか?

道川先生:高校になると勉強などが忙しくなるので、借りないことが多くなってきますけれど、卒業までに1冊も借りないという生徒はいません。

田口:やっぱり中学1年生が多いですか?

道川先生:そうですね。中学1年生が一番多くて、学年が上がるにつれて少なくなってくるような気がします。部活動なども忙しくなってきますし。ただ本が好きな生徒はいますので、たくさん借りていく生徒はどの学年にもいます。

田口:生徒からリクエストがあった本の発注サービスはありますか?また、リクエストがあった本はどのぐらいの割合で購入されますか?

道川先生:生徒からのリクエストは、リクエスト用紙がありますのでそこに記入という形で日常的に受け付けています。リクエストされた本はかなりの割合で購入しています。ただリクエストする時は、「学校の図書室に置くことをよく考えてください」というようなことを伝えております。「例えばタレントの写真集や、検定のための本など、自分が持っていたい本や書き込みがしたいなって思うような本は、ここには似つかわしくないよね」と。結果としてそういうものはリクエストしてこないこともあって、100%に近い割合で購入しています。

田口:例えば、漫画とかそういったものはいかがでしょうか?

道川先生:漫画はないわけではありません。例えば英語版の『スヌーピー』や2か国語の『ドラえもん』などのように英語の勉強にもなるものや『あさきゆめみし』とか。あるいは日本語の語学学校の様子がちょっと面白く書かれた本のようにいわゆる異文化を面白く紹介する形であるとか。

あとは学習漫画、『世界の歴史』とか、『日本の歴史』ですとか、何かしら理由があればというと変ですけれど、単なる漫画でなければ購入はしています。

田口:ライトノベルはあまり受け付けないですか?

道川先生:受け付けないことは余りありませんが、吟味するようにしています。リクエストがあった段階で私ども教員も気をつけて内容などを確認するんですけど、高校の図書委員などに「このリクエスト本どう思う?」という風に聞くと、割と良識あるコメントをくれます。

田口:図書委員がそういう、フィルターの役割をやってくれるんですね。

『DORAEMON』藤子・F・不二雄著

『A Peanuts Book featuring SNOOPY for School Children』(スヌーピー) チャールズ・M・シュルツ著

『あさきゆめみし』大和和紀著

『〇〇は知っている』シリーズ
『泣いちゃいそうだよ』シリーズ
『西の魔女が死んだ』
ブックトラック

田口:貸出しベスト3を教えてください。

道川先生:青い鳥文庫が全部揃っているので、中学生が集まって借りています。中でも今一番人気があるのが、藤本ひとみさんの『〇〇は知っている』というシリーズです。あとは小林深雪さんの『泣いちゃいそうだよ』シリーズ。それから新潮文庫で梨木香歩さんの『西の魔女が死んだ』あたりです。

『探偵チームKZ事件ノート』シリーズ 藤本ひとみ原作 住滝良著

『泣いちゃいそうだよ』シリーズ 小林深雪著

『西の魔女が死んだ』梨木香歩著

田口:どういうところが人気なのでしょう。

道川先生:ちょうど等身大の、自分たちと同じ世代の女の子たちが活躍するような話ですし、あと流行りの胸キュンですか?共感できるんでしょうね。

田口:ロングセラーですね。

道川先生:はい。これをとっかかりにして書庫の中の本の方に進む生徒もいますので、ステップアップしていってくれればいいなと思っています。

田口:これが生徒間で伝わっていくんですね。

道川先生:そうですね。返却された本を書架に戻すまでブックトラックに並べていると、友達が読んでいるからということで、のぞき込んで今日返却されたものをそのまま持っていく生徒もいます。

田口:皆さんで読まれてる感じが出てますね。

道川先生:大勢に読み込まれた感がすごいですね(笑)。

田口:生徒に読んでほしい本を教えてください。

道川先生:中学の課題図書はもちろんですが、最初にも申し上げた通り、こちらの図書室では読み物に偏らずいろいろな分野のものを幅広く購入する方針ですし、文学作品や物語に限らず、いろんな本を読んでもらいたいなと思っています。

田口:道川先生の好きな本を教えてください。

道川先生:仕事関係の本も読んだりしているので、気軽に手に取れるようなものがどうしても多くなってしまいます。

田口:具体的にはどのようなものを?

道川先生:比較的ミステリー系を読んでいます。

田口:ちなみに先生が中学生の時に一番好きだった本はなんですか?

道川先生:1冊に絞るのは難しいですけど、やっぱり『赤毛のアン』ですとか、『少女パレアナ』ですとか、いわゆる女の子向けの本をよく読みました。あとアガサ・クリスティーはよく読んだ記憶があります。それから星新一は気軽に読めるのでよく読んでました。

『赤毛のアン』L・M・モンゴメリ著

『少女パレアナ』エレナ・ポーター著

【編集部注:アガサ・クリスティー(1890-1976) 「ミステリーの女王」と呼ばれる英国の推理作家。エルキュール・ポアロやミス・マープルなどの名探偵の生みの親。代表作に『オリエント急行殺人事件』『そして誰もいなくなった』など】

【編集部注:星新一(1926-1997) 短編よりも短い小説『ショートショート』の第一人者として知られるSF作家。読みやすい文章と意外な結末で、中高生にも人気が高い】

図書委員による忍者本のディスプレイ

田口:この学校にはどんな生徒が多いですか。

道川先生:本校は生徒の数が多いので、ほんとにいろんな生徒がいると思います。比較的元気で活発な生徒が多いですけれど、ここの図書室で見ていますと、おとなしい、なかなか自分の意見も言えないような生徒も少なくないです。ただ人数が多い分どんな生徒でも、自分のクラスに同じような子を見つけられなくても、他のクラスや先輩後輩の中などどこかで見つけることができているようです。図書室に来るなかで知り合ってお友達になる、ということも少なくないようです。中高の別なく、それこそ中学1年生と高校3年生がここで親しくなって楽しそうにおしゃべりしていることもあります。図書室は、いろいろな生徒の居場所のひとつでありたいと思っています。

田口:そうなんですね。

道川先生:あと生徒に言わせると、この学校はいわゆるオタクの生徒も意外と多いんだそうです。生徒からのリクエストで絵を描くノートを置きましたら、それが発展してもうずいぶんの冊数になっています。いわゆる交換ノートじゃないですけど、誰かの書いたイラストに感想が書いてあったり、上級生のイラストに「先輩、〇〇も描いてください」とお願いが書かれたりします。

だから本を読んだり勉強しに来たりする生徒のほかに、ノートを描いたり見たりするために来る生徒もいます。このノートをリクエストしてきた生徒が、今はもう就職して30歳近くになっていますので、13年前ぐらいでしょうか。当時は中高で図書室が別でした。

田口:それがまだ続いてるんですね。

道川先生:そうですね。卒業生が遊びに来てノートを見て「きゃー、〇〇ちゃんの絵だ」「私ったらこんなこと書いてたのね」みたいな感じです。

田口:全部取ってあるんですね。

道川先生:はい、カウンターに並べています。現役の生徒もよく手に取って見ていますし、卒業生はとても懐かしがりますから。

田口:オタクが多いと、貸出傾向に特徴的なことはありますか?

道川先生:多いと言いましてもオタクは細分化されているようでして、なかなか大きなうねりにはならないようです。

田口:では、こんなマニアックな蔵書、みたいなのはありますか?

道川先生:はい。いわゆる鉄子ちゃんもおりますし、歴女もおりますし、このところは忍者好きが。

田口:鉄道は分かりますけど、忍者はレアですね。

道川先生:私も意外で。だから「ここは忍者の本があんまりない気がするんですけど」って言われて、「じゃあ、何かいい本があったら教えてね」ってリクエストを求めつつ、「分かりました」って何冊か選びましたね。

資料請求をする
×

Document request 資料請求

各学校のパンフレットなどご請求いただくことができます。
ご請求は下記ボタンをクリックください。

資料請求をする

PAGETOP