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2017年3月17日

「『じゃあいいよ。勝手にすれば』という生徒対応は、絶対嫌なんです。」

取材日:2017年3月17日
インタビュイー:英語科・英語部顧問 佐滝弘美先生
インタビュアー:立教大学現代心理学部映像身体学科1年生 加登谷美琴

加登谷:佐滝先生が先生になられた一番の動機は何でしょうか?

佐滝先生:はい。まず、子どもが好きということです。それから、私は英語を担当しているのですが、英語を使って外国人の方とコミュニケーションする喜びや楽しさを味わってもらいたいと思いました。とにかく、子どもたちの役に立てれば、私もちょっと嬉しいかなという気持ちで教師を目指しました。

加登谷:子どもが好きと仰られましたが、幼稚園や小学生ではなく、中学・高校の先生になられたのは何か理由がありますか?

佐滝先生:これは、尊敬している先生の話にもつながるのですが、私は小学校1年生から3年生まで担任だった女性の先生を尊敬していたんです。

加登谷:はい。

佐滝先生:当時私は喘息を患っていて、とにかく体の弱い児童でした。学校も休みがちで、消極的な子どもだったんですね。ところがその女性の先生は、厳しくとても凛としている方で、私の消極的なところを常に励ましてくださいました。読書をたくさんしたり、「勉強は絶対あなたを裏切らない。しっかり勉強してればプラスになって財産になるって」常に励ましてくださいました。その時、漠然とですが「先生っていいな」と思っていました。ただ「先生」であって、小学校か中学校か高校かなんて、何にも考えていませんでした。でも、小学生の頃はもしかしたら小学校の先生を目指してたのかもしれません。

加登谷:はい。あ、いいお言葉ですね。

佐滝先生:はは。いいです。はは(笑)。

加登谷:はい(笑)。今の私にも響くので、すごい良いお言葉だなと思いました。

佐滝先生:小学校6年生の時に、たまたま知り合いのつてで、福生にある横田エアベースで、ネイティブの先生の授業を受けるチャンスがありました。そこから英語への興味が湧いて、英語を教えるということは、中学生か高校生ということになるので、自然と中高の先生になれたらなという思いが強くなったのだと思います。

加登谷:はい。

加登谷:佐滝先生が教師になられた直後と現在とで、ご自身で大きく変わったことはありますか?

佐滝先生:プロフィールにも書きましたが、私は22歳の新卒でこの明星中学・高等学校に入りました。今年52歳なのでもう29年。来年で30年目を迎えるという、すごく長い年月、明星学苑でお世話になってるんです。新卒のときに担当したクラスは高校1年生と2年生だったんですね。自分とほとんど年が変わらない生徒たちでした。

加登谷:そうですね。

佐滝先生:新卒の頃は本当にドキドキしていました。明星中学・高等学校は共学化してもう10数年経ちますが、以前は女子部と男子部に分かれていました。女子は女子、男子は男子、それぞれの特性を生かした教育をしていました。すごく生徒がしっかりしていましたね。特に女子生徒が。それで「明星はこういう学校ですよ」と、本当に手取り足取り教えてくれました。むしろ、こちらの方が生徒のような状態で・・・。

加登谷:ふふふ。

佐滝先生:当時の生徒たちに「教師がどうあるべきか」ということを教えてもらいました。

加登谷:はい。

佐滝先生:とにかく学年主任や学年の先生方の動きを見て、真似てました。ちょっと盗むというか、あからさまに聞けないこともありますよね。当然知っておかなければいけないことがわからない場合は、その先生方がお帰りになったあとに、ちょっとプリントを見せてもらうとか・・・。ほかの先生方を真似て、良いものを自分のものにしようと思っていました。ただ、実は「自分らしさ」という部分にはずっと自信がなかったんですよ。でも、やっと今になって、自分の価値観が分かってきたんですね。

加登谷:はい。

佐滝先生:生徒には、私自身の経験や価値観をきちんと話さない限り、説得力がないということに気づきまして。今の私の価値観は、英語で“Gather ye rosebuds while ye may.”という詩があって、「あなたが出来るうちにバラの花のつぼみを摘みなさい」という言葉です。今風に言うと「命短し恋せよ乙女」です。私はこの言葉がとても好きなんです。

【編集部注釈:「Gather ye rosebuds while ye may.」・・・英国の詩人、ロバート・へリック(Robert Herric)1591年が書いた詩の冒頭部分にあたり、英語のことわざにもなっている。「ye」というのは、古英語で「you」のことを指す。】

加登谷:はい。

佐滝先生:これは、恋愛を推奨する言葉ではなく、「鉄は熱いうちに打て」のように、「今やるべきときに何かをするって、とっても大切だよ」と言いたいのです。それから、日本人の謙虚さ。日本人の「三歩下がってついていく」のような謙虚さが美徳だと思っています。もっと「Yes」「No」をはっきりしたほうが良いという意見もあると思うのですが、私は「能ある鷹は爪を隠す」という言葉を生徒に話してます。あとは、人に迷惑かけないこと、集団生活をするにあたっての自己管理ですね。自分の時間を管理すること、遅刻や提出物の期限を守ること。特に私のクラスでは「1日前ルール」とか「5分前ルール」というのがあります。提出とか期限を決めて守れなかったら、どんなに遠くても、どんなに遅くなっても、家に取りに帰らせるという厳しい指導をしてます。まとめると、「命短し恋せよ乙女」、「能ある鷹は爪を隠す」、「自己管理の徹底」の3点は、最近はずっと言い続けています。

加登谷:明星学苑に長く勤められている中で、そういった価値観が形成されて、先生ご自身が大きく変わられたということですね。

佐滝先生:はい。

加登谷:先生の好きな本や、影響を受けた本がありましたら教えてください。

佐滝先生:好きなジャンルは、推理小説やSF小説です。その中でも好きな作家さんは、北村薫さんです。ご存知ですか?

加登谷:すみません。(笑)

佐滝先生:直木賞も受賞された、北村薫さんの作品が大好きなんです。代表作はたくさんあるんですが、「時と人三部作」、「ターン(Turn)」、「スキップ(Skip)」、リセット(Reset)」という3つの小説が大好きです。

link:「ターン」北村薫著(新潮文庫)

link: 「スキップ」北村薫著(新潮文庫)

link:「リセット」北村薫著(新潮文庫)

加登谷:はい。

佐滝先生:それと「バック・トゥー・ザ・フューチャー」という映画が大好きで、タイムスリップとかタイムリープ、時空を飛んだりするのってやっぱりワクワクしますよね。

【※編集部注釈:「バック・トゥー・ザ・フューチャー」マイケル・J・フォックス  主演、ロバート・ゼメキス 監督 自動車型のタイムマシンで時空移動した高校生が騒動を巻き起こす、SFアドベンチャー傑作。】

加登谷:はい。

佐滝先生:北村さんの作品はSFというよりも、日常生活にうまく溶け込んでいて、もしかしたら本当にそんなことあったんじゃないかって思えるようなタイムスリップ、タイムリープの話なんですね。物語の中で翻弄される人の描き方が、とっても素晴らしくて素敵なんです。ぜひみなさんに読んでほしいと思います。三作とも女性が主人公です。

加登谷:私も結構本が好きですが、推理小説はあまり読まないので・・・。推理小説よりミステリーっていうんですかね。

佐滝先生:そうですね。そんな感じですね。

加登谷:ですよね。ミステリー、読んでみたいと思います。

佐滝先生:余談なんですが、実は北村薫先生というのは、明星高校にいる柏木先生の大学の先生だったそうです。

加登谷:えー!(笑)

佐滝先生:そのときは覆面作家として、名前を伏せて書かれていました。「北村薫」という名前は、男性か女性か分からないじゃない?実は男性なんですが、大学の先生で、恩師なんだそうです。私がたまたま「生徒におすすめの本」を聞かれたときに、北村薫さんについての記事を書いたんですね。それを柏木先生に見せたら、「え!? 実は北村先生は僕の先生だった」とおっしゃっていました。

加登谷:そうなんですね!(笑)

佐滝先生:余計に身近に感じますよね。ぜひ加登谷さんも北村薫さん本を読んでいただければと思います。

加登谷:はい。ぜひ!ありがとうございます。

加登谷:大学に行くとどんな良いことがあるかと生徒から質問されたら、どうお答えになりますか?

佐滝先生:そうですね。まずは、中学・高校と違って規模が大きいということ。それから、たくさんの学部学科に様々な目標を持った学生がいて、いろんな年齢の方がいますよね。浪人されてたり。中高時代は、基本同年代の人たちと過ごしてたのが、大学では年齢や育った環境が違う人々と交流することで、自分の価値観が形成されていくというか・・・。

加登谷:はい。

佐滝先生:あとは、私が一番勉強したなって思ったのは、実は大学なんですね。

加登谷:そうなんですね。

佐滝先生:私が高校生くらいのときは、今のようにオープンキャンパスや情報もないので、ただ漠然と「大学行ければ先生になれるかな?」ぐらいの知識しかなかったんです。でも実際大学に行ってみて、アカデミックな環境ってやっぱり半端ないんですよね。教授やエキスパートの方がたくさんいらっしゃるので。だからアカデミックな環境の中に身を置いて、そこで得た経験や知識をベースに、将来の自分像が発見できるのが大学なんじゃないかなと思います。

加登谷:そうですよね。私も今大学で体育会に入ってるんですが、1浪した4年生の先輩がいらっしゃるので、私から比べれば5つ上・・・。そういう方が同じ部活にいるっていうのは、やっぱり影響がありますね。

佐滝先生:ですよね。

加登谷:明星学苑は中高一貫校ですが、中高一貫校にあって一般の中学校にはないものは何だとお考えになりますか?

佐滝先生:一般の中学・高校は、それぞれ3年ですよね。本校では、6年間の成長ぶりを目の当たりにできるのがすごく感動します。中学1年生は、小学6年生の延長で子どものようだった生徒が、高校3年生で18歳になると、立派な大人に近いものがありますよね。

加登谷:はい。

佐滝先生:6年間継続して生徒たちを見ていくので、担任や担当が変わっても「この生徒はこういう生徒だった」とか「こういう良いところがあった」とかを先生たちで共有できます。あとは、保護者との連携を密接にできるところが、中高一貫校の強みだと思います。

「凝念について語る」

加登谷:明星中学・高等学校にあって、ほかの私立にないものといったら何でしょうか?

佐滝先生:まず、「凝念」というあの“かたち”です。明星学苑の生徒に「明星ってどんなところ?」って聞くと、真っ先に挙げるのが「凝念」。

編集部:“念を凝らす”ですね。

佐滝先生:はい。気持ちを1点に集中させるという、心と所作がひとつになったものです。創立者の児玉九十先生は成蹊中学・高等学校の先生でいらっしゃって、そこからの流れもあるんですが・・・。なぜ・・・なぜか、落ち着くんですよね。椅子に浅く腰掛けて、おへその下あたりに力を入れて、目を軽く閉じる。頭の上から引っ張られているかのように背筋を伸ばす。そして、丹田(たんでん)に手を添えて、瞑想するのが「凝念」です。必ず、朝礼、終礼、授業の始まりと終わりに凝念という所作をします。まあ人ですから、雑念を混じらせながらこんなのめんどくさいな、早く終わればいいなとか思ったりすることもあるかもしれませんよね。そういうのは、生徒たちの顔色で分かるんです。

編集部:毎時間ごとにやるんですか?

佐滝先生:毎時間です。私なんか古い人間なので、今日実は10分ぐらいさせちゃいました。あまりにもうるさくって。(笑)

加登谷:そういうこと結構ありますよね。(笑)

佐滝先生:普段は大体30秒から1分ぐらい。それをすることによって気持ちが落ち着くんですよね。ちなみに加登谷さんは小学校から明星?

加登谷:はい。私は小学校からです。

佐滝先生:そうすると12年間ですね。それだけ長くやっていると、例えばプレゼンをするときや面接のとき、何かに出くわしたときに、「自然に凝念やっちゃいました!」というのがあるみたいです。

加登谷:あ、そうですね!あります!

佐滝先生:何人もの卒業生から聞いてます。瞑想というか、かたちだけかもしれないけど、無になって意識を集中させるという所作、この「凝念」は明星ならではだと思います。

加登谷:私も大学受験のときにやってました。毎時間、毎時間。

佐滝先生:ですよね。(笑)

加登谷:あと、私は校訓も好きです。「健康、真面目、努力」という。

佐滝先生:そうなんですよね。

編集部:言葉がシンプルで明快ですよね。

加登谷:校訓も児玉九十先生が?

佐滝先生:そうです。「健康、真面目、努力」って、「健康」が最初にきてるじゃないですか。うまく言えないんですけど、これは児玉九十先生というお名前の由来からきているそうなんです。漢数字の九十(きゅうじゅう)と書いて九十(くじゅう)と読むのですが、なぜそういう名前がつけられたのかを聞いたところ、先生はすごい未熟児で生まれたそうなんです。90歳まで生きてくれれば、という親の願いが込められているんですって。だからやっぱり「健康」を意識されてるのかなと思いました。ただ実際は・・・。

加登谷:100歳超えられましたよね?

佐滝先生:はい。私、実はお会いしてるんです。お会いした年は最期の年だったんですが、真面目で努力される方というのが伝わってきました。校訓の「健康、真面目、努力」この三つはおっしゃる通り、シンプルで分かりやすいですよね。

加登谷:はい。

編集部:三つが組み合わさると、行間や背景に何か・・・力強い考え方があるような。社会にはいろいろ大切なことはあるけど、まずこの三つ、あるいは結局大切なのはこの三つの言葉・・・。

佐滝先生:そうですね。一つだけでなく、三つそろっていることですね。

加登谷:小学校は、そこに「正直なよい子の育成」とも書いてあるんです。

編集部:ふむふむ。

加登谷:「よい子」の概念にもいろんな意味が含まれてて、「正直なよい子」になってるんです。

編集部:3つの言葉と同じように明快な言葉ですね。そしていろいろ大切な要素が含まれている。

加登谷:中学に合格した生徒たちに、勉強以外で一生懸命取り組んで欲しいことはありますか?

佐滝先生:はい。これも明星ならではですが「文武両道」なんです。勉強ばかりでなく、部活に所属してほしいと思います。ちなみに加登谷さん、部活は?

加登谷:私は水泳部でした。

佐滝先生:今、中学1年生の担任をしていますが、90%以上は部活に入ってます。先ほど年齢の上下関係の話をしましたが、今は1人っ子で兄弟がいない生徒も多いので、上下関係の中のコミュニケーションを取ることは大切ですよね。会話の術を知らなくて、タメ語を使ったり上から目線だったりするので、やはり上下関係を経験することはとても大切だと思っています。

編集部:そうですね。

佐滝先生:運動部でも文化部でも、何か結果を出すために、目標に向かって努力して練習しますよね。例えば水泳だったら、タイムを上げるとか、どこの大会で優勝するとか。そして、やっぱり練習は辛いですよね。楽して栄冠を得ることはないんです。そういう意味でも、部活をすることによってメンタル面が強くなると思うんですよね。今は、我慢や辛抱がちょっと苦手な生徒たちが多いので、我慢、辛抱、強さというものも培って育ってほしいです。部活には絶対に入ると、先輩後輩の絆というか、自分が次に先輩になったときに後輩たちにどうできるかの勉強にもなると思います。もちろん、外で何か習い事をしてさらに磨きをかけるのも、いいことだと思うんですけれど、基本的には明星学苑の部活に所属して、先輩後輩の絆を培ってほしいですね。

加登谷:はい。私も、明星学苑が文武両道ができる環境にあるからこそ、部活に入って勉強も頑張るというのが理想だと思います。明星に入ったからこそできることですよね。

佐滝先生:はい。

加登谷:佐滝先生は英語の先生ですが、普段どんな教材を使われて授業をされていますか?どんなスタイルで授業をされていますか?

佐滝先生:今は小学生でも英語の授業が展開されていますし、アルファベットが書けたり、音声に慣れている生徒も多いんです。けれども、世界の共通語のツールとして使えるようにするべく、やはり英語4技能(聞く、話す、読む、書く)をまんべんなくやりたいと思っています。

加登谷:はい。

佐滝先生:どうしても我々は、インプットはできてもアウトプットが苦手なんですよね。だから、英語をこれだけ長い年月をかけて勉強してもなかなか話せないというのが、ちょっと寂しいんです。なので少しでもアウトプットができるように意識的に多くやっているものがあります。まず、中学1年生だと、単語のスペリングと発音ですね。英単語は、文字と音が一致しないので、単語を見るだけでは読めなかったり、スペルを書けと言ってもなかなか書けないんです。家庭学習として、教材のCDを必ず毎日30回は音読させています。CDプレイヤーの音をリスニングして、文字を見ながら声に出して真似て、30回音読してきなさいと言います。さらに、授業でもずっと音読をします。英文を板書して、一通り文法事項を説明したあとに音読をするんですが、1行ずつ消していくんです。

加登谷:あー!はい。

佐滝先生:最終的には暗唱させるんです。私、暗唱させるのが好きなんですよ。見ないでもできるように、授業でも最低10回は繰り返します。次の日には「ディクテーション=書き取り」をします 。カッコになっている部分を埋めていく感じですね。生徒にとっては嫌なことかもしれないですが、アウトプットさせることを意識的にしていますね。

加登谷:はい。

佐滝先生:あとは、デジタル教材ですね。どのクラスにも電子黒板的な機能がついたものが設置されているので、映像や音声なども使うんです。正直な話、私自身がまだまだICT教育がちょっと苦手で、今、一生懸命勉強中なんです。今後はさらにビジュアル的なものやオーディオ的なものも活用して、活発的な授業なるように努力を重ねていきたいと思います。古いやり方かもしれませんが、基本的には黒板にきちんとチョークで書いて、ノートもきちんと取らせてというのが定番です。ただ、和訳はさせてません。昔の英語の教え方って和訳が中心で、どうしても訳した言葉、日本語だけを意識してしまって、なんだか日本語の授業になってしまうので。そういうのは、もう少し学年が上がってからでいいと思ってるので、今はフィーリング、感覚的な英語をつかませるように、学習を進めている感じです。

編集部:そうなんですね。

加登谷:そうですね。高校の授業でも、レステーション(暗唱)コンテストがありました。3分くらいの文章を暗唱して、小学生、中学生、高校生で予選を勝ち上がった10人ずつが、講堂や視聴覚ホールなどで1位から3位を競う決勝戦をするんです。

佐滝先生:そうですね。

加登谷:私もレシテーションコンテスト結構出てました。(笑)

佐滝先生:そうでしたね。優秀でした。

編集部:そうなんですか!

加登谷:それをやったおかげで、大学の英語の授業でも、英語の脳に切り替わるというか、英語で感覚をつかむというやり方が身についていると思っています。明星の英語プログラムならではと思いますね。日本語に訳さないで、英語で内容がわかるというか。

編集部:それは、小学生から凝念をやって鍛錬されてるからなんですか?

佐滝先生:そういうことではないと思います。

加登谷:小学校では、意味も分からずただ暗唱してるだけだと思います。音だけを聞いているというか。

佐滝先生:そうですよね。中高生になると、だんだん内容も分かってきて表現力も出てきますよね。

加登谷:私も小学校の頃は全然分かってなかったです。小学校では「3匹のこぶた」や「ブレーメンの音楽隊」などを暗唱するんですけど、とにかく音を暗唱するだけでした。でも、暗唱することで、英語がさらに身にしみるというのは、すごく分かりますね。

編集部:英語で理解して英語で考えるということを目指されているんでしょうか?

佐滝先生:そうですね、はい。

編集部:なるほど。それは、明星中学の生徒さんほとんどがマスターされるものなんですか?

佐滝先生:ほとんどっていうと、それはなかなか難しいですね。例えば、英検指導をしてる際に、生徒が一番不得意な分野は「並べ替え」なんです。単語を並べ替えて英文を完成させるやつですね。あれ、日本の独特な作問らしいんですけど。

編集部:そうですよね。

佐滝先生:なぜかというと、日本語と英語では語順が違うじゃないですか。先ほど謙虚さの話をしましたけど、欧米の方は基本的に「Yes」「No」をはっきりさせますよね。文の最初に、否定なのか、肯定なのか、疑問なのか、過去なのか、現在なのか、未来なのか、言いたいことがきますよね。そこが日本人がなかなか慣れないとこだと思うので、英語脳にするというか、パターン・プラクティスさせながら身につけさせています。英語で一番大事なのは、動詞なので。

【※編集部注釈:パターン・プラクティス・・・主に英文法を身につけるための学習法。基本の文法表現を、パターンを変えて学習する。主語や動詞を換える、疑問文・否定文にするなど、たくさん数をこなして、反射的に答えられるまでスピードを上げる。スピーキング力のアップにもつながる。】

編集部:なるほど。

佐滝先生:そういったこを中心に理解してもらおうと努力はしてますけれども、ただ4つ(聞く、話す、読む、書く)が全部そろわないと、なかなか機能しないですね。1つだけずば抜けてできても、片手落ちじゃないんですけれども・・・

加登谷:そうですね。

佐滝先生:私は楽器は全然できないんですが、よく言うことがあります。ピアノの初心者は、まず楽譜を見て、指を鍵盤に置く。それから指を左右同時に動かして、初めてメロディとなる。できるだけすべての感覚を使ったほうが、より脳が刺激され一層素敵な音楽を奏でることができる。

編集部:なるほど。

佐滝先生:だから、4つの技能をリンクさせながら、好奇心や面白いなっていうことを感じて興味を深めてもらえるように取り組んでいますね。ただ、受験となるとどうしても文法や長文読解が中心になってしまうので、そこにギャップがあるのかなという気はします。

加登谷:私は、中学校のときにそういった授業を受けていたおかげで、大学の英語は、話す授業が多いので、ディスカッションやプレゼンテーションで、ちゃんと話すことができます。英会話の授業や、多読、多聴、そういったものの影響で、口からちゃんと英語が出てくるので、そのおかげかなと思いますね。

佐滝先生:うん。そうだよね。

編集部:それはうらやましいですね。

link: 「英語で「3匹のこぶた」The Three Little Pigsを鑑賞」(出典:子どもの英語)

link: 「The Town Musicians of Bremen (ブレーメンの音楽隊)」(出典:こども英語チャンネル)

加登谷:先生は、生徒の観察を日々どのようにされていますか?

佐滝先生:生徒たちは、学校にいる時間が家庭より長いですよね。なので、いつも私は自分のクラスには「学校は家庭と一緒だよ」「家族だからね」と話しています。英語の授業は週に5時間あるので、少なくとも確実に5時間は生徒と一緒。そして、朝礼、終礼、掃除、お昼休みなどの時間があるんですが、私はやっぱりコミュニケーションを積極的に取りたいので、朝はどの先生よりも早く教室に入ってます。7時半くらいですかね。

加登谷:ふふ。早いですね。(笑)

佐滝先生:朝礼は8時25分なんですが、私は7時半ぐらいには教室に押しかけて、まず生徒たちの顔色を見ますね。あとは、彼らの友人関係を見たり、例えば何のテレビを見たとか、どんなゲームしたとか、そんな会話のキャッチボールをしてみたり。あと、掃除は毎日一緒にやってます。

加登谷:はい。

佐滝先生:掃除のときにコミュニケーションを取るんですが、今の生徒ってなかなか掃除しないんですよね。「家で掃除しないの?」って聞くと「いや、ルンバがやります」みたいな。

加登谷:ふふふふ。

佐滝先生:雑巾もちゃんと絞れなかったり(隅々まで掃かずに真ん中だけ)丸く掃いたりするんです。私は明星に入ったときに、お掃除も教育だと教えられたんですよね。今はやってないですけど、水拭きも週に何回もやったり、黒板の桟や窓の桟も、きちんとできてないとやり直しさせられた時代もあったので。

編集部:え、それは先生になられてから?

佐滝先生:そうです、そうです。

編集部:なるほど。

佐滝先生:みんなで、かっぽう着に三角巾をしてお掃除してました。女子部の時代ですけどね。でもそれってとても大切だと思うんですよね。だからコミュニケーションを取りながらも掃除もしっかりさせて、話題づくりや体の様子、何か会話の糸口を探そうと観察をしています。見ているとやっぱり分かるんですよ。ちょっと元気がないなとか、ちょっと何かあったんじゃないかとか。物に当たっていたりするんでね。

編集部:なるほど。

佐滝先生:そうすると「なんかあったの?」と会話のとっかかりができるので、とにかく教室にいるようにしてます。ただ、彼らは胡散臭いなと思ってるかもしれません。

加登谷:ふふふふふ。

加登谷:先生は、朝早くから生徒さんたちを観察されてると思うんですが、もしいじめがあるなと思ったときは、どのように対応されますか?

佐滝先生:そうなんですよね。いじめの定義っていろいろあると思うんですが、いつも生徒に言ってるのは「自分がされて嫌なことは、人には絶対するな」ということです。ただ、いじめとは言えないまでも「いじり」のようなものは、明星の中にもありますよね。言った本人がいじり程度でも、受け取る人がいじめと思ったら、それはいじめなんだよと言っています。

加登谷:はい。

佐滝先生:ましてや学年が下だと、ちょっとまだ加減がわからなくて、人の心にズカズカ入ったり、残酷になっちゃうこともありますよね。なので、ちょっと変だなと思うことが、少しでも耳に入ったり、そういう様子が伺えたら、学年主任や授業担当の先生、顧問の先生、全ての先生に報告します。一人じゃなくて、とにかく学年が一丸になろうと「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」を徹底しています。

加登谷:はい

佐滝先生:「ちょっと様子を見てくれませんか?」と相談して、様子を見ながら誰が一番的確に対応できるかを判断していただいて、また報告してもらって、というような感じです。もしかしたら私が対応しない方がいい場合もありますよね。協力なしではできませんね。

編集部:それは、システムになってるんですか?どの先生もそれをやられてるんですか?

佐滝先生:基本そうです。

編集部:ほー。

加登谷:マニュアル化されてないけど、先生方はみなさんそうされるだろう、ということですかね?

佐滝先生:マニュアル化・・・。学校には「教師必携」(明星中学高等学校の教諭としての心得)というものがあってその中にちゃんと書かれています。

編集部:そうですよね。文科省のルールで、いじめへの取り組み方が決まっているんですよね。

佐滝先生:はい。

編集部:でもそれに加えて、明星にはどんなルールや内容があるのかと思ったんです。

佐滝先生:はい。まだ芽のうち、育たないうちに摘み取るっていうのがすごく大切だと思います。そこは本当に意識してますね。

編集部:はい。それもあって先生は早く教室に行かれるんですね。

佐滝先生:そうなんです。はい。やっぱり気になりますので。

加登谷:あまり授業についていけない生徒がいた場合、どのように対応されますか?

佐滝先生:はい。私は、小テストにこだわりを持っています。小テストって小さな成功体験だと思うんですよね。数学とか漢字とか英単語とか、小テストは範囲が決まっているし、ちゃんと準備すれば100点取れるじゃないですか。100点を取れたという嬉しさや自信をつけて、さらに定期テストや、それこそ大学受験などの将来に少しでも近づけるようになったらなと思っています。

加登谷:はい。

佐滝先生:残念ながら、私は理数系がすごく苦手なので、数学に関しては手出しはできないですが、漢字や英単語はとにかく頑張ってもらいたいんです。私は1年4組の担任なんですけど、ちょっとうるさいというか、やんちゃが多いクラスで。

加登谷:ふふふ。はい。

佐滝先生:でも、小テストだけはみんなで頑張ろうと「朝勉」をやってます。朝勉強ということで、できる限りこの時間までに来て、一緒に勉強しようっていう雰囲気づくりをしています。

加登谷:はい。

佐滝先生:当然その中でも落ちこぼれというか、なかなかできない生徒もいるんですけど、勉強はそういう生徒を中心に見ます。私は英語部の顧問をしているのですが、明星の文化部には兼部をしている生徒が多いんですね。

編集部:なるほど。

佐滝先生:他の部と掛け持ちしてるので、文化部の部活は週に1回しかないんですよ。だから私は比較的放課後の時間を取りやすいので、勉強をつきっきりで見ています。テレビ番組で「帰れま10」って知ってます?

link:「帰れま10」

加登谷:はい。

佐滝先生:私、「帰れま10」やってるんです。(笑)

加登谷:聞きました!

佐滝先生:今年度(平成28年度)から「MGS」(Meisei Global Science)という、難関国公立・私立大学を目指す生徒を対象にしたクラスが、1クラス設置されたんですね。それが1組で、2、3、4組が本科のクラスなんですね。

編集部:なるほど。

佐滝先生:私は4組の担任なんですが、英単語の小テストでは1年間全部首位でした。

編集部:1組に比べて、ということですね。

佐滝先生:はい。全て。

編集部:なるほどー!

加登谷:えー!そうなんですね!

佐滝先生:ズルはしてませんよ。(笑)毎回小テストの範囲は決まっていますが、ここが出るとも何にも言いません。ただ、一応大きい範囲をとことんやろうよって言って、何回もさせます。それが「帰れま10」なんです。

編集部:へー。

佐滝先生:水曜日が英語の小テストなので、火曜日の7時間目のあとにやるんですよ。「帰れま10」。みんなやるんですよね。最後の方になると、できない生徒には、できる生徒がすごく上手に教えるんです。私以上に。

編集部:なるほど。

佐滝先生:本当に点数が取れるんです。結果は、31人のクラスで27人が100点を取って、あともうちょっとだったんですけど、ミラクルはなかなか起こせませんね。全員100点を目指したんですが、残念ながら最終的には98パーセントぐらいにしかならなかったですけど。

加登谷:でも、それでもすごいですよね。

佐滝先生:そうですね。なので、落ちこぼれというか、できない生徒には、基本的につきっきりで指導しますが、できる生徒が見てくれるシステムを作っていますね。

加登谷:いいですねー。生徒同士で教え合うと教える方もまた勉強になりますしね。

佐滝先生:はい。

加登谷:逆に、長所がある生徒に対してはどのように対応されますか?

佐滝先生:小学生でも、英検準2級や2級を持っている生徒もいるんです。以前、そういうハイレベルな生徒たちの講座を持っていたこともあります。秀でてる生徒に関しては、もちろん声掛けをしたり、別な角度でこんな教材やってみたらと定期的にアドバイスしますが、つきっきりではやりません。なぜなら、できる生徒は自分で考えて勉強するので、進捗だけちょっと確認しながら、自主性で勉強させる方向にもっていきます。やたら質問してくる生徒も、本当にできないならしょうがないですが、できる生徒には自分である程度考えて、それでも分からないものだけを質問できるような生徒になってほしいです。なので、成績が上の生徒に対しては、自立してもらうように、少しアドバイスする程度ですかね。

加登谷:先生は、ご自身が人気があると思いますか?(笑)

佐滝先生:失笑ですね。えーと、正直それは分からないです。はい。

加登谷:それでは、人気のある先生というのは、どんな先生だと思われますか?

佐滝先生:先輩や同僚など、私が尊敬している先生方に共通しているのは、みなさん厳しい先生だということですね。

編集部・加登谷:うーん。

佐滝先生:駄目なものは駄目っていう叱れる先生ですね。なぜかと言うと、例えば、中学生はそうでもないですけど、高校生になると制服をだらしなく着崩したりしますよね。加登谷さんはご存知だと思いますけど。

加登谷:ふふふ。はい。

佐滝先生:ほかのことでも、注意しても「はーい」と返事をするだけで、直さない生徒もいるんですよ。そこで、すごく反抗されて喧嘩になっても嫌な思いをしますよね。かと言って、引いてしまって「じゃあいいよ。勝手にすれば」っていうのは、絶対嫌なんです。以前、伊藤清子先生というすごく厳しい先生がいたんです。とても素晴らしい先生だったんですが、もうとにかく厳しい。その先生のハイヒールの音を聞いただけで、生徒たちは怖いと思うぐらい。だけどすごく面倒見がいい先生でもあったんです。卒業後に生徒から「厳しく叱ってくれて、あれだけ厳しく叱ってくれたのは人生の中にない」と言われたそうです。親もそうですけど、なかなか今の大人って叱らないじゃないですか。逆に「いいよ、いいよ」って友達感覚の先生だと、そのときは楽だったけど生徒たちの記憶には残らないとも聞いたことがあるんです。自分で言うのも何なんですが、私も厳しいと思います。

加登谷:はい。

佐滝先生:本校では「エゴグラム」という性格診断テストを年2回やってるんですよ。自分のエネルギーというのが人間にはありまして、そのエネルギーが高かったり低かったりして・・・

加登谷:その心の状態が、その質問に答えることによって、5段階で、グラフで出てくる診断があって、例えば、元気があるとか・・・

佐滝先生:うん。消極的だとかね。

加登谷さん:消極的とか、我慢してるとか、自由で、奔放でとか、そういうのが5段階で出てくるものが・・・

佐滝先生:それで、やっぱりその、精神状態ってやはり変わるので、同じ質問なんですけれども、年間2回やってるんですよね。項目があって、その質問に答えてく。例えば人を1時間以上待たせないとかね。人が困っていたら助けてあげるみたいな。そんな、アンケート項目があって、その5つの自我っていうのが、NPというのがまずあって、NPというのは、「nurturing parent」ということで、いわゆる母性なんです。やさしさなんですね。次が、CP、「critical parent」、criticalだからこれは父権です。もう星飛雄馬のお父さんですね。その値が高いと厳しい、でも、人にも厳しく自分にも厳しく自己管理が出来ている。次がA、「adult」のA。「大人」なので計画性があって、きちんと理性に基づいてやっているっていうのがAです。次にFというのが、「free child」で、フリー、というかいわゆる子どもらしさです。よく、いくつになっても少年の心を忘れない大人もいるけども、その「free child」っていうのは子どもらしさのほうですね。最後に、これが一番いけない、まずいんですけれども、ACというのがあって、これは「adopted child」、「適応された子ども」。だからいい子ちゃんなんですね。それが高いと、人に気を使ってしまって、もう、ストレスたまり放題なんですよ。それで、その5つのバランスで、AC以外はすべて高いと、エネルギーも高くて、例えば、上位大学とかに行かれる方は、CPとAが高いんです。非常に。自分に厳しく計画的。だから勉強もする。ということで、そういうところを伸ばしてあげようということも兼ねて、学校で、年に2回やってるんですね。それで教員もやるんですよ。たまに。

加登谷:そうなんですね。

佐滝先生:私は、自慢じゃないんですけど、CPとNPが同じぐらいトップなんです。(笑)すっごい厳しいんですけど「、一方で、「アイスクリームおごっちゃおうかな?」みたいなご褒美もあげたくなります。ねだられるのは嫌なので、ねだられたらあげませんが、頑張った生徒にだけは、ご褒美や最大のハグをしたくなっちゃうんです。人気があるかどうかはわかりませんが、本当に厳しくてもいろいろ考えてくれて、だめなものはだめって言ってくれる先生が、生徒の心に残るんじゃないかなと私は思ってます。すいません長くなりました。

【※編集部注釈:「エゴグラム」アメリカの心理学者エリック・バーン博士が創始した、人間関係の心理学理論に基づいた性格診断テスト。人の性格を5つの領域に分けて分析。 ①CP(Critical Parent)「理念力」正義感、道徳心、責任感、良心など ②NP(Nuturing Parent)「支援力」優しさ、思いやり、寛容性、共感性など ③A(Adult ego state)「論理力」知性、理性、冷静さ、判断力、情緒安定性など ④FC(Free Child)「活発力」直感力、創造性、自由奔放さ、好奇心、愉快さなど ⑤AC(Adapted Child)「協同力」素直さ、協調性、忍耐力、礼儀正しさなど

link:エゴグラムについて

加登谷:この学校の好きな点を教えてください。

佐滝先生:うーん、なんでしょうね?総合的に良い学校だと思います。うまく言えないんですけど、先生方が本当熱心で子ども好きってこと、なぜか入学してくる生徒たちも穏やかで素直な、伸びしろの高い生徒が来ます。そして、このキャンパスが広くて緑豊かで、建物や施設はきれいになりましたが、それこそキャンパス内の風景や全体の雰囲気は、30年前から全然変わっていません。もう「明星」っていう感じです。

加登谷:はい。なんか一言では言い表せないんですよね。なんかいいっていう。(笑)

佐滝先生:うーん、なんか不思議ですよね。明星独特の空気感があるのかな。

編集部:なんですかね?

加登谷:緑に囲まれてるっていうのも、1つの理由かもしれないですね。

編集部:そうですね。今日、僕らも国分寺側のバス停に近い入口から歩いて来たんですけど、多分この景色を6年見続けて登校するんだろうなって。緑をくぐって6年間、人格形成にもいい影響があるのかもしれないなあ、と思いました。

加登谷:そうですね。

「国分寺側のバス停に近い入り口から中学校舎まで」

加登谷:もっとこうしたらいいのにという点はありますか?

佐滝先生:あ、はい。時間と心の余裕を持つためには、経営的なこともあるんでしょうけれど、もう少しすみ分けができたらもっといいと思いますね。

加登谷:はい。

編集部:すみ分けとはどういうことですか?

佐滝先生:主要教科の先生は、小テストが週3回と多い。そこに英検対策や夏期講習、今度も勉強合宿に河口湖に3泊で行くんですけど、そういった授業以外の行事が集中するんですね。だから、例えば主要教科(の担当)は勉強だけに特化するとか・・・放課後だけはこうとか、部活はこうみたいな・・・。

編集部:なるほど。

佐滝先生:本校にはそんなにないと思うんですけど、公立校だと「No」と言えなくて全部引き受けてしまって、結果的にうつや病気で体を壊してしまうという話も聞くので。本当は担任も教科もやって、部活も全部やるのが一番いいんでしょうけど、それには限界があるし無理なので・・・。そこはすみ分けというか、適した人がやった方が生徒を更に伸ばせるのかななんて思ってしまいますね。

編集部:なるほど。先ほど、生徒同士で教えるような仕組みとおっしゃったんですが、多分生徒たちができるようになるまでの間に、先生が仕組みを作る助走期間が必要ですよね。明星学苑の先生って、朝勉もそうですし、0時間目の朝7時半からの授業もそうですし、エクストラスタディもあったりして、先生の負担がかなり大きいと思うんです。先生方は、そのあたりはどのようにお考えになられていますか?

佐滝先生:とにかく生徒たちとコミュニケーションは取りたいし、勉強もたくさん見てあげたいと思っているんですが、時間がなかなか取れないのが現状なんです。自分にも時間と心に余裕があったら、もっと違うことができるのになと思っています。今はやはり、結構厳しいですね。

編集部:先生はご自身で「朝勉」や「帰れま10」もされていて、先生方はみなさんPHSを持ってらっしゃいますよね。もうほとんど学校と生徒から離れられないじゃないですか。

佐滝先生:はい。

編集部:だから、ほかの学校よりも、先生への負担が多いと思うんです。先生方はみなさん納得されてやってるんですか?

佐滝先生:明星学苑の先生は、本当に生徒が好きだと思うんです。生徒も素直で誠実な生徒、慕ってくれる生徒が多いので、生徒の願いを叶えるじゃないですが、何かしなきゃという気持ちの方が強いと思います。朝だってゆっくり来ようと思えば、8時20分までに来ればいいし、帰りも4時半には終わるんでね。でも絶対その時間では終われなし・・・。朝早くから夜遅くまでいらっしゃる先生がいたり、テキパキやってさっと切り上げる先生がいたり。ただ、時間がかかるのがまずいのか、テキパキやるから優秀なのか、そういう賛否両論もやっぱり学校内ではあるんですけどね。ただ、全般的に先生方は本当に熱心です。変な話、残業とかもつきませんからね。(笑)

編集部:うーん。なるほど。

佐滝先生:お金の話になっちゃいますが、部活は何時間やっても、一回数百円くらいしか手当がつかなくて、でもそれ以上のことを顧問の先生は頑張っているんです。、それは結果的に生徒の目標とか将来なりたいものに近づいてくれればという願いでやっている先生が多いからだと思います。すいません、きれいごとじゃなくて。

編集部:いえいえ。伝わってきます。

加登谷:明星中学・高等学校に進学した生徒は、どのように成長しているでしょうか?また、どんな成長を望みますか?

佐滝先生:そうですね。中高は「自律心を持った自立した人の育成」というを目標にしています。協調性を持って他人に配慮しながらも、自分の足で立って自分の意見が言えるような人になってほしいです。そうすると、やっぱりプレゼン能力ですかね。これからはね。あとは「健康、真面目、努力」に尽きます。

加登谷:はい。

佐滝先生:そこをちゃんと実践してもらう。当たり前のことを当たり前にやるってこととか、人に感謝するとか、迷惑かけないとか、そういうことが本当に身についていけば、絶対苦労はしないと思いますね。ますますいい友達ができるとか、人生の財産が増えると思います。

加登谷:はい。

佐滝先生:あと、やっぱり2020年に東京オリンピックがありますが、どうしても英語は使いますよね。だから英語をツールとして、グローバル化に伴った、大きな世界に貢献して活躍してほしいです。私もそういう何かに携われればいいなと思ってます。

加登谷:そうですね。英語力を伸ばすプログラムが多い学校だと思います。明星での6年間で学んだ英語力は、すごく活かせると自分が実際に体験して実感していますね。

佐滝先生:あ、よかった。(笑)

加登谷:先生のお子様を、明星中学校または高等学校に入れたいと思いますか?

佐滝先生:はい。実は、娘が在籍しておりました。

編集部:おお!

加登谷:ははは!

佐滝先生:明星小学校から高等学校まで、12年間お世話になりました。理由や背景はいろいろあるんですけれど・・・。まずは、学校が私の職場がなので、面談や保護者会にもすぐに行けますし、娘の様子も見れますよね。何よりも勤務していて実感していた、明星学苑の師弟同行というか、手塩にかけたきめ細やかな教育というところですね。ただ正直、娘は出来も悪かったですし、在学中は娘も私もプレッシャーで緊張感はあったと思います。大学を卒業した今になって、いろいろ明星のことを語ってくれたんです。在学中は親子といえども、遠慮をしたり言いたいことも言えなかったですね。

加登谷:はい。

佐滝先生:私は担任の先生や学年の先生を信じて、一切口出しはしませんでしたし、ご迷惑かけて申し訳ございません的な感じで(笑)、陰ながら見ておりました。ただ、ここは中高が一緒なので、娘が中学在学中は私は高校で教えていましたし、娘が高校に入ったら私は中学、というように逆になりました。苗字が「佐滝」で変わってるので、バレバレだったかもしれませんが。娘に「明星ってどうだった?」って聞いてみたんです。大学は外部に進学したんですが、そこでいろんな学生たちと話をして感じたことは、明星の生徒は、大人というか、礼儀や気づかい、誠実さの面で全然違うんですって。大学では「この子、子どもだな」とか「えー?そんなことも知らないの?」ということが結構あるらしく、「やっぱり明星ってすごいんだね、お母さん」と言われて、「えーそうでしょう?」なんて。(笑)

加登谷:えへへへ。

佐滝先生:今だから言えるんですけども、嬉しかったですね。あとは、とにかく先生方の面倒見が良くて温かいということ。単なる勉強の知識だけでなく、生活的な知識というか、社会に出るにはこうあるべきみたいなことも教えてくれました。あと1個エピソードがありました。娘の最後の担任の先生が、渡辺直子先生だったんです。

加登谷:はい。私もそうでした。

佐滝先生:その先生は「明星の母」って言われてるくらい、本当に感じのいい、厳しいんですけど優しいんですよね。

加登谷:はい。

佐滝先生:ご褒美か何かで、クラス全員に唐揚げを揚げてきてくれたんですって。すごくおいしかったんだけど、次の時間は唐揚げ臭がひどくて「みんな、窓開けて!」という感じだったらしいです。何十人分の唐揚げ揚げてきてくれて、食べさせてくれたことは忘れないって言っていました。唐揚げでつられたわけじゃないと思うんですが。(笑)

加登谷:はい。(笑)

佐滝先生:そのくらい温かくて思いやりがあって、面倒見が良くて、でも厳しくて・・・とっても大好きな先生だと娘が言っていたので、やっぱり明星に入学させてよかったなと感じております。

加登谷:はい。

編集部:「明星の母」っていうのは、知ってました?

加登谷:そういう名前なのは知りませんでしたが、でも雰囲気はそのものですよね。

佐滝先生:そうですね。

加登谷:渡辺先生は私の高2と高3の担任先生だったんですけど、本当に「お母さん」という感じでした。先生にも私と同じ年の息子さんがいらっしゃるということもあって、本当のお母さんみたいで、いろんな相談もしました。なので「明星の母」って言われてすごく納得します。

編集部:明星学苑に合わない生徒って、どういうタイプでしょうか?

佐滝先生:合わない生徒・・・?

編集部:ええ。こういったタイプの生徒は、入学してきても、あまりよくないというような。

佐滝先生:うーん。中学受験ですと、どうしても自分の意志というより親御さんの思いが強いですよね。でも、高校生になると自分の意志で部活がやりたいとか、ここの学校に行きたいというのを自分で決断しなきゃいけなくなりますよね。人のせいにしないというか、例えば「親が言ったから」とかではなくて、実際に自分の目で確かめたほうが良いと思います。私は広報をずっとやっていたので、説明会等で「まずは生徒を見てください」って言うんですよ。生徒を見ると分かるじゃないですか。付け焼き刃で、中には、がさつな生徒や、ちょっと駄目な生徒もいるかもいるもしれませんけど、基本的に明星の生徒は、よく挨拶をして明るく朗らかなので、そこを見てもらえば自分の子どももこういう生徒にさせたいなと思うんですよね。そういう方に入学してほしいです。

加登谷:はい。

佐滝先生:ただただ「いいから行きなさい」「じゃあ入る」「でも本当は嫌だった・・・」みたいな。中学生は、そういう部分が難しいですよね。なので、自分で学校を訪れて、生徒や施設を見て、それこそ明星の空気感が自分にも合ってるなと思える生徒に来てほしいなということです。

編集部:なるほど。私から少し質問させていただいてもよろしいでしょうか。

佐滝先生:そうですね。はい。

編集部:なぜ明星にはまじめな生徒が集まるんでしょうか?あるいはまじめになっていくのでしょうか?

佐滝先生:うーん。加登谷さん、どうだろうね?(笑)

加登谷:(笑)

編集部:・・・中学から入学した生徒の場合でも、同様にまじめですか?

佐滝先生:そうですね。高校から入学した生徒よりも中学からの生徒の方がより直接的な体験をたくさんさせてあげられるんですね。一貫の教育っていうよりは、深めるというか、情操教育を含めてしているので、やはり中学から入った生徒の方が成績も優秀ですし、良い生徒が多いですね。もちろん高入生でも受験して入学してきたので優秀な生徒もいるんですけれど、やっぱり中学からの入学生はいいなって思います。さらに、トップクラスの生徒は、小学校や幼稚園からが多いですね。明星好きというか、保護者の方が信頼して入れてくださっているので、そういう生徒のほうが目立ちますね。

加登谷:こういうこと言ってしまってはなんですが、小学校も中学校もそこまで偏差値が高いところではないので、偏差値ではない学校の良さに気づいた親御さんが明星を選んで入学させるということは、そういう考えを持った親御さんに育てられた子どもということですよね。だから、もともとそういうまじめな生徒が入学してくるのかもしれません。

編集部:なるほど。

加登谷:小学校や中学校から入った生徒も、中学から高校に上がるときは、明星に染まるというか、まじめになっていくのはすごく感じますね。

編集部:なるほど。

佐滝先生:あとは、卒業生の兄弟とか、明星に関係がある方がやっぱり入学してくださるんですよね。今年になって私のクラスにも、それこそ最初に教えた生徒のお子さんがいるので、まるで孫かと思うぐらいです。

編集部:ははは。

佐滝先生:本当に何人もいるんです。私の年齢もバレバレで恥ずかしいんですけれど。そのぐらい、親御さんはそういう厳しさやまじめな部分など、明星の良さをわかって入学させてくださってるから、ありがたいなあと私は思いますね。

編集部:大変不遜ではありますが学校の教育をあえて「商品」として捉えた場合、リピーターがつく良い商品ということですね。

佐滝先生:はい。

編集部:一番大切なコンセプトにあたる「真面目さ」が購買者に支持されていて、つながりを生んでいる。真面目さを生むシステムがあるのだと思います。途中から生産ラインに乗った、中入生や高入生もクオリティ・コントロールされていて「真面目」になるのですから、非常に強力なシステムですよね。 ところで先生は広報を担当されていて、外部に情報を出すときに、まじめさや明星らしさをどう伝えるべきだと思いますか?たとえば「真面目」に染まっていく仕組みというのが、どういうものなのかなど。

佐滝先生:結果的に目に見えるもので判断することが多いと考えると、やはり「出口」ということで、やっぱりいい大学に入るかどうかでしょうね。ただ、明星のコンセプトは、本当に生徒がやりたいことを実現させることにあるので、例えばこの生徒はすごく頭いいから、いろんな大学受けさせて、「合格実績を稼げよ」みたいなことは絶対させないし、やっぱりこれをやりたいのでここしか受けませんという生徒には「じゃあ、頑張って」というように、キャリア教育も含めて行っています。だから、売りというのは難しいですね。ただ、加登谷さんが言ってくださったように、やっぱり英語に関しては結構頑張ってるなというのはありますね。ええ。

編集部:なるほど。卒業生の方々はよく学校に来られますか?

加登谷:よく来ます。

佐滝先生:来ます。学校にいる先生が変わらないんでね。

編集部:なるほど。

佐滝先生:「明星祭」という、文化祭に一番来ますね。自分のお子さん連れて来たり、もう同窓会ですよ。本当に。よく来てくれるよね?みんなね。

加登谷:はい。後輩たちを教えるために、部活に顔を出す卒業生が多いです。私もそうなんですけど。

佐滝先生:ああそう。OB、OGがね。

加登谷:ただ単に担任の先生に会いたくて、というのもありますね。(笑)

編集部:そうか。いろんな学校を見てると、いくつかのパターンがあるんです。なかでも伝統校、こちらもそうですけども、一言では言い表せないさまざまな取り組みが組み合わさって出来ている強固な仕組みがあります。それが伝統校の強みなのかなと思います。でも一方で非常にたくさんの要素の組み合わせで出来ているので、人に伝えるのはなかなか大変という・・・。漠然としてるままのほうがいいかもしれないですが。

佐滝先生:あー。そうですよ。でも、(そのままだと)よくないかも。そうですよね。

加登谷:はい。不思議ですよね。まじめな生徒が集まったのか、まじめになっていくのかわからないですね。

編集部:そうですね。明星の卒業生で、座談会とか開いてもらいたいですね。

佐滝先生:あー!そうですね。

加登谷:なんかもう、不思議と戻って遊びに来たくなるというか。

佐滝先生:懐かしくなるよね。

加登谷:その、高校の友達と話してると「久しぶりに学校行く?」みたいな話になります。

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