【書評】 受験や勉強に役立つ書籍をご紹介

  • 中学受験 はじめての学校ガイド 2015
  • 森上研究所スキル研究会 著
  • ユーキャン刊
  • 税込価格 1,728円

  • 女子校育ち
  • 辛酸なめ子 著
  • ちくまプリマー新書
  • 税込価格 842円

  • お父さんが教える算数
  • 竹内洋人 著
  • ダイヤモンド社刊

『中学受験 はじめての学校ガイド 2015』

森上教育研究所スキル研究会・著/ユーキャン刊/税込価格 1728円 中学受験はじめての学校ガイド2015

版元は、あの「ユーキャン」

AKB48をテレビCMに起用して知られている、あの「ユーキャン」が初めて手がけた中学受験用の書籍である。「ユーキャン」は、成人向け資格試験の通信指導では最大手として大きなシェアを獲得しているが、今後、中学受験市場になんらかのかたちで進出しようという企業意図もうかがえる意欲的な出版である。

よくある「受験ガイド」本との差別化を念頭に編まれた書籍である。明確に読者対象を「これから中学受験を考えようかと思っている保護者」に置いた編集・執筆姿勢で貫かれている。

巻頭に、「中学受験の基礎知識」が置かれ、私立。国立中入試とは、どのような特徴があり、保護者としてどんな姿勢で臨むべきかを、わかりやすく解説している。すでに中学受験を経験した保護者であるなら既知の事項であり、あえて述べる必要もないと思われることも丁寧に叙述している。基本事項ではあるものの、なぜ中学受験において出口(大学受験実績)と入り口(中学入試)に着目したのかを記している点は、多くの読者にとって参考になるだろう。

総花的ではなく焦点が絞られた「学校ガイド」

さらなる特徴は、「学校ガイド」として首都圏の代表的な70校に限定して掲載してある点である。類書は、すべての学校を取り上げた学校ガイドが一般的である。これらは表層的な情報を得たり、調べようとする学校が全て掲載されてはいるものの、各個人が志望校を検討したり、その校風・特徴を把握しようとしたとき、あまりに総花的で役に立たないことが多い。

そこで、本書では70校に絞って、それぞれの学校について論究している。多くは難関校・人気校にラインナップされる各校ではあるが、これらの学校についてひと通り読み込んでいくことで、中学受験の概況や私立・国立中高一貫校の実情を把握できるように構成されている。

本書内でも、はっきりと明記されているように「ホンネで役立つ書」というコンセプトを掲げ、各校の状況、ことに校風や学校文化に言及している。限られた文字数のなか、各校の素顔がストレートに伝わってくる内容である。  

斬新な大学合格実績分析の姿勢

また、現今の中学受験における学校選択の大きな要素となっている大学合格実績の点においても、読者のために客観的な尺度から各校の数値を分析する手法がとられている。各校への綿密なアンケート調査に基づき、一般に発表される累計合格者数ではなく、できるだけ合格者総数ではなく、実進学者数実際に大学進学した実数に着目して分析している点である。また文章での丁寧な解説を付している点が本書のウリのひとつではなかろうか。

意外なことではあるが、各校の大学進学実績を同一尺度で比較できるようなかたちで概観できる資料は少ない。ましてや中学受験に慣れない保護者に、それぞれの中高一貫校の大学合格実績を分析して伝えるガイドブックは存在していないように思えるだけに、本書の斬新さが光る。

入試問題を偏差値より重要ととらえる

そして、「偏差値より大切なこと」として、各校の入学試験問題を真正面から取り上げている点も特筆すべきことである。ともすれば、保護者も入学難度をしめす指標のひとつにすぎない偏差値に振り回されがちである。合否という厳しい現実から逃れることのできない競争試験であるから当然ともいえるが、わが子にとって望ましい中等教育環境を選びとるのが中学受験であるとするなら、果たして偏差値を較べるだけでいいのか、という書籍作成側の姿勢を読み取ることができる。

入学試験問題というのは、その学校の「顔」でもある。どんな入試問題によって生徒選抜しようとしているかは、各校の基本的スタンスを明示するものであり、優れた入試問題を出題している学校は、すなわち優れた教育内容を有した学校といえるからである。

保護者としては、偏差値以上に、どんな入試問題を出題しているのかの概要を把握したうえで学校選択にあたって欲しいというのが、本書作成者の願いでもあり、中学受験を志す保護者への熱いメッセージといえるだろう。

「ユーキャン」の今後に注目

ともあれ、本書が「ユーキャン」という、これまで中学受験とは無縁だった発行元が編んだものであり、年度版として刊行され、今後も継続されるとするなら、これまで存在しなかった視点からの学校選択資料の提供元となっていくだろう。

そして、なんらかのかたちで、新しい民間教育機関が中学受験に関与してくることで、この世界にも新風が吹き込むであろう。

本書は、扱う対象が上位校を中心とした70校であったのだが、今後、ボリュームゾーンともいえる中堅校を対象とした企画に着目するであろうことも期待される。

投稿者:桜井薫 【教育評論家】