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小暮愛実
卒業生

取材日:2017年9月26日

インタビュイー:司書教諭 山﨑清子先生

インタビュアー:上智大学文学部新聞学科2年 小暮愛実


1. 在庫書籍数

「インタビュイー:司書教諭 山﨑清子先生 インタビューアー:小暮愛実」


小暮:メディアセンター全体にある書籍数を教えてください。

山﨑先生:開架に約7万冊と閉架書庫に約2万冊で、合計9万冊です。ただ、それは図書登録されているものの数で文庫やブックレットなどは別にカウントするので、もっとあります。

小暮:9万冊以上ということですか。

山﨑先生:そうですね。

小暮:すごい数ですね。

山﨑先生:毎日読んでも、6年間では読み終わらないです。


2. 同一名で一クラス分用意されているもの

小暮:同じ本が30冊とか40冊、1クラス分くらい用意されているものはあるんですか。
山﨑先生:この学校ではないです。
小暮:複数冊置いてある本はありますか。
山﨑先生:「読書ノート」で紹介している本に関しては、常に棚に置いて実際に確認するためのものと、借りられるものとして少なくとも3冊は注文しています。それから、年度単位で世田谷区立の図書館から本を借りてきて3冊以上を借りられるようにもしていますね。「読書ノート」で紹介している本は100冊で、それを中1から中3まで同じ本を読むことになるので、ある
程度ここでも探せるように用意はしています。


「読書ノート:読んだ本を紹介し、生徒間で感想を共有」

【注釈:1・2年生は全員、リストの中の本を年6冊以上、3年生はリストの中から4冊以上と、読書ノートに推薦したい本を自由に2冊以上探して読むことになっている。リストの作品はいわゆる名著ではなく、生徒にとっての読みやすさを基準に選出。ノンフィクションの充実も特徴。卒業後も「読む人」であり続けるために、読書教育に力を入れています。】
小暮:逆に1冊しかない本っていうのはありますか。
山﨑先生:大体は1冊です。複本で持ち過ぎると、ほかの本が入れられなくなってしまうので。いろんな本に触れてほしいと思っていますし。ただ同じタイトルでも、訳者違いや、版違い、ハードカバーの本とソフトカバーの本と文庫本だったりで、それぞれページが違ったり、見やすさの違いで本の印象も違うので複数冊買うこともあります。例えば上橋菜穂子さんの『守り人』シ
リーズは、全部あります。【注釈:「守り人(もりびと)」シリーズ:児童文学として出版されたファンタジー小説。「旅人」シリーズと合わせて、シリーズ全10巻。その他、短編集なども出版されている。ドラマ化やアニメ化といったメディアミックスで、さらにファン層を拡大している。】
小暮:単行本とか?
山﨑先生:ソフトカバーとか。
小暮:閉架書庫には、どんな種類の本が置いてあるんですか。
山﨑先生:一番分かりやすいのはキリスト教関係の資料で、普段は使わないけれど、何かあったときに調べられるように置いてあります。あとは、内容的に古くなってしまったけれど捨てにくい調べ物の本であったり、普段はそんなには使わないけれども先生が授業の関係で調べるのに使うものであったりとか。ちょっと古くて生徒の皆さんは使わないかもしれないけど、何か詳し
く調べるときに使えるようなものとかです。小暮:先生が利用される頻度は高いんですか。
山﨑先生:教科にもよりますけど、受験勉強対策で赤本の過去問をすごく小まめにチェックされる先生や、授業の準備で使われたりします。あと国語の先生は原典にあたられることが多いので利用も多いです。
小暮:じゃあ先生も生徒も問わず、みんなが使えるんですね。
山﨑先生:授業時間に「キャレルデスクに人影が」と思って、「生徒がいたらどうしよう」と思ってのぞいたら、まじめに勉強しているK.K.先生とか。

「キャレルデスク」
【注】キャレルデスク:図書室や自習室などで個人学習のために設置される、個室または個席。】
小暮:ああ、K.K.先生やってそうかも(笑)。

3. 座席数

小暮:このメディアセンターの座席数は、どれぐらいでしょうか。
山﨑先生:メディアセンターは、オープンスペースのほかに学習室があります。学習室は、基本的に生徒1クラス分は座れるようにということで、多いクラスで44人までは座れるようにしています。第1学習室は据え置きの机なので6人掛けが8卓で48人座れるんですけれど、第2学習室は大体40人が座れるようにしていて、必要に応じて座席を増やせるようにしています。
中庭側オープンスペースも同様です。そのほかのオープンスペースにあと80席くらいあって、キャレルデスクも合わせると合計で240席とか。


「第1学習室」

「第2学習室」

「オープンスペース」
山﨑先生:第2学習室同様に中庭側オープンスペースも机が組み替えられて、グループの人数に合わせて動かせるようなスタイルにこの夏休みからなりました。あわせてWIFIも強化されました。だから、グループ作業をしたり、一斉講義型のスタイルに変えたりというのがやりやすいんです。でも前からあったコタツデスクもちゃんと残してあります(笑)。

「中庭側オープンスペース」

「こたつデスク」
小暮:第2学習室変わりましたよね。変わったことで授業で使う頻度が増えましたか。
山﨑先生:そういう利用(グループ作業やタブレットを使用した授業)も増えてますね。
小暮:座席数が変わったことで、生徒が結構使うようになりましたか。
山﨑先生:「試験前の勉強のときにイスが足りない」というような意見が、投書箱に寄せられていたんですが、それも多分なくなるかなと思います。
小暮:そうですね、これだけあったら。
山﨑先生:それから可動式でたためるので、必要に応じてちょっと足りなくなったら増やしていくこともできるので、様子を見て出したりとか。

「可動式たためるイス」

4. 生徒の利用頻度

小暮:生徒の利用頻度は、どれぐらいでしょうか。
山﨑先生:さっき見てみたら、8月28日から今日(9月26日)までに約1カ月弱で借りられたのが、中学生は約1,000冊。去年の中学校の年間貸出冊数は、13,000冊。
小暮:結構多いですね。
山﨑先生:中学生は。
小暮:中学生は(笑)。月にだと何冊くらいでしょうか。
山﨑先生:年間13,000冊を12カ月で割ると、大体1,000冊ちょっと。1人あたり、月にざっと2冊ぐらい。
小暮:中学生が多くて・・・
山﨑先生:高校生になると、残念ながら遠のく人が多いです。メディアセンターには来るけれど、キャレルデスクに直行して、お勉強には使うけど本は借りないとか。「もっと使えば良かったと思います。皆さんはそんなこと思わないようにいっぱい使ってください」って言って卒業していく卒業生が多い(笑)。
小暮:そうですね(笑)。使おうと思っても、割と時間がなかったりして・・・。
山﨑先生:中2、中3になると、クラブとかがどうしても忙しくなっていくから。中学生の間は読むにしても、やはり学年が上がるにしたがってどんどん勉強も忙しくなり、信和会の活動も忙しくなっていくので。
【注:信和会・・・生徒の自治組織。生徒会や委員会など。】
小暮:私も思ってたよりも全然使えなかったです。
山﨑先生:でも同級生とかでも、ここを自分の書庫のように使っている人もいたよね。
小暮:いましたね。
山﨑先生:そういう生徒だと年間に200~300冊
小暮:中学生が借りている本は、どんな本が多いですか。
山﨑先生:日本の読み物が中心です。
小暮:フィクションとかですか。
山﨑先生:フィクション。
小暮:物語ってことですよね。ノンフィクションとか自然科学とか、ああいうのを読む人は少ないですか。
山﨑先生:好きな生徒もいる、という感じで自分から読む子は多くないです。それもあって、「読書ノート」ではノンフィクションも必ず読んでもらうようにしています。
小暮:海外の作品とかはあんまり?
山﨑先生:海外の作品も最近の生徒はあまり読まないので、「読書ノート」で海外の本、外国の本を読もうって言っています。
小暮:ちなみに日本だと、どんな作品が人気ですか?
山﨑先生:多分、一般書店で売れている作家さんがそのままという感じです。有川浩さんや、重松清さんが好きですし。
小暮:王道な感じですね。
山﨑先生:東野圭吾さんや湊かなえさんがいいとか。そういった方の作品がどうしても多いですかね。
小暮:個人的には辻村深月さんが好きです。
山﨑先生:辻村深月さんが大好きっていう図書委員もいます。
小暮:大好きです(笑)。

5. リクエストがあった本の発注サービス

小暮:生徒から本のリクエストもあると思うんですけど、そういう発注サービスっていうのはありますか?
山﨑先生:リクエストを受け付ける用紙が、カウンターに置いてあって、それで申し込みをしてもらうかたちになっています。図書は基本的にそのスタイルです。
 図書はそれなりに予算があるので逐次リクエストに対応できるんですけど、DVDと雑誌はそうできません。雑誌はどうしても年間購読になるので、購読を頼むタイミングが限られてきます。(毎年)1月に来年度購読したい雑誌のリクエスト受け付けをやって、4、5枠入れます。DVDもリクエストを受け付けているんですが、1本が2万円とかする。小暮:えっ!
山﨑先生:そうなんです。貸出用のDVDっていうのは高いんです。だからそんなにたくさん買えないので、今年度は前期1回、後期1回、この期間だけリクエストを受け付けますというスタイルにしました。みんな、本でも何でも「これがほしい!」ってリクエストしてきますが、それが買えるかどうかはまた別の問題だったりするので。図書館で置けるDVDというのは限られていますし
、本にしても今は絶版になってることもあるので、そうなると最初から購入は難しいということになるんですけど。小暮:さっき、難しいものもあるっておっしゃってたんですけど、リクエストがあった本は、どれくらいの割合で購入につながってますか。
山﨑先生:大体週に1度くらいのミーティングのタイミングでリクエストに対する選考を行っています。そのときに「今回は残念ながらほとんどなし」というときもあれば、「全部OKだね」というときもあります。今ちょうど結果を貼り出していて、数えたら7割くらいは購入しているかなと。
小暮:結構リクエストは通ってるんですね。
山﨑先生:そうですね。図書のリクエストだと応えられるかなと。
小暮:どういうジャンルのリクエストが多いですか。
山﨑先生:やはり小説が多いです。今度映画化される『麒麟の舌を持つ男』もずいぶん前にリクエストで買いました。あと誰かがリクエストで入れた本の続きを、別の生徒が「2巻が読みたいです」とリクエストして、入れることも結構あります。
 リクエストとは違うスタイルなんですけれど、ここ何年かは、図書委員が自分たちで本屋さんに行って「これはぜひメディアセンターに置きたい!」というのを実際自分の目で見て買う選書ツアーも取り入れています。注釈:『ラストレシピ 麒麟の舌の記憶』田中経一著、幻冬舎文庫
小暮:本が好きな生徒が選ぶと余計に広がりますよね。
山﨑先生:あとは、「こういうが本ほしい」というリクエストを図書委員が聞いて、探して買うこともあります。一応分野は偏らないようにこちらで指導しているので、書店全体の棚を見て入れたい本を探すように。「これはこういうときに役に立ちそうだ」という視点でも買います。
小暮:じゃあ、リクエストの本を選抜するときの基準は、周りとのバランスを見てっていう感じですか。
山﨑先生:まず最初に買えるかどうかのチェックがあります。ここに置くということはメディアセンターの、みんなの共有財産になるわけですから、ただ自分がほしいだけではなくて、ここに置く理由がきちんと書けていると、購入しようという感じになります。ただ、シリーズがすごく長いものだったりすると、全部を買うのはちょっと難しいかなと。
小暮:選ぶほうも結構吟味しながらですね。
山﨑先生:そうですね。
小暮:リクエストをするときって「これがほしいです」って本の題名を書くだけじゃなくて、理由も書くんですか。
山﨑先生:理由を必ず書いてもらっています。リクエスト用紙には、書名・著者名・出版社名・価格を書く欄があります。書名だけですと、同じような本のタイトルで違う人が書いていたりすることもあれば、本人の記憶違いでちょっとタイトルが違って、そのタイトルで調べると分からないこともあります。「似たようなタイトルの別の本があるけれど、どっち?」というときに、著者名
があるとこっちだなと分かったりするので。 それから価格があると、文庫本がほしいのか単行本がほしいのかが分かります。単行本のほうが高いけれど、「文庫本のほうが持って帰りやすいから、文庫本がいい」という生徒もいれば、逆に「単行本じゃないと、装丁が違うから私は嫌なんです」という生徒もいたりするので。(価格が)書いてないリクエストで(実際に)買うことになったときは、本人に「文庫本と単行本あるけどどっちがいいの」と確認をします。 さっきも言ったように買えない本の場合には、例えば、エレキギターの本がほしい場合には、「この本は買えないけど、何か違うほしい本はないか」と聞き直したりすることもあります。小暮:その都度対応してやっていく感じですね。

6. 貸出ベスト3

小暮:メディアセンターで貸し出されている本の中で、ベスト3を教えてください。
山﨑先生:先ほどもお話したとおり「読書ノート」という取り組みをやっているので、どうしてもその本が上位に上がります。これが今年度の4月1日から今までのベスト3。ノンフィクションの『もし富士山が噴火したら』と『綾瀬はるか「戦争」を聞く』、そして外国の読み物の『ドレスを着た男子』が今年度のベスト3。
 昨年度のベスト3は『十字架』、『TOKYO 0円ハウス0円生活』、『ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか?』で。これももちろん全部「読書ノート」の本で、うち2冊がノンフィクション。恵泉としてノンフィクションを多く掲載しているというのもあるのか、ベスト3にはノンフィクションの本が多いですね。小暮:「読書ノート」で紹介されたものが影響してるんですね。読んでみようって思ってるってことですよね。
山﨑先生:「読書ノート」で紹介されたら、年間6冊は読むことになっているので、その本をここで借りていくという生徒が多いからかな。
小暮:読書ノートで紹介された本はメディアセンターで借りないといけないんですか。
山﨑先生:「読書ノート」は中1では国語の授業の中で、中2と中3は授業外ですが、基本的にここで借りるか、公共図書館で借りるか、ということでやっています。
小暮:そうしたら、ここで借りますね。
実際に「ノンフィクションや外国の本を読みましょう」っていう「読書ノート」をやって、生徒から「おもしろかった」とか、反響はあるんですか。山﨑先生:今年は、中学3年生で「読書ノート」のコメントが良かった子にクラスでその本を紹介してもらうという時間を取りました。そのおかげか、友達に紹介されて面白かったから読んでみて、やっぱり面白かったから親に薦めてみたということを書いてくれている子もいました。友達が紹介して面白そうだとやはり読まれます。
小暮:読んでみたくなりますよね。
山﨑先生:その時は、金曜7限の授業を読書の時間として、1人2〜3分で、5人くらいに本を紹介してもらったあとに、残り30分くらいを読む時間にしました。紹介されたた本も、その場で読みたい人に回してあげたりすると、「さっき誰々が紹介していた本読みたい!」と言って読んでくれたりとか。
小暮:そういうのいいですね。「読書ノート」から広がる感じ。私のときももっとあればよかったのにな(笑)。
この『TOKYO 0円ハウス』っていうのは、フィクションですか。山﨑先生:ノンフィクションです。実際にホームレスの人たちが、どうやってブルーシートの中で暮らしているかとか、生活の知恵が分かるんです。この本を読むと、ホームレスの人たちってもしかすると自分たちよりも幸せな暮らしをしているのかもしれない、というようなコメントを書いてくる生徒が結構いて。

『TOKYO 0円ハウス 0円生活』注)『TOKYO 0円ハウス 0円生活』坂口恭平著単行本:大和書房文庫本:河出文庫
小暮:読書の幅が広がると、考え方も広がると思うんです。大学に入ってから、やっぱり本を読んだほうがいいなって思うので。中学、高校でこれだけ時間があるから、ぜひ読んでほしいですね。
山﨑先生:このときには「そんなことあるんだ」ぐらいにしか思わなくても、違う知識を得たときにつながってくるとどんどん考えも深まってくるし、知識も広がってくるから。
小暮:漫画もあるんですか。
山﨑先生:この本(『もし富士山が噴火したら』)は一部が漫画になっています。クイズ形式になっていて、こういうときどうしたらいいかとか。例えば、富士山が噴火したときに東京にいれば安全と思っている人がいるけど、本当にそうなのかとか。あと地震の本とかも読書ノートには入れているので、実際自分の身に起こったときにどうするかというのを、少しでも手に取りやすく
考えてくれるといいなと思っています。


『もし富士山が噴火したら』
小暮:ノンフィクションって堅いイメージがあるので、こういうふうに読みやすいものがあるよって、それこそ「読書ノート」で紹介してもらえるとすごくありがたいんじゃないかなと思います。

7. 生徒に読んでほしい本

小暮:山﨑先生が生徒に「これは読んでほしいな」って思う本、いっぱいあると思うんですけど、教えていただきたいと思います。
山﨑先生:特に学校図書館でということで今回持ってきました。もちろん私自身、読み物は小さい頃から読んでいたから大好きなんですけど。こういうノンフィクションで世界を知ることもあるだろうけど、「同じ年頃の違う国に暮らしている子でも同じように感じることがあるんだ」と感じて心を寄せることもあると思います。
全然違う世界のこと、例えばこの『オオカミ族の少年』は舞台が紀元前4000年。紀元前4000年って社会の授業で習っても、どれだけ過去のことだか分かりにくい。だけど、本を読むことで「こうやって人は暮らしてきたのかもしれないな」って思いを馳せることができるというのが、私は好きです。学校の図書館って読み物だけじゃなくて、ちょっと興味があるという本にたくさん出会える機会でもあると思うんです。例えば自分が生徒だったときは、お菓子とか料理の本もすごく借りていて。「これは作ってみたい」って思うレシピが1個載っているだけの本って自分じゃ絶対買えないでしょう?小暮:はい。

『和菓子図鑑』

『究極のチョコレートレシピ』
山﨑先生:この『究極のチョコレートレシピ』だったら2,000円くらいするし。買うのは無理でも、ここでだったら借りられるよね。それで、「作ってみてすごい美味しかった! みんなにも大好評だった! じゃあやっぱり買ってこれからも作りたい!」と思えば買うこともできるし。物によっては今は買えない本もあるけれど、そういう本を借りて読んでもいいと思うし。
写真集も、私が中学時代(山﨑先生は恵泉OG)にここで過ごしていて好きだったものを中心に持ってきたんですけど。写真集こそ、さらにいいお値段がしてしまって、個人的にはなかなか買えるものではなかったりするんだけど。そういうものを見ることで、なかなか写真展に中学生で出かけることができなくても、月の光だけで撮った写真集とかをみんなで「すごいね」って言いながら見たりとか。


『月光浴』
山﨑先生:『マジックアワー』という限られた時間、朝日が昇る直前と夕日が落ちた直後の時間だけの写真集とか。

『MAGIC HOUR』
山﨑先生:こういう大きい本は、本屋さんで見るのはなかなか大変だと思います。値段が高いから汚れたら困るというのもあってか、カバーがかかっていることも多いですし。実際には買えないけれど、すごくすてきな本が、図書館には並べておけるので。その中ですごく好きだというものだけ「お金をためて買おう!」ってなってくれたらいいかな。もしそうじゃなくても、「ここに来たら
この本を見られる」というのだけでもいいかなと私は思って、結構大きい画集とかも図書館に入れています。読むというのとは違うかもしれないけれど、読むだけが本でもないので。メディアセンターってこれだけいろんな本があっても、どうしても9類、日本の小説ばっかり読む子が多いんだけど、そうじゃない本にもふれてほしいなと思います。小暮:本当に、写真集見ればよかった。こんなにあったんだ。
山﨑先生:図書館の機能の1つとして、いろんなことを知れる、自分の興味がなかったことでも、すてきなことがある、こんな世界が広がっているというのを知る一番身近なチャンスだと。
小暮:実際に買ってもいいし、ここで見るだけでもいいし。結構活字が苦手な生徒が多くて、図書館から離れちゃう生徒も多いと思うんですけど、これなら写真だし、見るだけですごいって分かるし。
山﨑先生:物によっては「いつかここに行ってみたい」とか、ウユニ塩湖の写真だったら「実物を見てみたい」と思うかもしれないし。カンボジアのアンコールワットとかアンコール・トムとか。そういうのを見て、「いつか私もここに行ってみよう」って思うのも。
小暮:そうか写真集か。これは絶対薦めたほうがいいと思います。
山﨑先生:時々薦めてはいます。私は借りて帰っていたけれど、重たいから借りて帰らなくていいと思うんだけどね。それこそ眺めるだけでも。
小暮:こんなに写真集があるのは知らなかった(笑)。
山﨑先生:あとは選書ツアーで、買って帰ってきたりとか。
【注)選書ツアー・・・図書委員の生徒達のオススメの本を、実際に書店に行き購入する】小暮:本当ですか。
山﨑先生:うん。美しい世界遺産みたいなものとか。
小暮:図書委員やればよかった(笑)。
編集部:先生は生徒一人ひとりに、こういった本を薦めるんですか。
山﨑先生:そうですね。「何か面白い本ないかな」と聞かれて薦めることはもちろんあるんですけれど、その生徒が何を面白いと思うかっていうのをある程度知らないと、どのくらい読めるか分からないので。「どんな本を読んだか」とか「何が好きか」というのを聞いてから薦めるようにはしています。
例えば、私は外国の読み物を結構読んでいたんですけれど、外国の読み物って「カタカナの名前がどうしても頭に入りにくいから嫌だ」という生徒には、「無理に薦めてもちょっと難しいかな」と思って、そうではないものから入ってもらうようにしています。どうしても「読書ノート」の中から外国の読み物を1冊か2冊は読むようになっているので、その中で興味を持てそうなものを薦めるようにしています。実際に本をさわって開いてみないとわからないことも多いです。「本が厚いから嫌だ」とか「字が小さい」とか、そういう最初の印象も大事なので。そういったことも確認できるように、「読書ノート」は必ず1冊展示しておいて、これなら読めそうというのを手に取ってもらっています。読んでつまらないという体験を重ねると余計に嫌になると思うので、「これなら読めそう」という最初の一歩を大事にしたいなと思って、タイトルが気になるとか表紙がすてきという分かりやすさも、「読書ノート」を選ぶときには必要かなと思います。編集部:「読書ノート」っていうのは、先生が選ぶんですか?
山﨑先生:そうですね。「メディア教育部」という分掌がありまして、そこの教員で部長をしている者と司書教諭が2名いますので、合計3人が中心になって選びます。それ以外の「メディア教育部」の先生方にも、特に中高生に薦められるノンフィクションの本などはどんどん読んでもらって、部会の中でも薦め合う時間を設けています。また、それ以外の先生方からも「お薦め
があったらぜひ教えてください」というかたちで幅広く生徒に薦めたい本を探しています。職員室にもそのための本棚を用意していて、読んだら感想やコメントをちょっと残してもらったりしています。年度末に「読書ノート」で評価をつけてもらっているので、どうしても読みにくい本があると、その本を外して代わりの本を入れたり。でも「こういう内容のことは知ってほしいから、これじゃなかったら何がいいだろう」と考えて違う本を入れたりしてますね。小暮:高3だったと思うんですけど、C.S.先生の本棚が。
山﨑先生:C.S.先生のクラスの「※C.S.本棚」かな。
 ※小説でも評論でも「本を読む」ことは、自分とは違う価値観や世界観を持った人の考えに出会うことです。他者を通して、自分の中に新たな発見や意見が生じるのです。できるだけ広い射程の中で、ものごとを考えること、日本以外の地域では、人々が何を考え感じているのか、遠い過去や遠い未来では、人々はどんな風に考え、どんな風に生きているのか、それらを意識し、考え続けることが、若い人たちには求められているのだと思います。自分に理解できない話には反応もせず、話題そのものを存在しないものとして扱うような態度からは、決して世界は広がりません。「自分の知らない話題を面白がる能力」を身に付けることは容易ではありませんが、沢山の世界に出会ってほしい、このことから「C.S.本棚」がつくられました。小暮:そうです、そうです。「C.S.本棚があっていいな」ってすごい思ったのを覚えていて。「ご自由にどうぞ」みたいな感じで。私は持っていかなかったんですけど(笑)。
山﨑先生:あそこ、DVDもあるよね。
小暮:そうでしたっけ。DVDもあったんですね。あれはC.S.先生のものですか。
山﨑先生:C.S.先生の個人的なもの(笑)。
小暮:教室の中で手軽に読めるのが、いいですよね。

「C.S.本棚 ①」

「C.S.本棚 ②」

「C.S.本棚 ③」

「C.S.本棚 ④」

8. メディアセンターの名前の由来

 編集部:ここは図書館ではなくてメディアセンターっていう名前じゃないですか。これはどういった考えがあってそういう名前になったんですか。

山﨑先生:そうですね。図書だけではなくいろいろ扱っているというのもあります。館内には放送室やコンピューター室もありますし、こちらでは図書や雑誌などの紙の資料のほかにDVDやノートパソコンもカウンターで貸出しています。また、ビデオカメラやデジタルカメラなども、必要に応じて生徒に貸出していますね。あと、ボイスレコーダーも。生徒も出版委員会などは自分

たちでインタビューをするので「ボイスレコーダーを貸してください」って借りていくこともあります。この間は、「合唱コンクールで、クラスで合唱している様子を撮影したいので、ビデオを貸してください」ということもありました。 編集部:メディアセンターは、いつからあるんですか。

山﨑先生:ここが建ったのが2003年。もともとは中学と高校が別の校舎だったので、その時代は中学図書室、高校図書室でした。(中学と高校が)一貫化されてこの建物が建つときに、こういうスタイルでオープンすることになってメディアセンターという名前が付いたと聞いています。

編集部:学校の中心にあるんですね。私たち教育図鑑は図書館は重要な要素、学校は人と図書館でできていると言っても良いと考えているんですよ。それも、何か目的とかあるんですかね。

山﨑先生:この建物は中央がアトリウムになっていますよね。だからどこにいても常に本が見えるというのを目指したのだと聞いてます。こちら(メディアセンターの北側)は特別教室棟なので、授業で特別教室に行く機会って日に1度くらいはあると思うので、そうやって移動したときに必ず視界に入るような場所にメディアセンターを置くという。

編集部:なるほど。

小暮:この木はガジュマルですか。

山﨑先生:本物のガジュマル。


9. 司書が好きな本

小暮:山﨑先生が特に「これが好き」っていう本はありますか。
山﨑先生:今回、私が持ってきた本は、全部好きなんですけれど、小学校のときに読んですごく好きだったのは、『子どもべやのおばけ』という本です。本は自分が体験してないことも体験できるのが良さの1つなんですが、「自分だけしか体験してないんじゃないか」と思ったことが「実はそうじゃない」と知るものでもあると思うんですね。例えば、うれしいことだったら自分だけで
もいいんだけど、悲しいことがあったときに、それが人に言いづらくても、それが「自分だけの悲しみだ」と抱えているより「あ、そうじゃないんだ」と気付かせてくれるような。そういう寄り添い方をしてくれる本に小さいときから出会えていると、大人になってからもそういうふうに世界が見える。今、傷ついたり「独り」だと思うことがあったとしても、そうではない先が見える体験をしてもらえるといいなと思って。「そのためにもいろいろ読んでくれるといいな」ということにつながってしまうのですが。


『子どもべやのおばけ』注)『子どもべやのおばけ』カーリ・ゼーフェルト作、前田浩志絵、倉澤幹彦訳徳間書店
小暮:中学、高校のときに読んでいて良かったなと思った本はありますか。
山﨑先生:荻原規子さんの『空色勾玉』などですね。この作品は「読書ノート」でも紹介していて、私は上橋菜穂子さんよりこちらを先に読んだので、日本のファンタジーと言ったら荻原さんなんです。もし中学時代に『獣の奏者』や『守り人』を読んでいたら、そちらのほうに心が動いていたかもしれません。読む時期によって、もっと染まるというか変わるものとかがあると思うの
で。例えば、「これ中学時代に読みたかった」と思う本を読んでいても、中学時代だったらのめり込んで世界に没頭できたかもしれないけれど、今はそうなれない、ストッパーが働いてしまう自分がちょっと悲しくなるときもあります(笑)。 でも、今読んでも同じように面白いなと思う本もあります。『クロニクル 千古の闇』シリーズは、生徒にも「これは本当に面白い」って言ってもらいました。「6巻まで全部読んだ」という生徒もいて、大人に紹介しても「電車乗り越しました」と言われるくらい。

注)『空色勾玉』荻原規子作 徳間文庫

「獣の奏者」シリーズ 上橋菜穂子作講談社

「クロニクル 千古の闇」シリーズミシェル・ペイヴァー作、酒井駒子絵、さくまゆみこ訳評論社


10. どんな生徒が多いですか

小暮:山﨑先生は、恵泉の生徒ってどんな人が多いと思いますか。
山﨑先生:どんな人…。私は、中学高校とここで育って、大半を恵泉の生徒しか知らないので、ほかと比べてという感じではないのですが、結構いろんな生徒がいますよ。好きなものが他人と違っていてもそんなに気にしない人が多いかな。違っていても「それはそれ」という生徒が多くて。学校の外を歩いていると、どうしても同系列の服装で固まって歩いている子が多いよう
な気がするけれど、ここの生徒たちは服装がバラバラでも仲良かったりとか。小暮:私も趣味が全然違っても仲良かった子とかいました。
山﨑先生:そういう「同じじゃなくてもいい」というのが、服装とかそういうところから感じられるのが恵泉らしさなのかな。統一感はないけれど、個体は個体として一緒に行動できる。同質化されたグループじゃないけれど、一緒に行動もできるっていうのが恵泉らしさかなと、個人的には思います。自分で行動できるし、人とも一緒に行動できる。一人になったら動けないという
のはすごく残念なことだけど、一人でしか動けない人もそれはそれで困るじゃない?小暮:自立した女性っていうと、一人で生きていけますっていうよう女性像を想像する人が多いと思うんですけど。
山﨑先生:自立して一人でも動けるけど、それは他人を支えたりもできるし、人と一緒に手を組んでいくこともできるというのが自立だと思うので。「自分だけで何かできる」というのを目指すのではなくて、自分のことは自分でできるし、でもできないことを「助けて」と言えるのも自立だと思うので。そういう協調性も同時に身につけられるといいなと思います。
編集部:受け入れるとかつなげるとか、そういう空気感が山﨑先生にも伝わったりするんですか。
山﨑先生:何かを決めるときに「私もそれでいい」って言うと、「それ"で"いいじゃなくて、何"が"いいの?」と(生徒の頃に)結構聞かれたような気がして。私自身や私の同級生の間で「恵泉らしさ」ということでいまでも笑いのネタにしてしまうんですが、「それ"で"いいの?」って聞きかえされると「それ"が"いい!」と言い直したりして(笑)。
 誰かがこう言ったから「じゃあそれで」ではなく、「あなたは何がいいの?」と聞く。「あなたがいいと思うものを、言ってほしい」と私も恵泉にいた間は言われてきましたし、今も生徒に何かを聞かなければいけないときには、「あなたはそれがいいのか」って確認するようにしています。「それで」ではないものをという感じで。小暮:意見を聞かれて自分がどう思ってるのか、いい悪いじゃなくて個人的な意見としてどう思ってるか、率直な意見を求められることが多くて。それに対して素直に言って、その言ったことにも頭ごなしに否定せず、違う場合は考えをまとめたうえで「こういう違う考え方もあるよ」って提示してくれて、「あとは自分で判断しなさい」っていう感じですかね。
山﨑先生:金子みすゞさんの詩の「みんなちがって、みんないい」という一節はCMでもよく耳にしましたが、「みんないい」の以前に、「みんな違うのが当たり前なのに」と思った記憶が強くあります。「みんなちがって、みんないい」というのは確かにそうなんですが、それは「みんな違うのは何か良くない」という前提があったうえで、それを否定するかのように詩が出てきてたのかなと、
CMで流れたタイミングで思ってしまって。本当はみんな違うのが前提だから、そこからスタートしたほうがいいのかなと。編集部:そうか、それが普通の感覚なんですね。
小暮:そうですね。知らぬ間に「違うのが当たり前」という空気感ができてるので。
山﨑先生:最終的に一つの答えに持っていかなければいけないことがあったとしても、最初から一つの答えに向かわせるのではなくて、基本的にはどういう意見があるのかというのを出して、いろいろ検討した結果「やっぱりこれが一番いいよね」と、みんなでそこに着地できるようにするのが大事にされているのかなと。
小暮:恵泉デー(文化祭)の出し物、合唱コンクールの曲とか決めるときも、そんな感じだった気がします。とりあえずみんなが意見を出して、みんなで話し合って決まったことについては誰も文句言わない。
山﨑:意見を出しきって、話し合いの過程にきちんと加わっていれば、自分が最初思っていたのと違う結果になってもその決定を受け入れやすくなると思います。
編集部:なるほど、どうもありがとうございました。

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小暮愛実
卒業生
上智大学文学部新聞学科2年
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