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母校取材
2016年11月22日

「恥を知れ」という言葉は「自分自身が恥ずかしくない行動をとっているか?」と自問すること

母校取材 先生インタビュー

取材日:2016年11月22日
インタビュイー:赤塚宏子先生
インタビュアー:慶応義塾大学薬学部 4年生 山本理紗子

山本:先生になった1番の動機は何ですか?

赤塚先生:大学4年生で体験した教育実習がきっかけになりました。

男子校での実習で、実習生を代表して研究授業をすることになったのです。もともと別の男子学生がするはずだったのが、ひょんなことから私に回ってきたのですね。それまでの授業がうまくいっていなかったのでとても不安でしたが、やるしかないと腹を決めました。指導教官も親身になって準備を手伝ってくれたのですが、自信は全くありませんでした。研究授業当日、おずおずと教室に入っていってみると、クラスの生徒たちがみんなこっちを見て。「先生、俺たち協力するよ」っていう目をしていたのですねえ。

山本:(笑)

赤塚先生:それで、「ここのところわかる人いますか?」などと質問するとみんなが、「はいっ!」と手を挙げてくれて。ちょっと、いや、かなり不自然でしたが、みんなで盛り上げてくれました。

赤塚先生:それだけではなくて、教室の後ろで授業を見て下さっていた他の先生方も、「あっ、そこのところちょっと話させてくれ」とかおっしゃって。ちょうど第二次世界大戦の範囲だったのですが、、「配給という制度はね…」と授業をしたら、おじいちゃんの先生が「配給に関しては僕に語らせてくれ」と。

山本:(笑)

赤塚先生:生徒と私、それから見ている先生と私のやりとりで、授業が立体的に展開されて、あっという間の1時間でした。その上、とても楽しかったのです。

生徒の温かい思いやりの気持ちも感じたし、何より「生徒と先生が同じ場所にあって、真実を明らかにするために協力する楽しさ」を感じました。その時ですね、「ああ、この後もずーっと、生徒とこんな風に関わっていきたい。教員として生きていきたいなあ」と思ったのは。

さらに、よく言われることだけれど、大抵の生徒は実は勉強が好きではないんだという考え方がありますよね。

山本:ああ、はい。

赤塚先生:私はそうは思わないんです。むしろ、生徒はいろいろなことを知りたがっている、たくさんの疑問を持ち、解決したいと考えていると思うんですよ。

例えば授業中に「これって実はこういうことなのですよね」って話をした時に、「そうだったのか。今まで持っていた疑問が解けた」と理解した生徒は、その表情がパーッて明るくなるんです。教室の前から見ていてもはっきりわかります。

山本::へえ〜!

赤塚先生:そうすると、「あっ、君、今わかったね?」「あっ、隣の君もわかったね?」という。「疑問が解消した、納得できた」という時の明るくなった表情、嬉しいという表情をこれからもずうっと見続けていきたいなあって思って教員になったかなと思います。

山本:なるほど。

山本:次に、これまで習った中で、尊敬できる先生は、どのような先生でしたか?

赤塚先生:中学の時に担任をして下さった数学の先生です。その先生は、先生になられる前に世界中を放浪していたという変わった経歴の持ち主でした。

私はその先生に数学以外のいろいろなことを教えて頂いたし、本もたくさん貸して頂いたんですね。その中で、世界は、1つの価値観ではなく、多様性からなっている。多様性こそが世界の素晴らしさなんだということを学びました。

山本:数学の先生なのに世界を回ってたんですね?

赤塚先生:そうなんですよ。すごく変わっていて…。中学生・高校生って、実際狭い世界に生きていますよね。

山本:(笑)

赤塚先生:もちろん自分もそうだったのだけれど、その先生とお話する中で、「世界には様々な価値観がある」「ここで行き詰まっても、それが全てではないんだ」と考えるようになりました。大人になって自分もあちこちに出かけるようになり、新たな発見や感動を体験する中で、そうしたことを、今度は教員として生徒に伝えていけたらなと思っているわけです。

山本:なるほど。ところで、教師になった直後と現在とで、先生ご自身で何か大きく変わったことなどございますか?

赤塚先生:そうですね。教師になったばかりの頃は、早く結果が出てほしいという気持ちが強かった気がしますね。

先ほど申し上げたことと矛盾するかもしれないけれど、自分が教えたことがすぐ生徒に伝わって、生徒が大きく変わるとか、成績が伸びるとか、良い子になるとか・・・。

山本:(笑)

赤塚先生:そういうことを求めていたような気がします。けれど、人間ってそんなに急には変わらないものですよね。学校での教育は、生徒の生活のほんの一部であるし、生徒は他にもいろいろなことを体験して、ゆっくりゆっくり自分を確立していく、成長させていくんだと思うようになりました。だから今はね、自分が教えたり、伝えたりしたことが、生徒の中でいつ花開くかわからないなと。ひょっとしたら、すぐに花開くかもしれないし、ひょっとしたら70歳で花開くかもしれない…。

山本:(笑)

赤塚先生:それでも構わないなって思っています。

どこかで花開いてくれればいい。私たち教員がやっていることは「種まき」と「見守り」なのかなと思いますね。

山本:大学に行くとどんな良いことがあるか?と生徒から質問されたらどう答えますか?

赤塚先生:1つは、自分の好きなことに自由に打ち込める時間がたくさんあるということ。思う存分好きなことを追求してほしいという気持ちがあります。もう1つは、全国から、あるいは全世界から大学に集まるいろいろな人たちと

触れ合い話をして、どんどん自分の世界を広げ、自分を磨いてほしいなって思います。

山本:うん。確かに時間はたくさんあります。(笑)

赤塚先生:やっぱりあります?

山本:時間はあります。

赤塚先生:変わった人もたくさんいますよね?

山本:変な人もたくさんいます。

赤塚先生:うふふ。

山本:大妻にいた時とは、全然違う人たちが周りにたくさんいて、入学当初とても驚きました。

山本:次に、中高一貫校にあって、一般の中学校にないものって何だと思いますか?

赤塚先生:一般の中学校の話はさておき、中高の6年間って女性の人生の中では1番変化する大切な時期だと思うんです。

楽しいこともあれば辛いこともある。純粋に、笑ったり泣いたり怒ったりしながら成長していくその時期を、共に過ごした仲間がいるというのは貴重だと思いますね。未熟な面も含め、恥ずかしい姿も互いに見合っているわけでしょう、だからこそ一生の友人ができるのではないでしょうか。そこが中高一貫校の良いところではないでしょうか。

卒業生の先輩方も、結婚して赤ちゃんを連れて、みんなで来てくれたりしますよね。

山本:他の中高一貫校にはなくて、大妻にあるものって何でしょう?

赤塚先生:先生と生徒の距離が近いのは、大妻の特徴ですね。そして、先生方がいつも生徒のことを考えているということ。6年間も一緒にいると、「親子」は言い過ぎですが、「親戚の子ども」レベルにはなってますね。山本:(笑)在校生でも卒業生でも、その人が成功したり、褒められたりすることが、本当にね、自分のことのように嬉しいんですよ。「やったあ!」なんて思うわけ。

山本:(笑)

赤塚先生:これは先生方皆さんそうだと思いますね。

山本:中学に合格した子どもに勉強以外で一生懸命取り組んでほしいことは、どんなことですか?

赤塚先生:合格後、入学するまでに本を読んで欲しいと思います。目標は10冊以上。物語だけでなく、社会科学、自然科学など様々なジャンルに挑戦して欲しいです。

入学後は、、やはり周囲の新しいお友達といろいろなことを真剣に話してほしいなって思います。

中学になると自我が成長してきて「この人とは合わないから話をしたくない」とか何とか言いますけれど・・・

山本:(笑)

赤塚先生:話が合わない子こそ話をした方がいい。「どうしてそう考えるの?」とか、「自分はこういうふうに思うんだよ」ということを話して、それぞれの違いを認めあえるようになってほしいです。

山本:ああ。

赤塚先生:あともう1つは部活をやってほしいと思います。 部活動に取り組むことで、協働の大切さや難しさを学べますし、何より大きな感動を味わうことができると思います。同様に学校行事にも積極的に取り組んで欲しいですね。

山本:先生は世界史を担当していらっしゃいますが、どのような教材を使って授業をしていますか?

赤塚先生:オリジナルのプリントを使用しています。歴史を学ぶ上で大切な「流れ」、すなわち原因・事象・結果・影響・意義などを、ビジュアル的に把握できるようなプリントを使って授業を行っています。

山本:はい。

赤塚先生:また、この頃は、電子黒板の機能を使って、資料や映像を扱う授業も展開しています。先日は、イスラームの「ジハード」について、資料を読み取りながら比較検討する授業を行ったんですよ。

山本:先生は生徒から人気があると思いますか?

赤塚先生:いやいやいやいや。

山本:じゃあ人気のある先生はどんな先生でしょうか?

赤塚先生:どんな先生が好きでした?(笑)

山本:あの、しゃべりやすい先生が・・・

赤塚先生:好きだった?

山本:相談しやすかったです。

赤塚先生:そうですよね?寄り添ってくれて、見守ってくれて、生徒が考え結論を出すのを待ってくれる先生って素敵ですよね。ついでに楽しくて、尊敬できて、格好が良ければ、なお良しというところですかね(笑)。いろいろなタイプの先生から学べるようになってほしいと思います。

山本:はい。

山本:では、生徒の観察は日々どのようにしていますか?

赤塚先生:先生方皆さんやっていらっしゃると思いますが、教室に入った時、授業中でも放課後でも、生徒の表情を観察していますね。それから生徒の行動。忘れ物は良くないですが、教材の貸し借りはできているか、友人とコミュニケーションがとれているか、発言した時の周囲の様子なども見ています。他にはテストの時やノートを取る時の字の書き方なども結構気になりますね。

そういうことから何となく、今調子良くないかな?とか、別のことで悩んでいるんじゃないかしらと、感じる時があります。

生徒ってね、自分では気が付いてないけれど、感情が良―く表情に出るんですよ。

山本:え?そうなんですか?

赤塚先生:朝礼でも、「朝嫌なことあったね?」っていう生徒、「誰かと喧嘩したかな?」っていう生徒は、やっぱり暗い表情をしてたり、逆に必要以上に騒いだりするのね。

そういう生徒には急に「今日親とぶつかった?」なんて聞いても「別に」ってことになるでしょう。

山本:(笑)

赤塚先生:だからあまり構えずに、ちょっとしたタイミングをとらえて話しかけたりしています。

山本:はい。

赤塚先生:相手にぐっと入り込んでいく、その近づき方に一番気を配りますね。

山本:学校の好きなところ、もっとこうしたらいいのにと思うところを教えてください。

赤塚先生:大妻の好きなところは、先ほどと重なるけれど先生方が生徒と仲が良くて、親身になって生徒を育てているというところです。例えば体育祭とか文化祭といった行事でね。

山本:あ、はい。

赤塚先生:終わった後に、「お疲れ様」とか言って先生方がいわゆる「反省会」をするんですね。ジュースで乾杯したりしますよね。

山本:(笑)

赤塚先生:その時の話題が全て生徒についてなんですよ。体育祭や文化祭を写したビデオを大画面に映しだして、それをみんなで見ているんです。

山本:え?そうなんですか?知らなかった。

赤塚先生:「あっ、これからうちの学年のダンスが始まるよ」とか言って、体育の先生が解説しながら、「ここで誰々ちゃんが、すごいジャンプを見せますよ。」「おおお」「もう一回巻き戻して」などと喜んで話をしているんですね。

山本:ええ?そうなんですね?

赤塚先生:中1の先生が「あっ、この子、ほら徒競走で転んじゃったんだよ」とか。

山本:(笑)

赤塚先生:そうやって大妻の先生方は、生徒の話で盛り上がってるの。だからね、どれだけ生徒が好きなんだっていうところですよね。

山本:じゃあ、逆にもっとこうしたらいいのにという点はありますか?

赤塚先生:大妻生に求めるものということで言うならば、人に対してもっとオープンマインドに、自分から積極的にアプローチできる力がついて欲しいですね。その第一歩として、挨拶がきちんとできるといいなと思います。もともと「挨」「拶」って相手に対して進んで近づくという意味の漢字ですよね。

山本:ああ。はい。

赤塚先生:あとは、そうですね、大妻ってどんなことにもとっても面倒見がいい学校ですよね。

山本:はい。

赤塚先生:勉強もそうだし、生活面でもこの生徒今調子悪いかな?って思ったらすぐ助けに行く。

山本:うん。

赤塚先生:けれど、子どもって少し苦しい目にあった方がいい部分もあるんですよ。歯だってそうでしょう?軟らかいものばかり噛んでいたら、歯は成長しませんよね?

山本::そう、はい。

赤塚先生:だから時には、「こうすれば解決できるな」と思っても手を出さずにあえて放っておく。自立のためにね。そういうことも必要だと思っています。

山本:うん。

赤塚先生:「自律と自立の精神を持つ生徒」というのは本校の育成目標でもあります。先生方もあえて手を出さない様々な仕掛けを行っていると思いますね。

編集部:あえて手を出さない具体的なものってどこになりますか?

赤塚先生:そうですね。何か助けを求めてきた時に、「まず自分で考えてごらん?」と一テンポ置くところですね。

生徒が一人では解決できそうもない時には、「お友達と協力してやってごらん?」「それでもできなかったらまたいらっしゃい」。困った時にはいつでもこちらの門戸は開いているけれど先生が言ったことを「はい」ってやるのではなくて、ちょっとご自分でジタバタしてごらんなさいということを言ったりしますね。

編集部:なるほど。

赤塚先生:それはお勉強の面もそうだし、それから友人関係もそうです。

ただ、友人関係についてはやはりある程度様子を見ていて、「ここから先はもう教員が出た方が良い」っていう見極めも大切だと思っています。

山本:うん。

赤塚先生:そこからは、お手伝いに入ります。

それからもう1点は、学校の主人公は生徒であるということです。先生はあくまでも裏方さん。いろいろなサジェスチョンはするけれども。

山本:うん。

赤塚先生:生徒が、自分たちの頭で考え、協力し合って作り上げていく学校生活が理想です。最終的には教員は背景に溶け込んでいって、生徒が自信を持てるような仕組み、そういうところかなと思います。

編集部:大妻はとても特徴がある学校だと思うのですが、大妻に合う子合わない子っていますか?

赤塚先生:そうですね。ほとんどの生徒は大丈夫だと思います。もじもじしているとか、自分を出しにくいという特質を持った生徒さんであれば、様々な活動の中で無理なくお友達と協働する機会をつくるなど、指導の工夫をしています。

編集部:うんうん。

赤塚先生:ただどうしても合わない生徒さんがいるのも事実ですね。私立ですので、しっかりとした本校の教育方針があります。といっても、決して特殊なものではありませんが。こういうふうに学んでほしい、こういうふうに振る舞ってほしいというある種の枠組みはありますね。

編集部:そうですね。

赤塚先生:決して特殊なものではないけれど、どうしても合わないお嬢さんにとっては少し息苦しく感じてしまうかもしれません。

編集部:それは「恥を知れ」というような校訓に向いていない子がいるということでしょうか。

赤塚先生:「恥を知れ」に向いてない生徒はいないと思います。というのは「恥を知れ」という言葉は「自分自身が恥ずかしくない行動をとっているか?」と自問することなのです。

編集部:なるほど。

赤塚先生:自分の行動や思考に関して、常に自分自身の良心と対話して欲しいということなのです。逆にこの対話を通じて、良心も育てて欲しいと思うのです。

編集部:はい。

赤塚先生:こうした自問自答は、全ての人間が心の中で、必ず行っていることではないでしょうか。

編集部:確かに。

赤塚先生:電車の中でおばあさんに席を譲らなかった。眠いし疲れていたから、見ないふりをしてしまった…という時に、誰でもが、「恥ずかしいことをしてしまった」と心の中で問うていますよね?

編集部:うん。

赤塚先生:そういう校訓なのですね。自分を高める道につながる素晴らしい校訓であり、大妻生の誇りであると思っています。

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