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2016年12月2日

「久我山って、卒業してから分かることが多い学校だと思うんですよ」

取材日:2016年12月2日
インタビュイー:社会・地歴公民科 高橋秀明先生
インタビュアー:中央大学4年生 谷俊輔

谷:落ちこぼれた生徒が出てきてしまったときは、どう対応しますか?

髙橋先生:教員で一番いけないのは“褒めない、待てない、やらせない”だと思うんです。先生は、生徒が苦しんでいると先回りしてしまうんですよね。でも生徒が苦しんでいるときには、じっと寄り添いながら待たないといけない。グイグイ何かをやらせる方法もあるんだけれども、落ちこぼれてしまった生徒には“いかに寄り添うか”ということが大事なんですね。寄り添ってあげて、落ちこぼれた理由を共有する。そこを共有することで「じゃあ次はこうしよう!」という作戦を考えるんです。

それが家庭の問題なのか、自己の問題なのか。学校の問題なのか。いろいろ理由があるはずなので、まずはそれを共有する。逆にそれが共有できていないと、ピントはずれな励ましをしてしまう。それは中学生にとって、うっとうしいことだったりするわけですよね。

谷:落ちこぼれてしまった生徒に対して、チームで対応する仕組みはありますか?

髙橋先生:「あの生徒は最近こういう様子だよ」というように、生徒の情報は常に学年の先生たちで共有しています。職員室でも生徒の様子についての話がすごく多い。1学年に男子は5クラス、女子は3クラスあるんですけど、先生たちはそこにいる生徒のことを全部把握してるんですね。

谷:落ちこぼれとは逆に、ある部分において長所がある生徒に対してはどう対応していますか?

髙橋先生:オプションの行事を増やして、生徒が積極的に参加できるメニューを増やしています。全員参加ではないかたちでね。例えば「英語で地域探訪」。もともと中学一年で、地理と国語を一緒にして「地域探訪」という授業を全員参加でやるんです。社会と国語の教員の案内で学校の近くを巡る。これと同じ様に、生徒が日本に来た外国人の方に向けて英語でガイドをするというものが「英語で地域探訪」です。

ネイティヴスピーカーの先生に英語でうまく伝えるにはどうすればいいのかを教えてもらって、國學院大学にいる留学生に対してガイドしたんです。これは、学年関係なく40〜50人集まりました。最近では国際交流委員会というものができたので、英語が得意な生徒が参加したりもしています。

つまり、学年や男女を越えた、関心度に見合ったメニューを作ってあげるということですね。それを生徒たちに発展させていってもらいたいと考えています。

あとは、高校生の男子には武道大会があるじゃないですか。これは全員参加だけど、得意な生徒が見せ場を作る場でもあるからね。

谷:そうですね。

髙橋先生:みんな興奮するわけですよ。運動が苦手な生徒でもね。自分が活躍できないことも、できる生徒の活躍を共有して興奮する場というのは、とてもいい機会になるんですよね。今年の武道大会は東京武道館でやったんですけど、これも生徒たちに最高の舞台を作ってあげたくてということですよね。

谷:先生は人気があると思いますか?

髙橋先生:定年という“任期”はあると思うんですけど。(笑)何が先生の人気なんだろうね。ただ、「こういう先生の人気が出てほしいな」って思う基準は、生徒のために本気で叱れる先生であり、本気で喜んで涙を流せる先生ですね。喜怒哀楽を思い切り表現できるのって、中学高校時代までしかないでしょう?それを教員が共有できるというのが大事だと思います。それができる先生に人気が出てほしいですね。

谷:久我山の好きなところは何かありますか?

髙橋先生:生徒たちに対して安心していられるっていうことだよね。「最終的に生徒たちは裏切らないだろう」と。例えば6年間で、中学のときに反発する生徒もいるよね。だけど、卒業するまでの間に突然「先生の言ってたことがやっと分かったよ」という時期が訪れたりするわけですよ。

ある生徒についての話なんですけど、「この生徒は僕に反抗するな」と思うことがあったんです。だけど、その口もきかないような態度をとってた生徒が、高校三年生のときに「政治経済の講習をやってください」って来たわけ。それで、理由も聞かずに講習をやった。でもその生徒が僕に反抗していた理由は、彼が卒業してから分かったんだよね。

その生徒が中学生のとき、僕はよく休みの日に部活動の試合の応援に行ってたんですよ。ラグビー部にはよく行ってたんですけど、たまたまサッカー部の応援に行く機会が少なくなって。そうしたらサッカー部のキャプテンが「なんでラグビー部ばっかりなんだよ・・・」って思ったんだよね。「先生はラグビー部ばっかりかわいがってる」って。それで背中を向けた。

だけど、いつまでもそういう態度をとってちゃいけないって気付いたんどろうね。それで、「政治経済の補習やってください」って言いにきた。そのときには「部活の応援一つ行くにしても、公平を欠いちゃいけないな」って思ったね。自分が中学生のときを思い返してみても、ひいきされることが一番イヤだったなと思うしね。

谷:久我山の「もっとこうしたらいいのにな」という点は何ですか?

髙橋先生:生徒会がもっと自由に、いろいろなことができるようになるといいなと思いますね。久我山には中高合わせて2400人の生徒がいるので、これを生徒が動かしていくのは大変なことなんです。そういうことが生徒会によって可能になればいいなと思いますね。そこは久我山がもっと発展する可能性がある部分なのかなと。

谷:久我山に進学した生徒は、6年後どのように成長していきますか?

髙橋先生:今は女子部にいるので女子生徒についてになりますけど、まずは優しく。その次に強く。そして美しく。優しくが一番なんです。まずは人に優しく。そして自分に強く。“優しい”とか“強い”にはいろんな意味があって、そういうのがだんだん理解できるようになって、美しい人になってほしい。美しく、幸せになってほしい。それだけですね。

「幸せとは何か?」と言われたら、それは本人が見つけることなんですね。教員って自分の幸せを生徒に押し付けがちなんですけど、そこは6年間で生徒なりの幸せを見つけてほしいなと思いますね。

谷:先生の子どもも久我山に入れたいと思いますか?

髙橋先生:難しいね。自分が久我山に勤務していなかったら、入れてもいいと思う。

谷:それはなぜですか?

髙橋先生:やっぱり、みんなのことを見て。(笑)谷くんとかを見て「こういう青年に育ってくれたらいいな!」って思う。久我山って、卒業してから分かることが多い学校だと思うんですよね。久我山で過ごしていると、耐性が身につくじゃないですか。これから厳しい社会だから、耐性がないと苦しいだろうなと思うんですよね。

あとはね、生徒が2400人もいるでしょ。2400人もいれば、どこかに自分の仲間がいる。どこかに自分の居場所があるんですよ。2400人もいれば逃げ場もあるし、思わぬ先輩や後輩が助けてくれるかもしれない。そこはマンモス校のメリットだと思う。この学校のどこかに、絶対に自分の居場所があるから。そういうことを考えると、入れてもいいのかなと思います。

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