× ×
2016年12月2日

「今やっと『きちんと青春』の意味が分かった気がしました(笑)」

取材日:2016年12月2日
インタビュイー:社会・地歴公民科 高橋秀明先生
インタビュアー:青山学院大学2年 岡田鮎夢

岡田:先生になった一番の動機は何ですか?

高橋先生:「先生になりたい!」と思う先生に出会ったからです。「先生っていいな、素敵だな!」って思う社会の先生に教わってきたことが、思い返せば先生になりたいと思った動機なんだろうなと思います。

岡田:これまでに習った尊敬できる先生は、その社会の先生ですか?

高橋先生:その社会の先生とは違うんですけど、小学校のときに出会った先生ですね。とにかく教室にいないで、外にいろいろ連れていってくれた先生。授業中なんだけど近所のお菓子工場に連れてってくれたり、秋になったら柿を採りにいったり。それを作文や詩のテーマにして学級新聞を作るっていうことを盛んにやってくれた、作文を得意とする先生。その先生に出会ったのが、自分にとっても大きいので、今でもすごく尊敬しています。

岡田:教師になった直後と現在とで、大きく変わったことはありますか?

高橋先生:教師になりたてのときは、とにかくしゃべっていましたね。「自分が知っていることをしゃべりたい、伝えたい」っていう思いが走っちゃって。父母会でもしゃべってた。だけど最近になると、“聞く”っていうことの比重が大きくなってきましたね。父母会でもしゃべることは減ったように思います。聞くことができるようになったのが、大きな変化だと思いますね。

岡田:先生の授業は、大学の講義みたいっていうイメージがあります。高校っぽくない感じがあって、すごい面白かった。

高橋先生:ありがとうございます。(笑)

編集部:具体的にはどんな感じなんですか?

岡田:内容が教科書に沿ってるっていうよりも、どちらかというとその時々の時事問題とかを取り上げてました。そこで先生が考えをおっしゃって、関連する重要なキーワードをまとめて書いていくっていう感じ。教科が社会だからっていうのもあるかもしれないですけど、他の先生の授業って高三になるとずっと問題解いたりとかだったんで、印象に残ってます。

『職人』、『父が子に語る世界歴史』

岡田:先生が好きな本や影響を受けた本を教えてください。

高橋先生:最近の自分にものすごい影響を与えているのは「職人」という本。いろんな職人さんのいい言葉、しみじみとした味のある言葉を拾っている永六輔さんの本です。この本に書かれている「教えるということは教わることです」なんて言葉は、教員にとってこれ以上ない大切な教えだと思いますね。

中学からキャリア教育の一環で、働くということについてのシリーズがありますよね。その中でいつも「職業に貴賤は無い、あるとすれば人なんだ」っていうことを言うんだけど、その言葉も永六輔さんの「職業に貴賤は無いと思うけど、生き方には貴賤がありますね」っていう言葉から来ているんです。

どんなに有名な、どんなに地位が高い職業に就いたって、その人の生き方が卑しかったら何の意味もないっていうこと。みんなはこれからいろんな仕事に就いて、いろんなところで社会に貢献していく。でもそれは有名な職業だからとか、大企業だからっていうんじゃなくて、矜持を保って働くことが大事っていうことを伝えたいんだよね。そんな僕の考えのベースになったのが、永六輔さんの「職人」なんです。

もう1つは「父が子に語る世界歴史」という本。ずっと昔、僕が世界史を教えてたときに出会った本なんだけど、インドの初代大統領ネルーが獄中から娘のインディラ・ガンジーに書いた、世界の歴史についての本なんです。これがすごく分かりやすくて。「歴史ってこうやって教えるんだなー」なんてことを学んだ本だね。

「職人」 永六輔著

「父が子に語る世界歴史」 ジャワハルラール・ネルー著

岡田:「大学に行くとどんないいことがありますか?」と生徒から質問されたら、どう答えますか?

高橋先生:「世界が広がる!」この1点ですね。

岡田:中高一貫校にあって一般の中学にないものといったら?

高橋先生:やっぱり“仲間”かな。それは教員や卒業生も含めた“仲間の輪”っていうか、そういうものだね。そして、6年間を一緒に過ごしたことが自分の誇りというか、支えになってる。そんな感じがしますね。

岡田:中高一貫校って部活のイメージしかなかったです。6年間一緒だったので。(笑) 

高橋先生:6年間同じクラブを続けられるっていうのは、すごく大きいよね。公立だったら中学3年と高校3年で切れちゃうからね。

岡田:久我山にあって他の私立にないものといったら何ですか?

高橋先生:きちんとした生徒!(笑)

岡田:私の弟も久我山に通ってるんですけど、少なくとも女子部は絶対そうだなって思います。弟の話を聞くと、男子はふざけてるみたいですけど。(笑)でも、きちんとはしてると思います。弟はサッカー部なんですけど、自主的に行動することを教えられてるみたいで、集合時間がないって聞きました。自分で考えて動くから集合時間がないって。なので、最近は弟もちゃんと考えて動けるようになりました。(笑)

編集部:「きちんとしている」って、具体的にはどんなところがあげられますか?

高橋先生:「きちんと青春」という言葉が久我山のキャッチフレーズなんです。“青春”っていうのは、失敗や挫折も経験しながら成長していくっていうことですね。岡田さんもダンス部で、悔しい思いとかつらい思いをしたでしょ?そういうことも含めて経験しないと、きちんと青春したことにはならない。そういう場が久我山にはあるっていうことだと思いますね。

岡田:確かに。今やっと「きちんと青春」の意味が分かった気がしました。(笑)

岡田:中学に合格した生徒に、勉強以外で一生懸命取り組んでほしいことはどんなことですか?

高橋先生:部活動に入って6年間続けるっていうことはやってもらいたいな。部活動によって得られるものは、勉強では得られないものなので。私も部活を途中で辞めた経験があるものだから、尚更それは思います。運動部であっても文化部であっても、自分でやろうと思って入ったクラブを6年間続ける。これはとっても大事だと思います。

編集部:先生は何の部活動をされていたんですか?

高橋先生:中学までやっていたクラブが進学した高校にはなかったんです。それで何部にしようかなって迷ってるときに、音楽の先生から「お前、歌に来ないか?」って声をかけられてたんです。きっとその先生は大会か何かで、声をかける生徒を探してたんでしょうね。他に部活も入ってなかったので、そのまま音楽部に入ったんですけど、自分としてはビックリしましたね。思わぬ展開だったので。(笑)

編集部:(笑)そうなんですか。

高橋先生:音楽部は2年間やったんですけども、ちょっと個人的な理由もあって辞めることになったんですよね。でも、やっぱり辞めたことは後悔してますね。

岡田:生徒からの相談で、印象的なものはありましたか?

高橋先生:ある生徒から受けた「世界の歴史が勉強したいんだけど、どういう大学に行ったらいいですか?」という相談ですね。その生徒とはいろいろ進路相談をしたんですけど、さっき紹介したネルーの「父が子に語る世界歴史」のことも話したんです。 「歴史は、年号や人名を暗記するだけじゃない。こういう本を読むと、きっと歴史の面白さが分かるよ。もし本当に歴史の道に進みたいんだったら、一生懸命勉強して大学に入ろう。卒業するときには、この本の1巻をあげるから・・・」というような話をしたんです。その生徒は歴史を勉強する大学、学部に進学したんですけど、ちゃんと本の話を覚えていたんですね。卒業するときに「先生、私、大学で歴史を勉強するからネルーの本ください!」って。

これは1巻から6巻まであるんですけど、そのうちの1巻をその生徒にあげたんです。「2巻からあとは自分で買ってね!」と。(笑) だから今僕が持ってきているのは、1巻が抜けていて2巻からしかないんです。

岡田:だから2巻なんですね。

高橋先生:そうそう。だから、すごく思い出しますよね。「歴史を勉強するのにはどうしたらいいですか?」なんていう相談を受けて、その話から「こういう本があるよ」って。「大学に受かったらプレゼントするからね」って言ったら、「先生、受かりました!」って。それでこの1巻を渡したと。

編集部:その本、いい本ですよね。

高橋先生:これはネルーが獄中から娘に語りかけるかたちで書いた本だから、すごく分かりやすいんですね。これを書いたネルーもすごいけれど、これで勉強した娘も幸せだなって思いますよね!

岡田:どんな教材を使って授業をしていますか?

高橋先生:ちょっと持ってきたんだけど、これはキャリア教育の教材ですね。女子部は中学二年からキャリア教育をやるんですけど、そのときに外部のトップリーダーの人を招待して話をしてもらうんです。「創“Creation”・工”Technology”・商”Business”」という3つの分野で。

岡田:私が話を聞いたのは「創”Creation”」でした。

高橋先生:これはそのときの講義録をまとめた文書なんですけど、これを次の中学三年の公民の授業で使うんです。毎年違う人が来て世の中の仕組みについて話してくれてるので、そのまま生きた教材になるんですね。この代はネスレの方ですね。この頃に彼女たちは初めて“ダイバーシティ”なんていう言葉を聞いてるんだよね。

講演の内容を文書に残すのってすごく手間がかかるんです。でもせっかく中学二年でこういう話を聞くんだから、中学三年の公民でも教材に使おうって。これはオリジナルテキストとしてすごく贅沢な、生きた教材かなと思うんですよね。もう10数年やっているので、いろんな人たちがお話してくださっていてすごく面白いんですよ。いわゆるトップリーダーの人たちですよね。マイクロソフトの人もいるし、IBMの人たちもいるし。彼女たちの代はネスレとIBMでしたね。

編集部:講師の方が来るっていうのは、大学では多いですけど高校では珍しいですよね。

高橋先生:いいお話を聞いて終わりっていうのは嫌なんですよね。講師の人は、そりゃいいお話をしてくれるに決まってるんですよ。それをいかに自分の中に取り込んでいくか。そういうときには、やっぱり授業の中で使っていくところまでやらないと。もちろん講演内容を文書に起こすっていうのは大変な作業なんですけど、やっぱり生徒たち、あとは親にも読んでもらいたいんでね。

編集部:講師の方々はどうやって選ばれてますか?

高橋先生:10数年前から経済同友会とのお付き合いがありまして。IBMの北城恪太郎さんが同友会の代表幹事をやっていらしたんですけど、同友会でも学校との交流を深めていきたいっていうタイミングだったんです。ぜひ久我山に講演に来てくださいっていうところから始まって、以来、毎年来ていただいています。まず中二の最初に聞いて、そのあと秋口にも聞いて、高一でもまたやるんですよね。

岡田:すごいたくさん外部の方の話を聞いた記憶があります。キャビンアテンダントの方とか。特別講座ではすごいたくさんの人の話を聞きます。

高橋先生:いくら私たちがグローバルって言ってもね、何の説得力もないんですよ。教員がグローバルの中で生きてませんから。 (笑)私たちが世界のことを話しても、やっぱり軽いんですよね。でも実際に世界の中で生きてきた人たちが「グローバルってこうなんだよ!」って言ったら、それは生徒の中でズシンとくるわけですよね。だから、教員でできることと教員じゃできないことっていうのは、ちゃんと認識しないといけない。そうしないと、ちゃんとしたことを子どもたちに伝えられないですからね。

岡田:生徒の観察を日々どのようにしてますか?

高橋先生:まず、久我山では「挨拶をしよう」ということを大事にしています。その挨拶が突然できなくなったら、「何かあるのかな」って気付きますね。登校の時間に私たちは正門に立ったりするんですけど、いつもニコニコしてる生徒がちょっとうつむいてたら、「何かあったんだな」っていうことは分かりますよね。

常に生徒の挨拶を第一に考えて、生徒の表情をよく見ようと。生徒は絶対に何かサインを出していますから、そのサインを見逃さないように心がけています。「挨拶ができなかったら何かあるな」っていうのは、サインとしてはすごく重要だと思うんですよね。

岡田:みんな挨拶しますもんね。

高橋先生:挨拶ができない生徒は、やっぱり挨拶ができない理由があるんですよね。堂々と顔を上げられない何かがあるから、そこは何なのかっていうことを我々が勘づかないといけない。定点観測になりますけどね。

岡田:いじめがあったときどう対応しますか?

高橋先生:いじめになる前に見つけるっていうことですね。それは親御さんからの情報もありますし、こちらから「こんな変化がありましたよ」っていうことを親御さんに伝えることもあります。生徒と保護者と教員が三位一体になって、敏感に生徒の変化に反応することが大事です。なかなか難しいことではありますが、いじめに発展する前に対応する。生徒の様子を見るために、昼休みに先生方が廊下を歩いたりしていますしね。

あと、いじめについては必ずチームで対応します。学年とか、学年で対応しきれないようなことがあれば、生活指導部できちんと対応していく。いじめの防止は簡単ではありませんが、いじめにはチームで対応するっていうことをやっています。

資料請求をする
×

Document request 資料請求

各学校のパンフレットなどご請求いただくことができます。
ご請求は下記ボタンをクリックください。

資料請求をする

PAGETOP