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2017年2月25日

「失敗を受け入れる懐の深さ。そういう伸びやかさが桐朋のいいところかな。」

取材日:2017年2月25日
インタビュイー:国語科 野球部顧問 伊藤剛一先生
インタビュアー:一橋大学社会学部1年生 仲二見篤 野球部出身

野球部監督の伊藤先生(左)。本日は野球部時代の恩師に母校についてインタビューします。

仲二見:先生になられた一番の動機は何ですか?

伊藤先生:中学生のときの野球部の顧問で、英語を教えてくれた先生が自分のあこがれだったんだ。授業も面白いし、勉強ばかりではなく野球も丁寧に見てくれた先生で、すごく格好よく見えたんだね。自分もこうなりたいなと中1であこがれてから、高校でも大学でもずっと教員になることを考えていて、そのあこがれだけで来た感じかな。大学院まで進んだけど、たまたま桐朋に縁があって夢を叶えることができたんだ。学校の先生になる人は、いい先生に巡り会えた人が多いんじゃないかな。自分もそんな、いい先生になれたらとは思うけど。

仲二見:中学ですでに考えていたと。

伊藤先生:そうだね。高校でもすごくいい先生にお世話になって、先生になりたいという気持ちはより強まったけど、きっかけを作ってくれたのは中学の恩師ということになるだろうね。

仲二見:その中学のときの尊敬できる先生を、もうちょっと具体的に教えていただけますか?

伊藤先生:公立中学校の若い先生で、どこかのんびりしているというか、授業も生徒に自由に話をさせる雰囲気だったんだ。「これしなさい、あれしなさい」ってガッツリ固める感じではなくってさ。練習でも、「何本走れ!」とかではないんだよね。厳しくする先生が多い中で、すごく新しく見えたんだね。自分たちで考える。対話をしてくれる。「こう提案するけど、こうじゃないかと思えば言ってほしい」と。それが中学生の僕には斬新だったんだ。自分たちの考えを受け入れてくれて、とても信頼できる先生でした。

仲二見:それで先生になられて、なった直後と現在とで、先生ご自身で大きく変わったところはありますか?

伊藤先生:自分がこれだと思って言ったことが、必ずしも響いているわけではないんだよね。反対に、「そんなこと言った?そんなこと教えた?」っていうことが響いていたりする。「先生があのとき言っていたことがよくわかりました」って言われても、こちらは忘れているという。(笑)難しいところなんだけど、ただ一生懸命、誠心誠意ぶつかる。真剣に思っている気持ちは言葉以外からも伝わるから、ありきたりだけど、伝えようとする気持ちや熱意が一番大事なんだと思うようになったかな。僕も若くてそんなに経験はないから、せめて、こうだと信じるところをぶつけていく。それを一層意識するようになったね。

仲二見:僕が部活を引退したときに、引退式みたいなのをやりましたよね。そこで話していたこと、覚えてます?

伊藤先生:え?何言ったっけ?もう早速。(笑)

仲二見: 「これから先、嫌なことを削って生きようと思えばできるけど、そうするとまた絶対嫌なことが出てくる」。けっこう心に残っているんです。

伊藤先生:あー、それは言ったかもね、思い出した。

仲二見:それは本当だなって思ってます、今も。

伊藤先生:照れくさいね。(笑)自分の好きなことだけやっても嫌な部分は絶対に出てくるから、嫌なこともやろうということでね。覚えていてくださってありがとうございます。(笑)

仲二見:先生は国語科なのでたくさん本を読んでいると思いますが、その中で好きな本、影響を受けた本を教えてください。

伊藤先生:知っているかもしれないけど、絶対に1冊挙げられるのは、浅田次郎の『鉄道員(ぽっぽや)』かな。その中に収録されている「角筈にて」が好きなんだ。角筈は新宿界隈の古い地名のこと。お母さんと早くに死に別れて、お父さんと暮らしてきたんだけど、お父さんが再婚することになって、もう一緒にいられないって新宿で捨てられちゃうお話。その後はずっとエリートコースを進んできたけど、ちょっと失敗してブラジルに飛ばされちゃうの。その最後でお父さんの亡霊を見るんだよね、新宿で。それで、泣いた。(笑)文章でこんなに人の心を揺さぶれるんだな、いいなと思ってね。あこがれていた先生が英語科だったから英語の先生になるつもりだったけど、中3でこれを読んで、自分は文学に生きようと。(笑)

でもね、1年前かな。図書館で読まれなくなった本を、自由に持っていっていいという企画があったのね。そこにこの本が出ててね。あれ!?僕の人生を変えられた本なんだけどな、みたいな。(笑)その本を持ってきてクラスに置いて、「俺、これに魂を揺さぶられたんだ。人生変えられた本だから読むといいよ」って言ってるけど、たぶん誰も読んでない。ずっと本棚にある。(笑)

仲二見:よく本を読みますよね?

伊藤先生:どうかな。でも読みたいよね。

仲二見:僕はあまり読まないんです。

伊藤先生:そうなの。そうだね、今青春を謳歌してるからね。

仲二見:最近のおすすめはありますか?

伊藤先生:授業で紹介したかもしれないけど、高島俊男さんの、言葉にフォーカスを当てた本。漢文に原典がある二字熟語のこととか、もともとの意味はこうなのに、今はこういう意味で使われてる言葉とかを紹介している本。多分あなたたちが読んでもあまり興味ないと思うんだけど。

仲二見:ちょっと探してみます!

伊藤先生:絶対うそだろおまえ、絶対読まないだろ。(笑)

仲二見:いえいえ今度探してみます(笑)。

「鉄道員(ぽっぽや)」浅田次郎著

【編集部注:高島俊男 中国文学研究者、エッセイスト。「本が好き、悪口言うのはもっと好き」で第11回講談社エッセイ賞。他の代表作に、週刊文春に連載されていたエッセイ集「お言葉ですが…」など。】

仲二見:先生は公立中学出身でしたけど、桐朋は中高一貫校です。中高一貫校にあって、一般の公立や一貫校でない中学にないものは何だと思いますか?

伊藤先生:僕は中学は公立だったけど、高校から私立の中高一貫校に入ったのね。今でも挨拶に行ったりするけど、公立の先生はどこかに異動していなくなっちゃう。でも私立の自分の母校で言うと、基本的にはお世話になった先生がずっといる。君たちもそうだけど、こうして帰ってきてくれて「お久しぶりです」「変わったねー」なんて言えるのは大きいと思います。「結婚しました」とか「子どもができました」って久しぶりに挨拶に来てくれたりね。卒業で終わりじゃなくて、そのあと何年もかかわれる。野球部のコーチで来てくれてる人も、卒業して20年ぐらい経ってるのかな。本校は6年間持ち上がりだから、6年間お世話になったっていう、人生でかなりのウェイトを占める人がずっといてくれるのは、いいことだと思うなぁ。

仲二見:ほかの私立と中高一貫校も含めて比べたときに、桐朋にあってほかの私立にないところはありますか?

伊藤先生:ほかの私立をあまり知らないから一概には言えないけど、自由で受け入れる雰囲気はあると思います。それこそさっきの中学の恩師じゃないけど、対話をしてくれる。クラブでも先生が押しつけるだけじゃなく、生徒が「こうだと思うんですけど」なんて言うならメニューを決めさせてくれたりね。生徒を一人の大人として扱っているところ。ギッチギチに枠にはめられて、失敗しない、悪いことをしない、ということだけじゃない自由さ。失敗もあるだろうけど、それを受け入れる懐の深さ。そういう伸びやかさが桐朋のいいところかな。

自由過ぎる、伸び伸びし過ぎているところもあるから、ある意味では弱い部分かもしれないけどね。でもずっと枠にはめられたままで生きるよりは、失敗してものちに修正できて、「あのとき失敗してよかった」と思えるなら、絶対に意味があるんだよね。先回りはするけど、転ばぬ先の杖はつかない。それを6年間を通して見てくれる人がいるのは、大きいんじゃないかな。

仲二見:そうですね。

伊藤先生:「北風と太陽」じゃないけど、人間って外側からビュービュー風に吹かれてもやりたくないことはやらない。自分でやろうと内側から思えないと。自分から動くのを待つ度量というか懐の深さ。それを本校に勤務してから感じたかな。

編集部:話が戻るのですが、伊藤先生の中学校時代の野球部顧問の先生で、「僕は提案はするけれども、君たちはどう考えてる?」と言われたというお話。こちらの学校に入られる際の面接などで、そういうお話もされたのでしょうか。先生になる動機などとして。

伊藤先生:恩師の話はしたと思います。どうして教員になりたいかという話には必然的に出てくることですので。

編集部::話を聞くとか対話をする、その重要性も面接のときにお話されたんでしょうか。

伊藤先生:多分話していると思います。緊張していたのであまり覚えていませんけど。

編集部:貴校の伸び伸びとした、生徒を大人として扱う雰囲気は、恐らく先生方の中にも遠慮しない雰囲気、言い合えるような関係があるからだと思います。伊藤先生もそういう素養をお持ちになられていて、それで採用されたのではと思いました。

伊藤先生:いえいえ。

編集部:全体の会議でも、遠慮しない雰囲気とか、若手の先生も話ができる雰囲気があるんでしょうか。

伊藤先生:それはあります。私なんかも会議の場では比較的自由に発言させてもらっていて、ベテランの先生はこうおっしゃるけども、それはどうなんでしょうって言ったりもするんです。若いくせに、ということはないですね。どう思われているかはわからないんですけど、ものを言える雰囲気はあります。「若手だからこれをやって」とか「掃除してね」とかもないですし。それこそさっきの受け入れる度量じゃないですけど、そういうのを突っぱねずに話をしていくのが、生徒のみならず教員間でもあると思います。

編集部:それはルールとか仕組みとして何かあるんですか?

伊藤先生:ふんわりした言い方で恐縮なのですが、空気感というか、そういう雰囲気なのかなと思います。それで教員同士が話し合いながら皆で仲よくやってる雰囲気が、多分生徒にも伝わっているのだと思います。

仲二見:この桐朋中学に合格した生徒に、勉強以外で一生懸命取り組んでほしいことは?

伊藤先生:やっぱり部活は一生懸命やってほしいかな。ほかの私立にないっていう話で言えば、進学校にしては一生懸命クラブ活動をやる学校だと思うんだよね。クラブでの先輩後輩の関係はもちろん、担任の先生とは違うクラブの先生とのつき合い方で得るものは多いでしょう。それにスポーツは特にそうだけど、必ずしも努力が報われるわけじゃない。そういう経験をぜひしてもらいたいな。語弊がないといいんだけど、勉強は努力すればある程度は成果が出るじゃない。

仲二見:そうですね、わかります。

伊藤先生:でもこんなに頑張ったのに勝てない、成功しないという経験を知らないと、将来危ういと思う。勉強も頑張ったのに成績が上がらないこともあるけど、スポーツのほうがより残酷なので。そういった経験をしながら、クラブ活動とか委員会活動とか、人間関係も含めて勉強以外の幅広いことに興味を持ってやれるといいんじゃないかな。

仲二見:生徒から今まで受けた相談で印象的なのがあれば教えてください。

伊藤先生:相談を受けることないんだよね、どういうわけか。

仲二見:何か印象的な内容とかが、もしあれば。

伊藤先生:卒業を控えた高校3年生がね、「6年間、女性といえばお母さんと妹としか話さなかったんですけど、女の子とどうやって話したらいいんですか?」というのはたまにある。どうやって見知らぬ女性と仲よくなるのか、どう接するのかわからないって言うから、男子校で頑張ってきたんだな、って。(笑)自分は共学だったから思ったこともなかったけど、「大学に進学するにあたって・・・」と言って聞かれます。

仲二見:それは僕も聞きたいですね。(笑)どう答えるんですか?

伊藤先生:まず、なんでそれを僕に聞くの?って。(笑)いずれにしても、「どぎまぎしないほうがいいよ」と。だって、おどおどキョロキョロしてる男なんて嫌でしょ。だから話をするときも、「恥ずかしいけど目を見て話をしたほうがいいよ」って。でも結局は「4年間女子と話さないで生きていくからいいです」とか言われたりするけど。(笑)男子校の困っちゃうところというか、男子校らしいなというか。まあ大学に行ってしまえば、自然に仲よくなるんだろうけどね。

仲二見:でも、僕もいまだに思いますよ。一橋が特に女子が少ないのもあるんですけど。関わる機会もあまりないです。

伊藤先生:そうなんだ。困るね。

仲二見:困りますよ。(笑)

仲二見:生徒に「大学に行くとどんないいことがありますか?」と質問されたら、先生はどう答えますか?

伊藤先生:大学は授業も講座もそうだけど、自分から進んで前に出なければ誰も何もしてくれない。自分から前のめりにならなければ学べない厳しさ、これに意味があるんじゃないかな。あとは学部も学科も関係なく、いろんな授業に出られる自由度。偉そうなことを言うと、学問って栄養素みたいなもので、あらゆるものを幅広く摂取することが大切なんじゃないかと思うんだよね。ビタミンCが風邪の予防に良いことは事実なんだろうけども、じゃあ風邪をひかないためにはビタミンCだけ摂っていればいいかというと、そうではないのと同じでね。英語だけ、国語だけでほかに目が向かないのでは意味がない。いろんなことを関連づけて、いろんなことを学ぶ必要がある。大学では視野を広く、興味がないことでも関われる、巻き込まれることができるよね。僕も最初は近代文学をやるつもりだったけど、漢文に引っ張られたから。

仲二見:それは自分から漢文に行ったんですか?

伊藤先生:漢文は全然やる気がなかったんだけど、入学してすぐの試験でたまたま満点だったらしいんだよね。それで漢文の先生に「何を研究するの?」って言ってもらえて。まだ何も考えてなかったけど「芥川ですかね」みたいなことを言ったら、「芥川の研究者なんていっぱいいるよ」って。

仲二見:あ、その話聞いたことあります。

伊藤先生:それで「漢文どう?」って。「君よくできてたよ。いいもの持ってると思うよ」なんて言われて、「えー?そうですか?」みたいな。そうやって乗せられて漢文の道に進んで、後悔した時期もいっぱいあったけど(笑)、それが今ではこうなっているわけで、わからないというかね。だから自分から前に出なければ学べない、机に座っているだけじゃ何も教えてもらえないけど、いろんなことを摂取し得るという、そういう環境に身をおけることが進学する大きな利点だと思います。

仲二見:一人ひとりの生徒の観察を日々どのように見ていますか?

伊藤先生:先生と話すときの姿と、生徒同士で話すときの姿は違うからね。こちらと話してるときは生徒も構えたり、いい格好するに決まっている。でもそれがすべてではないので、友達同士のやり取りを見るかな。あるいはほかの先生と話しているところ。そのほうが、何を考えてるのかとか、どういう性格なのかとかが客観的によく分かる。野球部なら、練習の休憩時間には誰と一緒にいるのかなとか、一番始めに動き出すのは誰かな、整備を最初にするのは誰かな、最後までグダグダ水を飲んでるのは誰かな、なんていうのを見るようにしてる。

仲二見:見られてたんですね。

伊藤先生:うん、見てる。(笑)

仲二見:いじめがあった場合は最初の段階でどう判断して対応しますか?

伊藤先生:思い悩んでることは、やっぱり表情とかに出るんだよね。それで何かあるかなと思ったら、学年の先生に話をするかな。担任の先生は日頃から接しているし変化には気づきやすいけど、それでも一人で50人近く、完全に毎日毎日見ていくのは難しい。だからチームで、学校としてみんなで対応する構えがあります。学年の先生同士で「最近元気ないね」とか「最近うるさ過ぎるね」っていう話は自然に出てきます。杞憂で心配なかったこともいっぱいあるけど、みんなで気づきながらという体制です。

仲二見:学業的に落ちこぼれてしまった、授業についていけない生徒がいた場合に、どういう対応しますか。

伊藤先生:まずは話を聞きます。「何でこうなっていると思う?」って自己分析をさせる。「こういう点ができなかったんです」とか「試験前に家族が亡くなって」でも、理由があればもちろんいい。わからないという生徒もいっぱいいるけど、まずは事情を把握したい。 勉強しなきゃいけない、点を取らなきゃいけないことはみんなわかっているから。それでもできないわけなので、「頑張ろう」とか「努力しろ」という言葉には意味がない。だから極端な話、1科目だけでいい、それ以外の十何教科は今回は捨ててもいいから、これだけはガツンと点を取ろう、と。それで周りから「おまえすごいね」って言われる経験をさせたいと思っています。友達からすごいねと言われるのは大きいと思うし、そういう成功経験をまたしたいと思えたら、歯車が回って、次はもっとやるかもしれないと。でもうまくいかないことも多いけどね。ほかを捨ててもいいって言ったらけっこう本当に捨てるし。(笑)

仲二見:ズバッとした質問ですけど、先生は生徒から人気あると思いますか?

伊藤先生:ないよ。(笑)

仲二見:本当ですか?

伊藤先生:高校生担当のときはニコニコと自由にやらせていたけど、自分の学年を担任で持つようになったら、それだけじゃうまくいかないから。中学生のうちは特にね。これは学年の先生たちで話をしているんだけど、自由にやるというのはある程度の「枠」を知ったうえで、その中でやるものだから、まずはその「枠」を教えたい。これは守らなきゃいけない、これは手を抜いたら大変なことになる、そういうことを中学生の3年間のうちに教えたい。だから提出物を守らないとか時間に遅れてくるとかは絶対に許さない。出さなければ「いつ出すの?」と聞いて自分で言わせる。それで言ったことも守れなかったらもう本当にね、多分野球部でもないというぐらい怒るの。いや野球部でもあるか。でも最初の頃、でっかい声を出して怒るのけっこう難しいなと思ったね。グラウンドに出てるときは別だけど、教室ではね。

仲二見:ありますか?大きい声出して怒ったこと。

伊藤先生:もう日常だよ。

仲二見:え、そうなんですか。僕は伊藤先生が怒鳴ってるのを見たの、一回だけです。

伊藤先生:当時は控えめだったのかな。そんなわけで割とうるさく厳しく言うから、「うるさいなー、嫌だなー」とか思われているんじゃないかな。

仲二見:じゃあどちらかと言うと、厳しい先生っていう印象?

伊藤先生:だから相談にも来ないんだと思う。(笑)可能な限りしゃべりたくないと。

仲二見:それはちょっと意外でした。

伊藤先生:あとはさ、役割ってあるじゃない。うちの学年は優しい穏やかな先生が多いんだ。怖い人があまりいないから、嫌われ役じゃないけど自分がその役をやらなきゃだめだなと。みんなで甘い顔しているわけにはいかないなって、去年の中1の担任陣が発表されたときに思ったんだ。そりゃニコニコと楽しくいきたいけど。それじゃ成り立たないところがあるから。だから汚れ役をね。(笑)

仲二見:買って出てるんですか。

伊藤先生:できてないところもいっぱいあるけど。厳しくしようとは思っています。

仲二見:人気がすべてではないですけど、人気があるのはどういう先生だと思いますか?

伊藤先生:寄り添ってくれる人じゃないかな。「何でわかんないの?」は一番言っちゃいけない言葉だと思うんだよね。わからないならわからなくていいし、失敗したら失敗したでいい。じゃあどうしようかと言って、背中を押したり前を向かせたりする先生。怒るときにも、上から言うときもあるけど、でも最終的には「前向こうよ」とか「次はこうしてみようよ」っていう話にしたい。それが伝われば、人気が出るかはわからないけど、少なくとも信頼はしてもらえるかなという、希望的観測。(笑)

仲二見:この学校の好きな点とか、逆にもっとこうしたらいいなって思う点があれば教えてください。

伊藤先生:好きなところはさっき話をしたけれども、先々に回ってあげないところ。変な言い方だけど、生徒が何かやってしまって、こちらが迷惑を被ることになりそうでもまずは自由にやらせるところがやっぱり好きです。あとは生徒を一人の大人として扱うこと。話を聞こう、一緒にやっていこうというスタンスは、自分があこがれていた先生のやり方でもあったから、自分の理想がなされてる学校だと思うなぁ。そこがすごく好きだね。

もう少しっていうのがあるとすれば、6年間お世話になる先生と、授業を持つほかの先生とのかかわり方の「濃さ」に違いが出てしまうところ。あまり関わりのない先生がいるのがもったいないよね。もっといろんな先生に関わって、いろんな先生の考え方にふれてほしいなとは思うね。もちろん理解できることもあれば、理解できないこともあるだろうけど、そのこと自体に意味があるから。

仲二見:先生に子どもができて、男の子だったら、この学校に入れたいと思いますか?

伊藤先生:それは、うん、思うよ。自分がいるから嫌だというのはあるけど。(笑)だけど学校としては入れたい学校です。遺伝子的に多分まじめに一生懸命やる子じゃないと思うけど、いろんな失敗をしながら、迷惑かけながら、そのことを真摯に受け入れながらやっていってほしいです。失敗する前提なんだけど。(笑)でも最初から失敗しないのはつまらない。失敗をしながら、そのことに身につまされながら成長していってほしいなと思います。

仲二見:この中学に入ってから6年後、生徒はどういうふうに成長しているという印象を持ちますか。

伊藤先生:一番思うのは、卒業していく生徒たちがいい顔をしていること。いい意味で自信ありげな雰囲気を感じます。写真を見ると、成人式の写真ですって言ってもいいぐらい堂々としている。自分は高校生のときにこんな顔できたかなと感じるほど。信頼されて、自分で考えてきて、だからうまく達成してきたような顔というのかな。失敗してもそれが自分で考えたことだからと、自分で責任を引き受ける覚悟のある顔。ちょっと言い過ぎな感じだけど。(笑)でも自信に満ちています。この先どうなるか誰にもわからないけど、自分はやっていけると。自分で考えて決断するんだという雰囲気。いい意味で、自分で生きているんだなっていうのを感じるね。

仲二見:そういう成長は6年間で先生が望む成長でもあるわけですか?

伊藤先生:そうだね。あとは自分で考えて行動して、失敗して何かしてしまったらごめんなさいと言えるようであってほしい。ミスは絶対にあるものだから、そのときに「これは僕がやったことです、すみませんでした」と言える男であってほしいなと強く思っています。ミスを引き受けられなかったら反省もしないし、反省しないとまた同じ失敗をする。人の言葉に従って失敗したら、「あの人がそう言ったから」となる。だけどそれは絶対もったいないことなんじゃないかな。

仲二見:僕からの質問は以上です。いいお話を聞けました。(笑)

伊藤先生:やかましいわ。(笑)

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