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母校取材
2017年3月17日

「僕は、情操教育は、どれだけ無駄なことをしたかが重要だと思う」

母校取材 先生インタビュー

取材日:2017年3月17日
インタビュイー:数学科・MGSクラス代数 佐藤育義先生
インタビュアー:立教大学現代心理学部映像身体学科1年生 加登谷美琴

加登谷:先生になられた1番の動機を教えていただけますか?

佐藤先生:1番ですよね。生徒の人生に良い影響を与えたいために、教員という職業を選びました。

加登谷:はい。

佐藤先生:はい。1つはそれなのね。

加登谷:はい。ほかに動機はありますか?

佐藤先生:将来何やろうかなって考えた時に、僕には3つの夢がありました。1つはプロ野球選手、1つは学校の先生、あともう1つラーメン屋さんだったんです。

加登谷:ラーメン屋さん。(笑)

佐藤:ラーメン屋さんは、プロ野球を引退した後でもできるかなと漠然としたものがあったので。プロ野球選手に関しては、なりたいと思ってたくせに、実は僕、高校野球をやってないんですね。

加登谷:そうなんですか。(笑)

佐藤先生:大学から野球をやったんです。なので、当然間に合わないことが分かりまして。ああ、これは無理だということで、じゃあやっぱり教職だよね、という流れですね。

加登谷:これまでに習った先生の中で、尊敬できる先生を具体的に教えてください。

佐藤先生:僕自身が生徒のときに、すてきだなって思った先生は何人かいましたが、正直具体的な事象が思い出せるぐらいの尊敬ではなかった気がします。どちらかというと僕には反面教師の先生が多くて・・・。なので、明星の同僚として、これは尊敬できるな、こういう先生に習いたかったなっていうような先生を答えてもいいでしょうか?

加登谷:はい。大丈夫です。

佐藤先生:尊敬できる先生は、同じ数学科に小宮山先生という方がいらっしゃいます。僕を採用してくれた先生なんですよ。細かく熱心に、生徒に対する指導同様に教員に対しても指導してくれたので、僕の教員人生にも大きく関わってる先生ですね。

編集部:どのような指導だったんですか?

佐藤先生:そうですね。印象に残っているのは、1年目に、生徒と一緒に凝念をして校長先生のお話を聞く時間があったのですが、小宮山先生から「こういう場で教員は、生徒の方を見て、きちんとその生徒へ注意をしたり気づかせたり、管理をしなきゃいけないよ」と言われました。僕は、率先垂範(そっせんすいはん・・・人の先頭に立って物事を行い、模範を示すこと。)を重要視してたので、どちらかというと生徒たちに背中を見せて指導しようと思っていたのですが、その先生の話を聞いて、ちゃんと生徒たちの方を向く必要があるんだなという事を教わりました。

加登谷:はい。

編集部:なるほど。先ほど別の先生が「凝念の時間は、生徒を観察する時間でもある」っていうお話をされたことと関係するんですかね?

佐藤先生:そうかもしれないですね。教員歴の長い先生は、凝念を通じて生徒たちを見ている人が多いんじゃないですかね。

編集部:なるほど。

加登谷:普段やる凝念とは別に、凝念っていう授業の時間がありまして・・・。

編集部:なるほどー。

加登谷:その時間は、凝念をしたあとに校長先生のお話を伺うという・・・あれは授業ですかね?

佐藤先生:そうですね。

編集部:なるほど。ちなみに先生は、明星中学以外で教鞭をとられていたんですか?

佐藤先生:いえ、僕は新卒から明星です。ご縁がありまして。

編集部:なるほど。では、先生になりたての時に、小宮山先生から今のような指導を受けられたんですね。

佐藤先生:そうですね。

加登谷さん:小宮山先生のほかにもいらっしゃいますか?

佐藤先生:そうですね。まだ明星に来たばかりの若いときに、生徒たちへの対応の仕方、あと保護者の方への対応のアドバイスとか、困った時に相談に乗っていただいた方が、中村公辰先生ですね。

加登谷:はい。

佐藤先生:本当にいろんなことを教えてくれましたね。あんまり大きな声では言えないですけど、「お酒飲んだ翌日には、絶対死んでも来い」と。ははは。二日酔いで体調不良になって学校休むのは、絶対生徒のためにもならないから死んでも来いって・・・。その割に結構連れまわされて、大変なこともありましたけど。

加登谷:ふふふふ。

編集部:小宮山先生、中村公辰先生、それぞれ何歳ぐらいの先生なんですか?

佐藤先生:小宮山先生は確か僕より20コ位上ですね。中村公辰先生は、僕よりも12コ上だと思いますね。はい。

編集部:なるほど。分かりました。

加登谷:新卒の頃から明星で働かれてるということなんですが、教師になった直後と現在とで、先生ご自身が大きく変わったことはありますか?

佐藤先生:はい。そうですね。大きく変わったのは、先を見ながら行動しなきゃいけない職業なので、そういう意識ができるようになったことですかね。客観的にものごとを捉えて、できるだけ先のことを考えて行動するようにしてます。今はもうそのあたりは経験があるのでできるんですけど、最初の時は全然できなかったので・・・。

加登谷:最初の頃にできなかったのは、自分で解決して身に着けていったのか、先輩の先生方に教えていただいたのか、どちらでしょうか?

佐藤先生:基本的には前者ですね。僕はあんまり人に聞くのは好きじゃないので。

加登谷:はい。

佐藤先生:大きな失敗の手前ぐらい、まずいんじゃないかって時には、さすがに先ほどいった先輩たちや、柴田先生、佐藤誠司先生、神谷先生、その先輩たちがいろいろ助けてくれました。でも、基本的には自分で考えてですね。

加登谷:はい。

編集部:先を踏まえて行動することというのは、教師という仕事の重要な要素なのでしょうか?

佐藤先生:例えば、生徒が悪いことをします。それに対して注意するとき、反発があるかもしれないから、このタイミングじゃなくて、別のタイミングで注意をしようと考えますよね。でも、今この時期にちゃんと教えておかなければ、将来困るんじゃないかということまでの先を考えて指導をするっていうことですね。そこで反発されようが何されようが、絶対にこの時に教えなきゃいけないんだって。

編集部:なるほど。

佐藤先生:若い時には、多分正しいと思って指導していても、本当に正しいのかな?とも思いますよね。だけど、卒業生を出して、彼らが遊びに来てくれたときに、先生あの時こうでしたよっていう話をしてくれる子たちが多いんですね。なので、その子たちの話を聞いてて、やっぱり間違ってなかったんだなって自信を持ってやれるようになったっていう感じですかね。

加登谷さん:はい。

編集部:なるほど。先生という仕事って、製品が完成するまでが、とても長いじゃないですか。成果がすぐに見えない、今、自身が行っていることが正しいかどうかわかるのが、かなり先の将来という、なかなか難しいお仕事ですよね。

佐藤先生:いや、正直難しいと思います。僕の経験ですけど、論理的で正しいと思っても、当然イレギュラーなことがすごくたくさんあって・・・。クラス運営とか教科の中でも、多分こういう想定でいけるだろうなと思っても、全然違う方向にもっていかれることがすごく多いんです。想像しながらでも、うまくいかないことがたくさんありました。

編集部:人間の動きは複雑なので、シミュレーションしにくい・・・

佐藤先生:ということですね。はい。

編集部:なるほど。分かりました。ありがとうございます。

佐藤先生:あ、いえいえ。

加登谷:好きな本や影響を受けた本がありましたら教えてください。

佐藤先生:これたくさんありすぎて何とも言えなくて。(笑)

加登谷さん:ふふふふ。(笑)厳選すると?

佐藤先生:厳選すると・・・。最近は、東野圭吾先生の本が、もう端から読むほど好きになってしまって。

加登谷:私も好きです。

佐藤先生:今は、細かくいうと「加賀恭一郎」シリーズ 。刑事ものなんですけどね。

link:「加賀恭一郎」シリーズ 東野圭吾(著)

加登谷:生徒たちに、大学に行くとどんな良いことがあるかと質問されたら、どのようにお答えしますか?

佐藤先生:たしか、高校生のときの加登谷さんにも聞かれた気がするんですが。(笑)

加登谷:ははは。(笑)

佐藤先生:僕の記憶が間違ってなければ。その時の答えと基本的に一緒なんですけど、1つは、知的な刺激を与えてくれる友人に会います。

加登谷:あー、聞きました。なんか、思い出しました。

佐藤先生:明星は私立なので、高校時代までは家庭環境的に似通った、いい生徒たちと出会えるんですよね。でも、学問レベル的に、果たして自分と同じかっていうと、ちょっと難しい生徒たちも多いと思うんです。大学の場合は学力で振り分けられるので、例えば背伸びして入った大学であれば、今までより大きいゾーンで戦えるでしょうし。いい刺激を与えてくれるんじゃないかなあと。あとは、大学は本気で学問に取り組める環境がありますよね。好きなことなんでもやらしてくれるから。

加登谷:はい。

佐藤先生:なので、この2つを伝えてます。

加登谷:分かりました。

編集部:大学の中には、知的な刺激を与えてくれる友人がいる大学もあるし、そうじゃない大学もあると思うのですが、そうじゃない大学に行こうかどうか迷っている生徒がいたらどうされますか?

佐藤先生:いや、行った方がいいと思いますね。

編集部:それでも?

佐藤先生:それを感じるってことが必要ですよね。

編集部:なるほど。

佐藤先生:例えば自分が行った大学で、8割以上が留学生で「え?こんなはずじゃないんだけど」っていうとこもあると思うんです。募集定員に足りず、海外から学生をもらってくるっていう・・・。でも、そういう大学に行った時に「プチ留学だ」みたいに前向きに捉えて活動できる人もいるでしょうし、なんで俺こんなところ行かなきゃいけないんだって思って、一念発起して、その大学で優秀な成績を取りながら大学院の方へ行かれるっていう場合もあると思うんですよね。ですから、僕は今の日本の環境を考えたら、大学には行った方がいいんじゃないかと思います。

加登谷さん:はい。

編集部:なるほど。分かりました。ありがとうございます。

加登谷:明星は中高一貫校ですが、中高一貫校にあって一般の中学校にないものといったら何でしょうか?

佐藤先生:やっぱり、6年間同じ仲間と切磋琢磨ができるっていう環境はすごいですよね。6年間なんで、もうみんな何でも知ってるっていう環境ですね。

加登谷:はい。

佐藤先生:もう1つは、教員目線で話をすると、6年間を見据えた指導もできますからね。どんなに大きくなった高校3年生のお姉さん、お兄さんでも、中1の若い時代のことを知ってる先生には弱いですね。

編集部:ははは。

佐藤先生:ははは。ものすごく弱いですね。

加登谷:ははは。

佐藤先生:その子にとっては、いつまで経っても先生ですから。なので、そのあたりに関しては、ちゃんと上下関係がわかる、そういう文化が分かるような環境をつくりやすいので、とてもいいんじゃないかなと思いますけど。

加登谷:今度は、この明星の中学・高等学校にあって、他の私立の学校にないものといったら、なんでしょうか?

佐藤先生:これは、残念ながら僕には分からないです。というのも、先ほどの質問でもありましたが、僕は新卒から明星なので、ほかの私立の中身までは知りません。部活動でいろんな学校の顧問の先生とお会いするので、その学校の文句はよく聞くので、たくさん知ってます。(笑)

加登谷:ふふふ。

佐藤先生:文句は聞くんですけども(笑)、実際そうなのかというのも分からないので、答えようがないですね。

加登谷さん:分かりました。

佐藤先生:明星の宣伝はいくらでもできますけど。(笑)

加登谷:はい。(笑)

編集部:例えば先生ご自身が通われてた中学校や高校と比べていかがですか?

佐藤先生:(明星は)もう面倒見が良すぎますね。過保護なぐらい。もっと放っておいた方がいいんじゃない?って思うぐらい。私立は面倒見がやっぱりいいですね。

編集部:なるほど。

佐藤先生:一人一人のことを考えていますよね。ほとんどの教員がプロ意識を持ってるんじゃないかと思うんですね。どんなに端にいる人にも声をかける、みたいな。僕は公立中学・高校出身だったんですけど、誰も何もしてくれなかったですね。むしろそれで、雑草は育ってくので、それもいいんじゃないかとは思いますけど。

編集部:声かけはルール化されてるんですか?

佐藤先生:いえ、システムでやってるわけではないです。先輩たちの仕事ぶりを見ながらですかね。まあ子どもが好きな先生が多いので、必然的に「あの先生この時間にこんな話したり、こういうことやってるんだ」というのを見て、それで僕がやれたことは多いんじゃないかなと思うんですね。はい。

編集部:なるほど。

加登谷:明星中学に合格した生徒たちに、勉強以外で一生懸命取り組んでほしいことはどんなことでしょうか?

佐藤先生:はい。家の手伝い。

加登谷:家?

佐藤先生:これ、中学校ですもんね?

加登谷:はい。中学です。

佐藤先生:家の手伝いを全力で。掃除だったり、挨拶だったり。

加登谷:学校生活の中で一生懸命取り組んでほしいことはありますか?

佐藤先生:それは、入学したあとでいいってことですか?

加登谷:はい。入ったあとで。

佐藤先生:行事ですね。

加登谷:行事。体育祭とかですか?

佐藤先生:そうですね。合唱コンクールとかも全力で。

加登谷:それらを全力で頑張ることによって、生徒たちにどういった良い影響があると考えますか?

佐藤先生:何と言っても成功体験だと思います。

加登谷:生徒からの相談で、印象的な内容があったら教えてください。

佐藤先生:ものすごく印象的だったのは、明星に来たばっかりの時に、ある男子生徒が普通に職員室に入ってきて、「うちの親が離婚するので、先生、僕のお父さんになってくださいって」って言われたことでした。僕はそのとき未婚だったので、「お母さんも先生のこと好きなんで、よかったら結婚してください」みたいな感じで。(笑)

編集部:それで、結婚されたんですか?

佐藤先生:え?

編集部:その生徒のお母さんと結婚されたんですか?

佐藤先生:いやあー!残念ながら。はっはっは。

加登谷:ふふふふ。

佐藤先生:いきなり13歳、14歳の子持ちになるのはちょっとハードルが高かったっていうか・・・それはあんまり良いかたちじゃないとは思いますので。ただ、それだけ僕を頼ってくれたのは嬉しいなとは思いますけど。

編集部:そうですね。

電子黒板を使いグラフや図形を見せながら解説。

加登谷:先生は数学の先生でいらっしゃいますが、どんな教材を使って授業をされていますか?オリジナルのプリントがありましたら、教えていただきたいのですが。

佐藤先生:はい。えーと、もうそれは、あなたがご存知だと思うんですけど。(笑)

加登谷:はい。(笑)

佐藤先生:まずは、オリジナルの教材ではなくて、主軸は受験の参考書になります。例えば「チャート」だったり。

link:「チャート式」(数研出版)

加登谷:数学でも電子黒板を使うことはありますか?

佐藤先生:ありますね。図形を見せる時にはすごく楽ですね。グルグル回せちゃうんですよね。

加登谷:あー!なるほど。

佐藤先生:それ用の資料をちゃんと作っておけば、普段は黒板に一生懸命書くんですけど、それでは見づらい図形があるので、それをパッって映せると、「あ、こうだ」と理解が進むよね。

編集部:うんうん。

佐藤先生:もう、すごくICTは楽ですよね。はい。

【※編集部注釈:ICT=Information and Communication Technology(情報通信技術)教育・・・明星中学・高等学校では、2015年度の中3・高1から、段階的にタブレット端末を利用した授業が開始された。各教科の特性に合わせて先生がそれぞれ指導を工夫し、授業導入・展開・まとめの箇所などで、電子黒板やタブレットを使いICTを活用した授業を行う。コンピュータやプロジェクタなどのさまざまな情報機器を授業に取り入れることで,理解が深まったり,興味・関心が高まり,教育効果があがっていることが報告されている。】

加登谷:先ほど、中学1年生の2人にインタビューをしたんですけど、数学の代数の授業は佐藤先生が担当されていますか?

佐藤先生:当たり。うん。

加登谷:授業では、毎回同じように、最初に説明をして、そのあと問題を解いてというルーティンがあって、すごく授業がやりやすいって言ってたんですけれども。

佐藤先生:うん。頭いいね。

加登谷さん:それは、そういう意識で授業をされているということですか?

佐藤先生:もちろんそうです。はい。

加登谷:あ、そういうことなんですね。

佐藤先生:それ、生徒には伝えてないんですけどね。

加登谷:そう言ってました。

佐藤先生:すごいなあ、中1なのに。

加登谷:水越さん。

佐藤先生:水越が?ああ、すごいね。それびっくりだな。高校生には伝えることあるんです。進級したとき時に、教える担当者が変わる場合もあるんで。数学って担当者によって教え方の流派が全く違うんですね。

加登谷:はい。

佐藤先生:今まで分かりやすかったのに、先生が変わっただけで、急に「おお?」ってなる生徒が多くなっちゃうんで、それってとっかかりとして申し訳ないなと思うんですね。なので高校生に関しては、教え方にはこういう場合もあるよって、わざとリズムを崩させたりすることもあるんですけど、でもそれはちゃんと言ってからやります。でも中学生にはそういうことは言いません。まず中学生はルーティンを理解して欲しいので同じ流れでやります。この瞬間に板書をノートに写していいんだとか、だいたいこのぐらいの時間で写さないと、次説明が入るから困っちゃうなって。それくらいの指示はまあ言いますけどね。板書写していいよって。そういう意識はしてやってますけど、言わなくてもわかるとは、水越やるなあ、と思います。

編集部:先生のルーティンはどのような?

佐藤先生:最初は導入なんで興味ですよね。数学ってやっぱり苦手な生徒がいるので、今回の授業の要点はここだよって、最初にもう導入として伝えちゃいます。これが分かればもう大丈夫だからみたいな。 その説明をすると同時に僕が黒板に書き始めますが、ノートに板書を写すのと、説明を聞くのと、練習すんのをちゃんと分けるという感じですかね。

加登谷:すごいですね。

佐藤先生:説明を聞いて、ノートに書いて、あとから自分で練習をするって。

編集部:要点を先生がお話になられている時には、生徒さんはじっと聞いてる?

佐藤先生:そうです。聞くに徹するという感じで。

加登谷:最後に・・・

佐藤先生:練習する。 それでわかるというよりは、できるようにするっていうイメージですかね。

編集部:なるほど。

加登谷:もう1人の山岡くんは、授業で代数が1番好きって言ってました。

佐藤先生:あー。恐ろしいね。

加登谷:ふふふふ。

加登谷:生徒の観察は日々どのようになさってますか?

佐藤先生:中学校では朝礼時に読書をやっているので、彼らが本を読んでるときに、いろいろ様子を見てますね。「今日の様子はどうかなー?」って。読書してると大体分かるんですよね。集中力散漫になっちゃって、「あ、家でなんかあったのかなー」とか。読書終わって朝礼のときに挨拶するんですけど、「声出てるのかなー?」とか、こっち側見てないとか、「ちょっとやべえ」みたいな感じで目をそらすとか。(笑)そういう生徒を見た時に、「何かあんのかなー」という感じです。あとは、「班ノート」という交換日記みたいなのを順番にやってまして。今日は一番前の席の人、次はそのうしろの人。1日ごとに3行書いてね、みたいな。意外とみんなそれに書きますよ。

【※編集部注釈:朝の読書・・・明星中学校・高等学校では、毎朝10分間、全校生徒で読書をする時間を設けている。】

編集部:ほー。

佐藤先生:自分の趣味のこととかね。「SEKAI NO OWARI」が好きなんです、みたいな。

加登谷:ふふふ。特に4月とか5月頃は、他の人のことを知れるので、あれはすごくいいですね。

佐藤先生:個人の交換ノートではなく、班の5人6人で回しているので、僕がそれに突っ込んでコメントを書くみたいな感じです。

加登谷:はい。

編集部:ほほー。

加登谷:日々、生徒の観察をされてると思うんですが、その中でいじめがあった時はどのように対応をしますか?

佐藤先生:当然、初期段階ではヒアリングですよね。まず被害者から。「どんなことがあったの?」って。次に加害者。あとは情報を客観的に見たいので、傍観者ですね。傍観者からちょっと聞いてみたりしますね。

加登谷:先ほど、佐滝先生に伺った時に、まずは学年の先生全員に報告をして、それで顧問の先生に、両隣の先生にも報告をされるということだったんですけれども、佐藤先生もそうされてますか?

佐藤先生:佐滝先生のいじめの定義は、いじめられた側がいじめって思った瞬間にいじめになる、だと思うんですよね。それが基本的な定義だとは思うんですけど、僕は、事の大小があるような気がするんです。「ここは乗り越えた方がいいんじゃないの?」って。でも、あんまり事を大きくしちゃうと、その生徒が乗り越えるんじゃなくて、やった生徒への処罰や指導が先にいってしまうので・・・。僕の場合は、まず生徒にどういう状況なのかヒアリングします。それをみんなで共有した方がいいのか、対応した方がいいのかを判断してから他の先生に伝えます。

加登谷:落ちこぼれた、勉強についていけなくなってしまった生徒には、どのように対応しますか?

佐藤先生:はい。それは声かけですよね。心的に落ちこぼれてるだけなのか、能力的に全然授業についていけないのか、落ちこぼれた理由によりますよね。授業にはついていけないけどやる気があるのなら、補習や追試でのケアができますよね。心がなえちゃった生徒っていうのは、「できるようになったよ」の積み重ねをたくさんしなきゃいけないの で、時間をかけながらやっていきますね。正直なところ、そういう気持ちはあるんですが、ちゃんとそれ対応できてますか?と聞かれると、最近はできていない部分の方が多いような気がしますね。僕自身の時間的な制約があるので、これをやっておきなさいというアドバイスはしますけど、本当だったら四六時中一緒にいてあげるべきなんでしょうけど・・・。ちょっとそれはできてない環境にありますね。

編集部:何か環境の変化があったのですか?

佐藤先生:仕事の量が多すぎるので、四六時中一緒にはいてあげられないですね。あと、幸い、僕は優秀な生徒がいるクラスの担当が多かったので、選抜クラスの生徒たちだと、自助努力で学習できるんですね。僕がねっとりといろんなことをしてあげてクリアさせると、僕がいなくなった時にどうなのかな?と思ってしまうんですけど、僕がポロッと言ったことに気づいて、あとは自分でできますみたいな方法の方が教育っぽいなとも思うので、あまりつきっきりでやらない部分もあります。

加登谷:では逆に、ある部分においてすごく秀でている、長所がある生徒にはどのように対応されますか?

佐藤先生:とりあえず環境を与えるっていうぐらいですかね。きっと。

加登谷:環境を与える?

佐藤先生:例えば、数学だけが得意だけど、生活態度は全然だめですみたいな生徒には、できていない部分に関してはちゃんと指導すると思うんですけど、さりげなく「数学オリンピックっていうのがあるんだよと」という話をしたりしますね。

加登谷:ふふふ。

佐藤先生:「数学オリンピックはこんな問題が出るんだよ」「今度1月に予選があるね」、という感じで話を持っていったりしますね。(笑)

編集部:なるほど。

佐藤先生:きっかけを与えるだけですね。好きなものは自分で見つけてどんどんやっていった方が絶対いいからね。これをしなさいとかじゃなくて。

加登谷:あくまできっかけづくりということで?

佐藤先生:それで僕は充分だと思ってますけど。

加登谷:自分のお気持ちでいいので、先生は人気があると思いますか?

佐藤先生:ないです。僕は人気があまりありません。(笑)

加登谷:それは、どうしてでしょう?とお伺いしてもいいんでしょうか?

佐藤先生:そうですよね。聞いてくれないと困りますんで。(笑)

加登谷:ふふふふ。

佐藤先生:ふふふふ。僕が思う、人気のある先生とはどんなものかという定義ですよねきっと。

加登谷:はい。

佐藤先生:生徒がその先生のために、自発的に行動する。そういう生徒が多いというのが、僕は人気だと思います。

加登谷:なるほど。

佐藤先生:今ので伝わります?例えば、高校1年2組の担任をした時に、「○○くんが大変なんです」ってわざわざ呼び出されたことがあるんです。「何があったの?」という感じで行ったら、委員長が来て「はい、ハッピーバースデイトゥーユー」って誕生日を祝ってくれたんです。だまされたんですね。(笑)なので、当時は人気があったと思うんです。僕のためにそういう行動をしてくれたみたいな。そういうことをたくさんの生徒たちがしてくれるんだったら、多分人気があるんじゃないかなと思いますけどね。総じて、教師になってからの十何年ぐらいの歴史を考えると、あんまり人気ないんじゃないかなと思います。

編集部:人気は必要だと思いますか?

佐藤先生:まあ、あった方がいいですよね。

編集部:ふむふむ。

佐藤先生:はい。お金とかと学歴とかと同じぐらいの感覚ですかね。

編集部:ははは。

佐藤先生:あっても損はしない。

編集部:はー、なるほど。

佐藤先生:うん。でも、なくても生きていけるんじゃないかなと。

加登谷:明星学苑の好きな点がありましたら教えてください。

佐藤先生:面倒見の良い、優秀な先生が多い。他の学校は知らないですけど、この学校にはものすごく多いと思います。・・・・さっき尊敬する先生についての質問があって、ちょっとまだドキドキしてるのは、あの先生のこと言ってないなとか思ってて。(笑)

一同:はははは。

佐藤先生:質問には二人の先生のことしか答えてないけれど、「あれ?なんで俺の名前出てないんだ」とか、「俺お前にいろいろやってあげたよな?」と言われそうなぐらいお世話になったし、尊敬できる先生はたくさんいるので。(笑)

編集部:ははは。

佐藤先生:それ考えてみたら、すごくいい先生が多い。

編集部:ほー。

加登谷:逆に、もっとこうしたらいいのにという点はありますか?

佐藤先生:この学校のちょっと残念なところ、もっとこうしたらいいのになっていうのは、そういう優秀な先生が多いので、できるだけそういう先生が生徒と絡める環境をたくさん作った方がいいんじゃないかなって思うんです。

加登谷:うーん。

編集部:先生の数は、生徒の数に比して、いかがですか?

佐藤先生:正直なところ僕が最初明星に来たときには、もっと多かったんですよね。多い人数で手塩にかけて育てよう、みたいなイメージがある学校だったんです。職員室も、なんでこんなにでっかいんだろう?みたいな。勤め始めたときには、こんなに先生必要?って。生徒の数を見たら、当時は男子部だったんで3、4クラスしかないのに、すごい数の先生がいるなという感じだったんです。でも、今はそれほどではありません。

加登谷:明星中学に進学した生徒たちが、6年後、大学生になった時に、どのように成長していると思いますか、または、どんな成長を望みますか?

佐藤先生:当然、周囲から信頼される人物になってると思うんですね。

加登谷:はい。

佐藤先生:もうそれにつきますよね。あの人に任せておけば大丈夫とか。

加登谷:今の明星の教育といいますか、全体的な教育で、そのような人物に育つ確信はありますか?

佐藤先生:うん。加登谷さんの代までは自信があったね。

加登谷:私の代までですか?

佐藤先生:加登谷さんの代までは、相当自信があったね。今も自信を持ってやってますけど、今は無駄を省く教育もする必要があるので・・・。でも、僕は、情操教育は、どれだけ無駄なことをしたかが重要だと思うので、(受験社会の方向とは)「逆かなー」って思いながら、自己裁量の中でできるだけ無駄を与えてるっていう感じなんです。とりあえずそれができてる間は、自信を持ってやっていけると思います。これがもうちょっと裁量がなくなってきたときに、ちょっときついかなって。

編集部:なるほど。

加登谷:先生のお子さんを明星学苑に入れたいと思われますか?

佐藤先生:僕自身が思う思わないというよりも、それは子どもの人生なので、子どもが望めば、どうぞご自由にという感じですね。

加登谷:ではお子さんが望んだら、ここに入れても良いというお考えで。

佐藤先生:いいんじゃないですか。面倒見の良い先生が多いんで。僕の先輩たちも、たくさん自分のお子さんを明星に入れてる方がいらっしゃるんですけど、何々先生の子どもという付加価値がありますよね。その付加価値をちゃんとクリアできれば、というところですかね。

加登谷:分かりました。

佐藤先生:プラスもあるでしょうし、マイナスも当然あるでしょうね。

加登谷さん:はい。分かりました。

佐藤先生:それを乗り越えられれば別にいいです。

編集部:明星では、小入生と中入生と教育を変えていることはありますか?

佐藤先生:いえ、一緒に扱おうと思いますね。ただ、安心していただきたいのは、本校は、内部進学生が人数的に半分ですね。中学から入っても高校から入っても、半分ぐらいです。その半分の生徒たちは、もうみんな最初から仲間なんです。一方で他の生徒たちは、一人一人が単品なので、一瞬寂しいかもしれないですけど、内部進学生は6年間で慣れ切っちゃっているので新しい出会いに飢えてるんですね。

加登谷:ふふふふ。

編集部:なるほど。

佐藤先生:新しい仲間いないかなーみたいな。だから内部進学者が外部進学者にすごい積極的に声かけてくれて。とても優しいんです。

編集部:なるほど。でも、学年によって、その優しくない学年もありますよね?

佐藤先生:色が出るところはあるかもしれないですね。結構やんちゃだなーっていう学年は、大体3年に1回ぐらいありますけどね。

編集部:でも基本的に、優しい。

佐藤先生:基本的には。はい。

編集部:サンプルがちょっと少ないんで、あまり自信を持っては言えないんですけど、こちらの生徒は、やはりまじめだという方が多いです。周囲から信頼される人物というのを輩出できるのには、何か仕組みがあるんですか?

佐藤先生:明星の93年の教育の中で、先輩たちがやってたこと見て、それを引き継いでやってるというのが大きいんじゃないでしょうか。

編集部:なるほど。

佐藤先生:同じようにやっていれば、そういう人物は育てられると思います。ただ、それと同じことを継続することは大変なことですが。

編集部:そこにあるシステム、伝統を生んでいるルーティンを顕在化していきたいと思うんですが・・・

佐藤先生:うーん。すごい難しいですよね。それ。

編集部:ルーティンは、ルール化するよりも自発的で強い行動だと思うんですよ。“凝念”も、先程お話くださった先生の授業パターンも、先生方が生徒に声をかけることも、良いルーティン。明星で6年間刷り込まれるルーティン。そこが明星学苑の強さなのかな、とだんだんと思ってきて。ほかにそういうルーティン化されてる要素は、どんなものがあるのかなと思ったんです。

佐藤先生:なるほど。明星に入って最初にびっくりするのは、校則がうるさいんですね。まあ私立だから当たり前だと大人は思うと思うんですけど、結構細かいです。例えば、頭髪にしても、眉にかからない、耳にかからない、襟にかからないって。

編集部:確かにさっきの生徒さんもそうだったですね。

佐藤先生:身だしなみを整えるとか、うるさく言ってる部分があるのでね。男子の制服なんて、絶対外れるのになんでホックにしたの?みたいな。(笑)

編集部:はい。

佐藤先生:先輩から伺った話だと、明星の制服は外れやすいようにできてるらしいです。ただ、ちゃんと着こなしたら世の中で一番格好いい制服なんだって。だから見えないところに関しても常に気を配ると。凝念する時にも生徒たちはちゃんとできるかを手探りして確認しながら凝念してますね。自分に対する気づかいができれば、当然他人にも注意しやすいですよね。ホック開いてるぞみたいな。そこから、愛情が生まれてきたりとかするかなとも思いますけども。

編集部:なるほど。

佐藤先生:注意すると「おー!やべえ、やべえ」みたいな。生徒たちはそれが悪いことだと分かっているので、お互い注意しやすく、受け入れやすいですよね。多分それで優しい人間ができるんじゃないかなと思います。

編集部:やっぱりこの学校にたぶんあるだろう“真面目さを育てる仕組み”を知りたいです。明星中学校にはあんまり顕在化されてないようなルーティンがきっとあって、伝統として継続されている。ホームページに書かれていない部分。だけど、そういうところには象徴的に学校の考え方、先生方の考え方、生徒の育て方が表れているような・・・。一言ではいえないのですが・・・

加登谷:今日ずっとインタビューしてきて、はっきりはしないんだけれど・・・

編集部:みなさんには自然なことかもしれないですけど、こちらはすごく特徴があると思うんですよね。でも、外部の人間、特にすぐに理解したい人、それで判断をしたいという人たちには、伝えづらい気がします。

加登谷:そうですね。

編集部:はっきりすべきじゃないのかもしれないですし、はっきりさせるような単純なことじゃないかもしれないけど。そう思いました。

佐藤先生:僕はおっしゃる通りだと思いますけどね、やっぱり単純化できないじゃないですか?うん。まあ逆に単純化できるんであれば、その親御さんが学校行かせなくてもできちゃうんじゃないですか、きっと。

編集部:なるほど。あとそうだ。面倒見が良いという裏返しで、先生方が忙しそうだとも思いました。朝7時半からの0時限もそうだし、部活動にも入ってる率が高い。しかもそこで、もう1つ授業をすると、それほとんど先生方がされているので。大変だと。

佐藤先生:はい。

編集部:それは、みなさんから不満が出ないものなんですか?

佐藤先生:出ますよ。それは当然出ますよ。 当然不満は出ますけど、みんな好きなことやってるんですよね。仕事は多いけど、部活をやりたい先生がたくさんいるんです。

編集部:ほう。

佐藤先生:部活やりたいから、じゃあこの仕事もやっとくみたいな。感じですかね。

編集部:なるほど。先生方みなさん、いい意味でワーカホリックですね。(笑)

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