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2017年5月15日

「どのレベルで入ってきても、われわれはその生徒の自己実現を後押しする」

取材日:2017年5月15日
インタビュイー:進路指導 Senior Advisor・副校長 福本眞也先生
インタビュアー:立教大学現代心理学部映像身体学科2年生 加登谷美琴

【イントロダクション】
「自己実現の後押しが学校の使命。そのために明星は変わらなければならない。」その言葉には改革の強い意志が感じられた。“自己実現”には当然大学進学が含まれる。生徒それぞれが6年間でステップアップし、よりレベルの高い大学に入学する。それが個々の自己実現の可能性を高める。しかしそれには生徒一人一人に別の対応をする必要がある。先生をはじめ学校側には大きな負担が生じる。「教育の本質は変わらない。だから、明星でもできると思っています」明星の伝統を残しながら、改革し、結果を残す。簡単な道ではない。しかし、成功体験がある人は強い。この人なら実現するのかもしれないと思ったインタビューだった。

 

福本眞也副校長
インタビュアー:加登谷美琴

加登谷:よろしくお願いします。まず初めに福本先生ご自身について聞かせていただきたいと思います。明星中学校・高等学校の勤続年数を教えていただけますか。

福本先生:平成28年の1月1日付ですから、1年と5カ月目ですね。あなたが卒業した頃にはいたのはいたんだよ、きっとね。

加登谷:はい、私は28年の3月に卒業なので。

福本先生:そうだよね。

加登谷:はい。では続きまして在職年数を教えていただければ。

福本先生:明星?

加登谷:全体の、教師の・・・。

福本先生:教職ですか。教職はですね、24年足す1年5カ月。

加登谷:それでは、教員になられた一番の動機を教えてください。

福本先生:高校3年生のときの英語の先生がすばらしかったからですね。

加登谷:どのようにすばらしかったのですか?

福本先生:授業がうまい。それから何というか、授業でどんどん引き込まれていくんだよね。それで一つひとつは、すごく面倒見がいい。面倒見がよくて、僕たちの心をつかんでいくの。それですごく面白くてバイタリティがあって、こんな英語の先生いいよなって思ったんですよ。でも、僕自身は、理系なんです。

加登谷:あ、そうなんですね。

福本先生:そう。だから僕の同級生は医者が多いんですよ。それで、3年生の秋に「先生みたいな英語の先生になりたい」って言ったら、「一生のことだからよく考えなきゃいけないよ」と言われたんです。ただあくる日にもう一回呼ばれて。「おまえはやんちゃ坊主だから医者になるより学校の先生のほうが合ってる」って言われたんですよ。「学校の先生は優等生ではなかなか難しい。やんちゃ坊主のほうが生徒の気持ちがよくわかる。だからそういう面では福本は合っている」と。僕は親一人子一人なんですけど、「親一人子一人だから苦しい子どもの気持ちもわかるだろう。頑張って勉強して俺の後継ぎとして母校に帰って来い」と言われたんですよ。

加登谷:なるほど。

⭕️⭕️改革のきっかけ⭕️⭕️

加登谷:では続きまして、熊本高校進路部長時代の取り組みについてお聞きしたいと思います。ということはご自身が熊本高校の出身で・・・?

福本先生:はい、そうです。

加登谷:ご自身が在学していた間と母校に戻って先生になったときに感じた変化など、改革をしようと思ったきっかけを教えていただけますか。

福本先生:すごく自由な学校だったんですね。生徒を大人として扱ってくれる学校だったんですよ。それで僕は23歳のときに採用試験に通らずに非常勤講師として熊本高校で2年間勤務しました。その時期はまだ恩師たちもいて、すごくいい学校だった。自由でなおかつ世界に羽ばたいていこうという夢があって。

加登谷:はい。

福本先生:2年間母校の熊本高校で非常勤として働いて、正式に採用試験に通って、10年間二つの学校に行ったんですよね。それで35歳で母校に帰ってきた。そしたら、ただ単に大学入試に合格させることを目的とする学校に変わっていたんですよ。

加登谷:実績のみを?

福本先生:そう。そういう指導方針に変わっていて、「え、違うんじゃないの?」と思ったんですけど、35歳で帰っていったときには、まだ偉い先生がいっぱいいてね。たたかれるわけですよ。(笑) それでも少しずつ抵抗しながら40歳になった年に進路指導部長に任命されたんですよ。そこから徐々に昔のリベラリズムとアカデミズムを持っている学校に戻したいなと。でも世の中の流れですから当然進学実績は維持しなきゃいけない。そこのところをうまくできる学校にもう一回戻したいなというふうに思ったんですよ。

⭕️⭕️具体的に行った施策⭕️⭕️

加登谷:40歳で進路指導部長になられたということなんですけど、改革するのに具体的に行ったことなどは何かありますか。

福本先生:具体的に行ったのはですね、一つは進路実績を上げるためにいろんなものをシステム化しました。

加登谷:システム化。

福本先生:はい。システム化、体系化っていうのかな。誰がやってもできるようなものを作らなきゃいけないと思って。だからデータも重視しなきゃいけないし、分析も重視しなきゃいけないし。それから一人ひとりの生徒の性格から勉強の仕方からそういったものを全部俎上にあげて、一人ひとりの生徒を指導していくと。あるいは3年間、まだ大学にしかシラバスがなかった時代にもうシラバスを導入していました。

加登谷:いろんな方が学校にいる中で全員が同じ方向へと・・・。

福本先生:そう、同じベクトルへね、方向を合わせたかったんですよ。

⭕️⭕️熊本高校をどのような点で公立トップ校に導いたのか⭕️⭕️

加登谷:そのようなことを行ったおかげで熊本高校を公立トップ校に導いたということなんですけれども、どのような点でトップ校になったんでしょうか。

福本先生:学業面、成績面で言うとセンター試験が公立高校の中でトップ。それから東大の合格数がベスト3。だから常に現役20人から落ちなくなった。単に東大だけではなくて全国の、熊本県立大学も熊本大学も鹿児島大学も含めて、東大・京大・一橋大・東工大、そういう主だった大学がすべて二桁合格です。

加登谷:二桁。わあ、二桁ですか。

福本先生:そう。だから筑波も十何人、名古屋、京都も十何人、一橋も十何人、東大は二十人以上と。九大が八十何人で熊本が百何人、地元の熊本県立大学も十何人とか鹿児島大学も十何人とか。11の大学が確か二桁合格だったと思います。

加登谷:それは結構何年も続いてそのような状況に?

福本先生:約10年は続いてきましたね。

⭕️⭕️どのような学校を目指したのか⭕️⭕️

福本先生:それが学業的なもので、もう一つはエネルギーを持った学生を作りたかったんですね。

加登谷:はい。

福本先生:エネルギーを持つためには、いろいろなことを経験させなきゃいけないということで。今でこそどこでもやっておられますけど、職場研究、職場体験なんていうのは平成8年に熊本高校でもやってたんですよ。

加登谷:その時代にはまだ・・・。

福本先生:なかった。だからそういったいわゆる職業観の育成とか、何で大学に行くのかということ。それらをしっかり理解したうえで大学に行こうねというのと、もう一つは大学にとってありがとうじゃなくて、この学校で学べたから今の自分があるんですよというのを5年後、10年後、15年後、20年後に言える生徒たちを作りたかった。

加登谷:実績だけにこだわってしまうともう「大学に入ってから何をしよう?」という人が増えてしまうと思うんですけど、そういったものを・・・?

福本先生:そう。そういうのを何とかしたかった。だから部活動もすごく盛んだし、イギリスのイートン・カレッジとの交流も始めました。パブリックスクール・イートンですけどね。始めたのが1996年かな、約20年ですね。

【※編集部注釈:1440年に創設された男子全寮制パブリックスクール。ウィリアム王子、ヘンリー王子の母校です。過去19人の英首相を始めとする多くの著名人を輩出しているイギリス一の名門校。】

編集部:それは何の目的があったんですか?

福本先生:初代校長のときに、「イートンをモデルにして学校を作るんだ」というのがあって。いわゆる日本の野蛮人的な学校じゃなくてジェントルマンの学校を作りたいと初代校長が言われていて。その伝統がずっと残っているんですよ。

編集部:ノブレス・オブリージュ?

福本先生:ノブレス・オブリージュが。だからそれを具現化したかったんですよ。

編集部:なるほど。イートンの例えばどういうところを取り入れられたとかってあるんですか?

福本先生:サマースクールに、毎年20人の枠がずっとあります。その枠を持っているのは学習院女子とうち(熊本高校)だけしかないと思うけど。

加登谷:そういうシステムを導入されたのが福本先生だったという・・・?

福本先生:はい。

加登谷:それが今も続いているというのは・・・。

福本先生:今も続いてるんですよ。

加登谷:すばらしいことですね、それは。

⭕️⭕️ベネッセに転職した理由⭕️⭕️

加登谷:では次に、ベネッセに転職された理由を教えてください。

福本先生:二つあって。一つはですね、熊本高校時代、進路部長としていろんな注文をつけていたんですよね。敵だったんですよ、本当は。(笑)それで、逆にベネッセに取り込まれちゃったというのが一つ。もう一つはベネッセに行ったら熊本高校でやったことを全国の学校に発信できるんじゃないかと思ったんですよ。

加登谷:そうですね。

⭕️⭕️仕事内容と成果⭕️⭕️

加登谷:ベネッセではどのようなお仕事でどのような成果を上げられたとか、具体的なものは何かありますか?

福本先生:最初はですね、今のGTEC を作る部門だったんです。その当時は平成13年ほどだから、英語のコミュニケーションイングリッシュというのは、そんなになかったんですよね。今までの訳読式、文法式で十分だという学校が95%だったんですよ。そういう学校に営業マンと一緒に行って「いや、違うんですよ」というような職員研修とか生徒への講演とかをやっていた。

加登谷:はい。

福本先生:ただ僕は前歴が高校の現場だから、どうやったら進学実績が上がるのかという研修によく引っ張り出されていましたね。それを通してやっぱり生徒のエネルギーをどう引き出すのか、何のために教育をやっているのかという話をよくしていました。だから全国のいろんな研修会とか講演会に引っ張り出されるのが一番多かったかな。

加登谷:熊本高校時代に築き上げた先生のお考えとかそういったものを全国に発信することができた・・・?

福本先生:そうですね。実はそのあと1年4カ月で東京に呼び出されて進研ゼミの高校講座の責任者になったんですけど、そのときは進研ゼミを通して、ただ学習するんじゃなくて情報紙なんかでいろんなものを発信したり、模擬試験をただ作るんじゃなくてバックボーンまで発信できるようなことをしていました。例えば英語でいうと英作文の解答だけじゃなくて、そこの文章を取ってきた原文の文章までつけるとかね。そういうバックボーンまで大切にしようよっていうような教材にしていましたね。

加登谷:なるほど。

福本先生:それからもう一ついうと、日本で一番最初にオンデマンド印刷を実行したんです。

加登谷:おお。

福本先生:それまでは進研ゼミというのは15万人20万人の一学年に対して同じ教材を使っていた。そしたら合わなくなりますよね。いろんな意味でね。

加登谷:そうですね。

福本先生:それで教科書別、進路別でできますよっていうようなことをやるためには、オンデマンド印刷でないとできなかったんですよ。

編集部:One to Oneのような?

福本先生:One to Oneで対応しなきゃいけない。それを日本で最初にやりました。今でこそオンデマンド印刷なんて当たり前にやってますけどね、大変だったんですよ。(笑)

編集部:子どもの特性を把握して、それに合った教育ということですか?

福本先生:そうですね、はい。

編集部:なるほど。

福本先生:教科書別、進路別、難易度別、この三つがすべてできますよっていう現場対応に変えた。

編集部:なるほど。

福本先生:なかなか難しいことなんですけどね。(笑)

編集部:でも、それによって、まず一つ生徒にとっては自分に適したものが・・・。

福本先生:そうそう。あなたのですよっていうふうになるよね。

加登谷:私も進研ゼミを幼稚園から高校までずっとやっていたんですけど、中学のときも難易度別もありますしたし、高校生になってからも。オンデマンド印刷が当たり前になった今でこそ明星高等学校って表紙に書いてある(教科書別、進路別、難易度別につくられた)冊子が届くんですよね。

福本先生:僕が考えたんですよ、それ。(笑)

加登谷:そうなんですか!?国公立用とか早慶用とか全部分かれていて。

福本先生:情報紙がかなりよかったでしょ?(笑)

加登谷:はい。「マイビジョン」っていう職業だったりいろんなことが書いてあるものがあって。

編集部:今のところで、一つ福本先生にポイントがあると考えていまして。学校の先生方がいろいろ改革をやられるときに理想主義に走ることが多いと思うんですよね。でも、例えば会社の中でこれをどうして通そうかっていうことになったら、これが経費削減にならないと実現しないんですよね。

福本先生:通りませんよね。

編集部福本先生はその両方ともを持っているから、実際に結果が出ているような気がするんですけど。

福本先生:ありがとうございます。僕はベネッセで学んだのがね、夢がなければ人は動かない。お金がなければ夢が実現できないということなんです。その両方を追い求めないと、いわゆるビジネスとしては成功しないし、学校もそうなんですよね。

編集部:はい。

福本先生:現実のものにならない。だからそういう意味では、僕はめちゃ現実主義者です。

加登谷:そのベネッセで働かれていたということなんですけれども、学校現場、またはこの明星中学校、高等学校に戻られたきっかけや理由などを教えてください。

福本先生:ベネッセは身体を壊して辞めたんですよ。2009年の年末ですけど。そのあと、2010年から私立学校さんの進路実績の改革を中心としてお金をもらう教育コンサルタントを始めたんです。その当時、埼玉県の西武文理というところに行っていたわけですけども、その西武文理の教頭先生が畠山武っていうんですよ。(笑)

加登谷:なるほど!今のここの校長先生で。

福本先生:それと東京に森上教育研究所という、畠山校長もよく知っているところがあって。そこに明星の理事が「教育改革をやりたいのだけれども、校長一人では足りないから誰かいないか?進学実績を上げる人は誰かいないか?」というふうに聞いたんです。それで、森上先生という方が「うってつけの人がいますよ」と言って僕の名前を出された。

加登谷:はい。

福本先生:それで明星の理事が、「畠山さん、こんな人(福本先生のこと)知ってる?」って畠山校長に聞いたら、「知ってるどころじゃありません」となって。(笑)2015年の2月からコンサルタントで入ったんですよ。ちょうどあなたたちが3年生のときの分析から入ったんですよ。

加登谷:そうだったんですね。

福本先生:だからきみたちがどこの大学を受けるっていう会議を僕がやったんですよ。(笑)

加登谷:知らなかったです、初めて知りました。

福本先生:それをやっていたら、吉田理事長から「コンサルタントじゃなくて中に入って明星を改革してくれないか」と。最初はお断りしたんですけど。その時に、「明星は90何年やってきた伝統のある学校で、ここまで約100年ずっとやってきた。次の100年が続くような学校にしてくれないか」と言われたんですよね。先の経営の数字とか進学の数字を言う前に、まず次の100年っていうのを言われたところで「あ、今までの経営者とちょっと違うな」というのがあって。2016年の1月から正式に副校長で入ったんですよ。

加登谷:次に、福本先生の基本的なお考えをお聞きしたいと思います。中学校や高校に通う意味、そして勉強する意味を生徒に聞かれたら何とお答えになりますか?

福本先生:これは僕がベネッセにいたときによく言っていたんですけど、「よく生きるため」だと思うんですよ。

加登谷:よく生きるため。

福本先生:うん。やっぱり社会で「よく生きていくため」の基本的な知識って必要ですよね。そのために勉強してるんだと思うんですよね。そこですぐ出てくるものに学力というのがあるじゃないですか。

加登谷:はい。

福本先生:学力っていうのはその通り学ぶ力なんですよ。あなたもインタビューしながら何かを学んでるじゃないですか。

加登谷:はい。

福本先生:その学ぶ力なんですよ。受験で問われる学力もあるけれども、基本的には生きていくためには学力がないと生きていけない、いくつになっても。それが学ぶ力だと。その学ぶ力の大元の基礎になっている知識を学ぶところが中学校と高校だろうと思うんですよね。

加登谷:なるほど。

福本先生:昔はそこがインプット型だけでよかったんです、20世紀は。なぜかというとベルトコンベアー式の、歯車式の世の中で、いわゆる型にはまった人間がいればよかったんですよ。でも、21世紀になってくると違うんですよね。求められてる力が。

加登谷:はい。

福本先生:そういったものの基礎の基礎になるものを中学校・高校で勉強して、さらに大学、社会人となって拡げていくっていうのが必要じゃないのかなと思うんです。

加登谷:はい。

⭕️⭕️学ぶ力の大切さを実感したエピソード①⭕️⭕️

福本先生:あの、ルワンダという国があるんですけど、50万人から100万人が虐殺されてるんですよ、内輪もめで。そのときに日本に逃れてきたマリアさんっていう人がいて、「日本は朝ご飯を食べたらお昼ご飯も食べられるんですね。それが当たり前なんですね」ってすごく感動されるんですよ。だってルワンダだったら朝ご飯を食べたら、次のお昼ご飯のときには殺されてるかもしれない。それから本屋さんに行くと、2年日記とか3年、5年日記とかありますよね。「何でそんな先まで生きられる保証があるんですか?」って言う人だったのね。

加登谷:はい。

福本先生:アフリカっていうのはどの国も小学校5年生か6年生で広島・長崎のことを学ぶんですって。それがきっかけで日本語を勉強し出したと。そのあと結婚して子どもが二人できて、それから内戦が始まったと。全財産を持って逃れたんだけど、夫は途中で殺され、子どもは飢えてと。そこからかろうじて日本のNPOに出会って日本に来たんだっていう話の中でマリアさんに聞いて印象に残っていることがあるんですよ。

加登谷:はい。

福本先生:人間にとって一番大切なものは何ですかって聞いたら、当然まず「命」ですよね。

加登谷:はい。

福本先生:二番目に大切なものはって聞いたらいろんな答えが出るんですよ。友達だったり家族だったりお金だったり財産とかいろんなのが出てくるんですよ。その中で僕は長年教員をやっていて一回も考えたことがなかった答えが出てきた。

加登谷:はい。

福本先生:マリアさんが何て言ったかっていうと「二番目は、勉強なんです」って。「え、何で?」って聞いたらね、「どれだけお金があっても財産があってもどれだけ立派な家に住んでいても、一瞬のうちになくなってしまいます」と。

加登谷:はい。

福本先生:ところが「自分が学んだものは頭の中にあるから、命さえあったら自分の頭からまた出すことができる。それだけが自分の財産です」と言ったんですよ。「だから人間は勉強しなきゃいけないですよね」って。すごいなって思ったの、なるほどなって。確かに昔はそうだったんだよね、日本人も。

加登谷:なるほど、そうですね。

福本先生:自分の頭の中にあるからこそ出すことができる、それが勉強したことなんだよね。だから今の生徒によく言いますよ、マリアさんの話。自分の頭に入ったことだけしか本当に自分のものじゃないよねって。それがあったら自分の学ぶもののいろんな力が出てくるし、それがそのまま生きる力になるでしょって。

加登谷:何も物がなくても、(勉強したことは)発信したりとかできるものですもんね。お金とかだと自分が身につけてないといけないし。

⭕️⭕️学ぶ力の大切さを実感したエピソード②⭕️⭕️

福本先生:そうだよね。二番目に大切なのが勉強だっていう話の例として、難民キャンプの外側に難民村があるんですよ。入れない人たちがまだいて、その人たちに国連難民が粉ミルクを配ったら、赤ん坊の死者が余計に出たんです。

加登谷:はい。

福本先生:なぜかというと、粉を溶かなきゃいけないから、その辺の水たまりの水で溶かして飲ませてたんですよ。そこには細菌とかがいっぱいいて、それで子どもたちが死んでしまった。そのときに国連が何に気づいたかっていうと「学んでないから物だけ与えてもだめなんだ」ということなんですよ。

加登谷:水たまりの水に細菌がいるというのもわからないですもんね。

福本先生:わからない。

 

加登谷:明星中学校・高校に通う生徒は6年間で何を得ることができると思いますか?

福本先生:”凝念”という言葉。(笑)”凝念”に対する身体的反応。これだけは、恐らく明星を卒業した人は死ぬまで持っていくんじゃないですか。

加登谷:はい。

福本先生:それ以外ないと思う。一番残るのは”凝念”だと思う。

加登谷:福本先生は、初めて凝念をご覧になったときはどのように思われましたか?

福本先生:いいことやってると思いました。

加登谷:なるほど。

福本先生:心の教育をやっている学校って今はそんなにないですよね。だから本当はもっと凝念に力を入れるべきだと思います。明星の6年間で得られるのは凝念の精神、精神というか凝念という体感かな。だと思いますよ。

加登谷:凝念ってすごい特別なものを感じると言いますか。私は小学校から明星で、幼稚園からここは凝念のようなものがずっとあるんですけど、やっぱり凝念をすると気持ちが落ち着く。言葉でうまく表せないんですけど。

福本先生:それからもう一つはね、いい面を言うと帰属意識・仲間意識が強い。

加登谷:そうですね、はい。

福本先生:それはやっぱり一緒に6年間通う中で、まあ6年間行くところはどこもそうなんでしょうけど、非常にアットホームですよね。

加登谷:はい。

福本先生:いい面で言えばね。いい面過ぎて戦いに弱いところがあるけどね。(笑)

加登谷:そうですね。(笑)

加登谷:今この明星中学校・高等学校になぜ改革が必要なのかということについて、お聞かせ願いたいと思うんですけれども。まず初めに明星中学校・高等学校の今のこの現状について、評価すべき点・よい点と直したほうがよい課題などありましたら教えてください。

福本先生:いい面は今言ったように凝念ですよね。校訓の「健康、まじめ、努力」というのも非常にいいですよね。

加登谷:はい、そうですね。

福本先生:校訓の「健康、まじめ、努力」って、生きていくうえでの大切なことが全部凝縮されていますよね。健康、まじめ、努力の中にね。それを凝念という一つの体現するものの中で自分で落ち着いて考えてみようねっていう場があってね。それが伝統の中で脈々と流れてきている。これがすごくいいことだと思いますね。それから東京とかの学校の中では環境がものすごくいい。

加登谷:そうですね。

福本先生:この環境はちょっと他所にはないと思う。

加登谷:都会にある学校ですと狭かったり近くに道路が走っていたりとかがあると思うんですけど、緑が多いのと敷地が広いのと。そこはいいです。

福本先生:いいですよね。それで設備もいいですよね。温水プールがあってね、カフェテリアも広いしね。視聴覚ホールはあるわ、講堂はあるわ、体育館もあるでしょ。それで図書館もよくなるし、何しろ設備と環境はダントツじゃないですかね。あとはさっきの伝統として流れている心の教育。そこはやっぱり一番いい点。それから先生たちを見ると、皆さん優しいですね。優しくて、生徒にかける手間暇を惜しみませんね。

加登谷:はい。

福本先生:課題はね、生徒・保護者のニーズにどこまで合っているか。時代の流れもあると思うんですけど、生徒数が減っていっているわけですよ。そうすると今までの明星の流れの中のままでは、生徒・保護者にはアピールしなくなったんでしょうね。それが何だろうなっていうのが今後の課題です。時代に合わせて学校は変わらなきゃいけないのに、変わりきれていない。

加登谷:はい、そうですね。

福本先生:今までの精神面のよさだけでなく、今の親御さんはどうしても進学実績を求めたい。進学実績を上げるっていうのは悪いことじゃなくて、それを目指させることによって本人たちの頑張りが出てくるんですよね。それがそのまま生きていく力につながっていくんです。これまでの明星っていうのは大らかで朗らかで、楽しければいいと、それでも行ける大学はどこかあるよねと。でも行ける大学どこかあるよねだけじゃもう保護者・生徒のニーズには合わないですよね。

加登谷:はい。

福本先生:小学生のお母さんたちって明星の6年間で、その先はどうなるんですかってすごく気になさいますよね。かと思えば今までの明星のとおり大らかさ、朗らかさも大切にしてくださいって言うお母さんたちもいらっしゃいますよね。

加登谷:はい。それでその改革、明星中学校・高等学校の改革として、どのような学校や教育を目指して最終的にはどのような学校を目指していらっしゃいますか?

福本先生:端的に言うとね、”伊勢丹”。

加登谷:伊勢丹?!

福本先生:うん、高級百貨店。高級はつけなくていいけど、百貨店。老舗百貨店かな。古いいいものもいっぱい持っているし、新しい商品もいっぱいあるし、リッチな人たち用の商品もあるし、庶民が買えるような商品もいっぱいあるし、地下に行くとおいしいものもあると。

加登谷:はい。(笑)

加登谷:具体的には伊勢丹になるためにはどのような改革をなされていきますか?

福本先生:一つは教員の対応力っていうのかな。受験が得意な人もいる、部活が得意な人もいる、それから芸術とか音楽を一生懸命教えてくれる人がいる、文化的活動で頑張ってくれる人もいる。そういう教員の得意分野を作りながら、それを全部一つにしたときに集団とか組織として機能する。進学実績一辺倒か部活動一辺倒とかは、両方違うだろって僕は思うわけ。全部ありでしょと。

加登谷:はい。

福本先生:生徒からしたら一生懸命勉強したい人もいれば、本を読みたい人もいれば、ハンドボールさえやっておけばいいっていう人もいるよと。ジュニアオーケストラをやっとけばいいっていう人もいるでしょと。ジュニアオーケストラだけしかやらなかったけど、それで1位になれる人もいると。

いろんな分野でいろんな人の居場所があって、それが全部対応できるような、ただし一つの方向性としては基礎学力はきちんとつけていこうねって。学ぶ力はつけていこうよねっていうのはやらなきゃいけないだろうなと。どんな学校かと聞かれたら百貨店ですよと。何がほしいんですか、あれもありますよこれもありますよって。少なくとも21世紀で必要な活躍力に対しての布石は打ってくれる学校ですよと。学校のビジョンがあるんだけど、”活躍力”ってしてるんですよ、21世紀の。

加登谷:はい。

福本先生:AIロボットが出てきて、なおかつ外国人がいっぱい入ってくるとですね、今までの職業の大半がいらなくなるんですよね。そのときに何が残るのかというと、マインドとコミュニケーションぐらいしか残らないと思います。そのマインドの部分は凝念でずっとやり続けてきてるわけだ。

加登谷:はい。

福本先生:それでコミュニケーションの部分ね。高度情報化社会に入ってきてるわけだから、STEM教育とか。STEM教育ってわかります?Science、Technology、Engineering、Mathematicsなんですよ。それに最近A、Artがつくんです。

編集部:ステマって読むんですか?

福本先生:スティーマじゃないですかね。スティーマって呼んでますね。なんでArtかというと、例えば、ただそこにあるトースターと、オブジェになるトースターとどっちがいい?今家電製品ってすごく面白いでしょう。あれはArtがあるからだよ。単に昨日だけじゃなくて、いろんな品物にArtがあると、いいわけですよ。だから車でもフェラーリなんかでも、Artが全然違うじゃないですか。ああいうものがやっぱりいろんなものに必要なんでしょうね。

 

加登谷:それでは次に移りますが、明星の改革について詳しくお聞きしたいと思います。まずは教育について、改めて明星の教育の課題・問題点がありましたらお聞かせください。

福本先生:学力間がバラバラ。

加登谷:学力間。

福本先生:どんな学力を身につけさせるのかということ。基礎学力ですよね、どんな基礎学力を身につけさせるのっていうのがすごく曖昧。先生方はただ教えればいいということではないんですよ。どうやったら力がつくのかというところまでの手を打っていかないといけないんだけど、それがなかなかできていない。

加登谷:なるほど、そういったところを改革するためには具体的にはどのようにすればいいですか?

福本先生:基本はね、先生が変われば生徒が変わるんです。生徒が変われば学校が変わるんです。だから基本的には先生が変わる。生徒はね、素直。素直でね、明るい。基本的には明るいし、育ちがいいんだろうなあ、ここの生徒たちは小学校のときから。そういう面では子どもの体質が5年・10年・100年で変わるわけないんですよ。ずっと同じなんですよ、人間の子どもって。

加登谷:はい。

福本先生:教育って何で大切かっていうと、その出会いによってその人が、いろんな分野に伸びていくんですよ。どれだけ音楽的才能を持っていても、今の時代だから情報があって音楽を目指すこともいっぱいできるけど、昔だったらそんなことはできないわけだ。語学の才能があったり数学の才能があっても、そこを学ばないと先に進まないじゃないですか。だからそういう生徒の才能って貴重なんです。それをどう伸ばしてあげれるかという学校の教師側の資質、そこのところが一番大きいと思いますけど。一番簡単じゃん。ハンドボールは何で強くなるのっていう話でしょ。

【※編集部注釈:明星中学高等学校ハンドボール部について・・・昭和23年に創部して以来、昭和39年、41年、42年インターハイ優勝。41年、42年、平成元年国体優勝。昭和63年、全国選抜大会優勝。昭和56年、平成元年インターハイ準優勝。昭和56年、62年全国選抜大会準優勝。昭和57年インターハイ3位。全国選抜大会出場22回、インターハイ41回出場、関東大会52回出場の実績を誇る。】

福本先生:同じ質の生徒が入ってきてるのに、何で毎年毎年成績が違うの?って。何でこの何年間は進学実績が上がってきたのって。小川学年(の進学実績が)上がって佐藤学年(の進学実績が)上がってっていう話になってるでしょ。生徒の質が変わったわけじゃないんですよ。生徒の質は一緒。でもやることと、目指すところがあって、それによって成績がよくなる。でもそいつらがいびつに卒業していったかっていうとそれは違うでしょ。

加登谷:はい。難しいところではあると思うんですけども、教員の方の対応力を向上させたり教員の方の変化をさせるには、どのようなことが必要だと思われますか?

福本先生:意識改革だと思います。

加登谷:意識改革。

福本先生:はい。さっき言ったように教師が変われば生徒が変わるっていうのは、まさにそうですよね。言葉一つでも、1足す1は2だというのと、1足す1をやるとどうなるのっていうように何と何の組み合わせをしたらいいのっていうのは全然違いますよね。そういう発話一つにしても、生徒の引き出し方にしても、宿題の出し方にしても授業のやり方でも、先生の教育スキルが上がれば上がるほど生徒はいろんなことを学べるじゃないですか。

加登谷:はい。

福本先生:だからそういう意味では教育の世界っていうのは先生が一番大切だと思いますよ。そのためには教員研修もしてもらうし、外からの講師も呼びますし、いっぱい外に出てもらいたいと思ってるんですよね。いろんなものを見ていろんなものを吸収して、教師の学ぶ力をもう一回改めてやってもらうと、それだけでも全然変わってくると思うんだけどね。

加登谷:その先生方が学ぶということについて、一つお聞きしたいことがあるんですけども、今のこの明星で既にPHSを持っていて、いつでも生徒からの質問に答えられる仕組みがあったり、放課後学習を持っていたりとか、一人ひとりの先生方の負担が大きいというか、そういうふうに感じるといいますか。教員研修で外にでかけたりすることで、さらに負担が大きくなると思うんですね。その点についてはどうお考えになりますか?

福本先生:それはね、産みの苦しみだと思います。

加登谷:ああ、なるほど。

福本先生:それを経ないと先へ行けないですよね。池上彰さんがよく言ってるんだけど、人間は追い込まれないと新しい対応が生まれないですよね。だから何かをオンするには何かを捨てなきゃいけないですよね。コップに水を入れるときに、ある程度で水があふれるじゃないですか。

加登谷:はい。

福本先生:でも入れる容器が大きくなるとまだ入りますよね。だから自分の器を大きくしないといけない、と私は言いたい。

加登谷:次にお聞きしたいのが、iPadを使った教育支援について。何か改革に役立っていると感じる面、または役立てたいと感じている面はありますか。

福本先生:生徒を見ているとiPadを使うと活き活きしてますね、やっぱり。「Seeing is believing」、どれだけ言葉でしゃべるよりも見たい。見たほうがわかりやすいじゃないですか。

加登谷:はい。

福本先生:すごく便利になりましたよね。すぐ画像も出てくるし。いろんな角度での新しいアクティブラーニングとしての中で応用できるものもありますので。いずれにしても道具だからさ、それをどういうふうに使おうかっていう先生たちの工夫じゃないかな。そういうものを使って何をやろうかってなったときに、これにのめり込んでしまったらまた逆効果なんだけど。道具としてここまでできるよねっていうのがあったら楽しいですよね。

編集部:多分ですね、私思うんですけど、iPadを使うことによってかなり教員組織が困っている稼働の極大化っていうところと、それから生徒の勉強の効率化、これが両方ともはかれると思うんですよ。

福本先生:この間ね、オリエンテーション合宿でビブリオバトルをやったんですよ。そのときどうやって発表させようかなって思って、iPadを20台持っていって、その場でKeynoteの使い方を教えて(モバイルデバイスのためにつくられた、プレゼンテーション用アプリケーション)。そしたら子どもってやっぱり早いね、ぱっぱぱっぱ使っちゃって。プレゼンもKeynoteを使ってやれるわけ。

編集部:はい。

福本先生:するとビブリオバトルだからこの本はこういう本ですよって写真を撮って中身をまとめていって。全部プレゼン資料作っちゃってさ。それで、ただ作った資料を読むだけじゃなくて、自分の言葉でしゃべっている生徒がやっぱり優勝しちゃったね。だから使い方だと思うんですよ。英作文だと全員の英作文が一遍に見れるようになりますから。

編集部:そうですよね。

福本先生:この中で正しいものを選べ、探せっていうと今まで隣同士で答えを見比べて間違ったところをお互い訂正してごらんって言っていたのと全く一緒なんですよ。あと保護者には全部お知らせはクラスでペーパーレスで流しています。

編集部:なるほど。

加登谷:一人ひとりの生徒の特性などを全員で共有しているというお話があったんですけども、明星では全員で共有するにあたって具体的にどのようなことをしていますか。

福本先生:クラス分析会とか進路検討会とかをやっていますよ。今年は、学年連絡会というのをやって、いわゆる学年の目標、それから1年間の進路計画、行事計画、それにHR計画をつけて、各教科のシラバスの共有会を非常勤の先生方も含めてやりました。あとは一人ひとりの生徒たちが時期を決めて進路と学年団と共有して「この生徒は成績が悪いけど何で?」っていう話をして、「ハンドボール部ですから」みたいな。(笑)

加登谷:笑

福本先生:それを理由にするなとか何とか言いながら、この子は将来どうするのとかいうような話までやりながら。3年生のこの時期だったら、この子はどこに行きたがってるんだと。この成績では通らないけど、どうするんだと。推薦で何とかしてあげるのか、推薦がだめだったらどうするんだとか全部。

編集部:一人ひとりですか?

福本先生:一人ひとり。クラス分析会とか進路検討会とかそういう会議が頻繁に行われています。

加登谷:私が・・・。

福本先生:あなたの学年からです。(笑) 基本的には一人ひとりの進路実現。夢をどうかなえてあげるか。かなえるのは本人ですから、それをどう背中を押してあげるか。教員ってね、背中を押してあげるぐらいしかできないんですよ。

[合格実績推移]

⭕️⭕️2016年度の進学実績についての感想と評価⭕️⭕️

加登谷:では次に移ります。教育のこととは少し違うことになると思うんですけども、具体的な進学実績の目標についてお聞きしたいと思います。2016年度の進学実績がこちらにあるんですけども、こちらについてのご感想または評価を教えてください。

福本先生:この学年はですね、中1のときから英語に力を入れてきた学年ですね。

加登谷:はい。

福本先生:特に私立大学に一番必要な英語が一番強かったということがあって。いろんな大学に通りやすい状況は作っていますよね。あとは、それぞれの教科担当者がよく頑張って生徒たちもよく頑張ったと。センター試験は今は国公立のためだけじゃなくて私立で使うこともできるので、12月の期末テストが終わってから直前までずっとセンターの対策を一ヶ所に集めてやり続けたんですよ。それで最後の1カ月間くらいの対策がきちんとできてたということで、センターもすごくよくできて。本科を含めてほとんどが全国平均並みになったんですよ。

加登谷:おお。確かに早慶上理のこの合格者数を見ても・・・。

福本先生:英語が強かったからですよ。

⭕️⭕️2017年度から5カ年の進学実績目標⭕️⭕️

加登谷:では、2016年度はこの辺にしておきまして、次2017年度から5カ年の進学実績の目標を教えていただけますか。

福本先生:そうですね、国公立に30〜50人、早慶上理に50〜100人、GMARCH単独で150人は行けたらいいなと。すごいなこれ。(笑)

加登谷:すごいですね。

⭕️⭕️MGS一期生の代の進学実績目標⭕️⭕️

加登谷:MGSのクラスが設置されたのは今年からですよね・・・去年から?

福本先生:去年から。今2年目。

加登谷:MGSのクラスが大学受験ってなると来年ということになると思うんですけども、そのMGS一期生の代の進学実績の目標・・・。

福本先生:国公立に20人ぐらい行ってほしいなと思います。それで早慶上理で今年が23人?

加登谷:はい。

福本先生:早慶上理で50人くらい。

編集部:それはMGSの中でですか?

福本先生:はい。MGS二クラスですね。進学実績じゃなくて合格実績ですから。30〜50人は行けないかなあと思っているんですけど。

【※編集部注釈:MGS(Meisei Global Science)・・・平成28年度入学生より、難関国公立大・私立大学への進学を目指す生徒を対象としたクラスを設置。中学に1クラス、高校に2クラス設置。】

加登谷:次はですね、勉強以外の各種活動、例えば委員会活動とか部活動について、今のこの明星の改革によって活動日数や時間その他変わるところはありますか?

福本先生:特にないと思います。

加登谷:そのままで。

福本先生:ただ生徒には、学校生活・学校活動はすべて積極的にかかわるように言っています。中途半端にやるんじゃないよと。

加登谷:はい。

福本先生:結局ですね、お勉強っていうと教科学力の話ばかりしているんだけど、交流して学んでいろんなものを表現して、学校の活動の中でもいろんなことを学んで、それと教科学力が一緒になって学力がつくんですよっていう話です。

加登谷:はい。

福本先生:行事や部活なんかを一生懸命やる人のほうが頭を使っているんですよ。それがそのまま学ぶ力なんです。成績がよくなる子っていうのは基本的には授業をまじめに聞いてる子じゃないんです。寝ているとき以外は頭を使っている子なんです。

加登谷:なるほど、はい。

福本先生:だからこういうことに積極的にかかわらない生徒はね、頭を使う場面がないんですよ。それがそのまま教科学力にもつながってくる。

加登谷:なるほどですね。確かに実際に部活動に入っている生徒も多い印象もありますし、委員会もほぼ全員が入りますよね。そういった活動が・・・。

福本先生:そういった活動の中でも、授業のときに言われていることがどんなことなんだろう、なぜこんなことを言われているんだろう、それをどう解釈したらいいんだろうなって頭を使っていくわけ。同じなんですよ。だから部活動で使う頭と教科学力で使う頭は、実は一緒なんです。

加登谷:あーなるほど。勉強するためにも、勉強以外の学習も・・・。

福本先生:そう。そこで頑張ることで頭を使うからそのまま勉強のときにも応用できる。

加登谷:そういった機会が多い印象を私は受けました、高校にいるときに。

福本先生:そういう意味では高校の体験学習っていうのは初代の児玉九十先生が考えられたのは、頭で考えたってどうしようもないじゃないかと。実際にやってみて初めて身につくんだっていうのがよくわかるんだと思います。

そういう意味ではいろんな体験学習があることは必要だろうと思います。そこだけでやっていると今度は基礎学力ができてなくて、こっちで体験学習をやるんだったらここで基礎学力を身につけるんだよっていうふうな、そういう教育のシステマティックなものが必要になるんじゃないかなと。

「明星高等学校の教育ビジョン」

福本先生:小学校の親御さんに対して伝えたいのは、この学校は成績が悪くても絶対に見捨てないとうこと。本当に手をかける。成績が悪くてもできなくても。そこは他の学校よりも丁寧だと思う。それが成果としてきちんと出てるかっていうと出てない。だからそこが出ると全然違うと思う。

編集部:多分そこにつながっていく話だと思うんですけど、加登谷さんってちゃんとした授業をやっているいい大学に入られたじゃないですか、結果として。

加登谷:はい。(笑)

編集部:それはよかったですか?

加登谷:よかった・・・私が通っている大学が歴代の先輩方も多い大学ですし、有名といいますか。そういった大学は伝統も実績もありますし、そういったところで、もちろん授業もそうなんですけど、先につながるキャリア教育とかもすごく充実していて。そういった面では名の知れたと言いますか、有名な大学に入れたことで・・・。

福本先生:世界が広がるんだよ。

加登谷:それはすごく感じます。

福本先生:だから東大に行けば一番多様性がある。というか多様な人物がいる。

編集部:そうですね。それは間違いないですね。

福本先生:やっぱり有名な大学に行けば行くほど世界が広がる。

加登谷:それはすごく感じます。

編集部:そういった中で、やりたいことに関しては6年間いろいろなかたちで相談されたり指導されたりしたわけですよね。

加登谷:はい。

編集部:そこに完全に合致したかどうかはわからないけど、そこを広げてくれるような進学先へ行けましたと。

加登谷:はい。

編集部:なるほど。先生にとって進学というのは先ほどの言葉をお借りすると、生徒がやりたいことを実現すること、そして、その背中を押すことが教員のすることだと。

福本先生:そう。だから学校のために進学してくれなくていいんですよ。進学実績を上げるために進学してくれなんて全然思っていなくて。今年でも首都大東京に推薦で通った子なんていうのは、私立を受けたら5校も10校も通るような成績なんだけど「もう受けなくてもいいですか?」って言われて「いいよ。」って。

編集部:そうですよね。英語の先生にインタビューしたときにも、そういう話が出たんですよね。「合格実績をたくさん上げるためだけに、受験をさせたりはうちは絶対しない!」と強く言われてましたよね。

だから進学っていうところで今まではいろんなことを経験させて勉強もさせていたんだけれども、そこをより生徒の次の未来を実現するために・・・。

福本先生:基本は明星の6年間で自己成長をどれだけできるかだと思うんですよ。自己発見して自己成長して自己実現にどれだけもっていくかというところが、この6年間の中でうちはいろんなプログラムがありますよと。できない生徒も手厚くやるし、それが成果につながるともっといいんだけれど。

編集部:もう少し生徒がどういうふうに望んでるか、いろんなことをさせるっていうところをお聞きしたのですが、今までは短針案的だった短いスパンのところで考えられてたのをさらに6年間だけじゃなくて、次の4年やそれからもっと先というところまで含めて自己実現させてあげようっていうことですか。

福本先生:そうです。自分に気づかせて自分を成長させる場面をいっぱい作ってやろうというのが中学校のところからですよね。高校から入ってくるとどうしても受験っていうところに集約されていきますので。中学校の3年間を受験のための3年間と見るのか、御三家みたいに。結局開成に行っても視聴率4割(塾に通わない生徒の割合)でしょ。あとは塾の宿題をやってますよね。あとは鉄緑会に行ったりいろいろなところに行って勉強してるのが御三家じゃないですか。

編集部:はい。

福本先生:そこのところがわかりきっているから、そこに教育の本質を持っていってるのが開成・麻布じゃないですか。

編集部:なるほど。

福本先生:明星はそういう生徒たちじゃないわけであってね。本当にお勉強のできない生徒からお勉強のできる生徒まで、開成レベルから一番下までのごった混ぜの学校なんですよ。

編集部:なるほど。

福本先生:ある意味教育困難校ですよ。だから百貨店って言ったんです。どのレベルで来ても大切にしますよと。一人ひとりの自己実現に対してのお世話をしますよというようなスタンスで僕はいいと思っているんですよ。

ここに(明星高等学校の教育ビジョン)も書いてあるけど、MGSは国公立大学・難関私立大学を目指しましょうねなんだけど、本科のほうは一般入試にチャレンジするGMARCH+の生徒と、志望大学をきちんと推薦・AOで実現していく。だから行きたい大学がちゃんとあるよねっていう話だよね。これで明星大学が全部さらにカバーしてると。こういうセーフティネットですよ。これはある意味安全パイがここにあるわけ。

加登谷:明星大学という。そうですね、友達とかが推薦とかAOとかをやっているときに、すごく先生方が作文を何回も見てくださったり、面接の練習してくださったりとかしてるのをすごく見てきたので。その一人ひとりに対してが。

福本先生:手厚い指導がね。それは公立にはないですよ。

「今日のお話を聞いて、今行われている改革に対する印象が変わりました」

編集部:ここ数ヶ月、加登谷さんといろいろ今後明星中学校、高校がどうなっていくのかっていうところで考えて話をしてきたじゃないですか。

加登谷:はい。

編集部:自分がこういう学校になってほしいと思うところと、今日のお話を聞いていかがでした?

加登谷:少し前に保護者の方とお話させていただいたときに、私も同じ共通認識があったんですけど、勉強にすごく力を入れていて、言い方がすごく悪くなってしまうんですけど、それ以外のことがすごく疎かになってしまうというか。勉強に一番の重点を置いているほうに変わってしまっているっていう印象があったんですね、このお話をする前までは。でも今日のお話を聞いてそれは違ったなと。自分の認識が違ったなっていうのが一番の印象で。

福本先生:うん。(笑)

加登谷:勉強はもちろんですけど、勉強以外のこともすべて学ぶ、よく生きるために。すごく安い言葉にはなるんですけど、安心したといいますか。何かホッとしました。

編集部:そうだね、それはありますね。

福本先生:基本的には人間教育ですよ。結局明星の生徒たちっていうのは明星の6年間ないしは3年間で人間として成長するんだよというところに重きを置きますね。学習指導っていうのはその中の当然のことなの。One of them. 人間の能力ってね、たたけばたたくほど伸びるんだよ。(笑)そこが面白い。

加登谷:そうですね、この年間計画(下記参照)を見ても、勉強のここに考査があり進研模試があり、進路の行事だったり学校の行事だったり、総合的な学習だったり。すごくいろんなことがあって、これらがすべて明星のよさを表している気がしますね。勉強もそうですけど、職業観について考えるとか、芸術鑑賞教室とか、レステーションコンテストもありますし。いろんなものがあることによって先ほどおっしゃっていた百貨店を表しているような気がします。

福本先生:いいヒントだな。これをそのまま百貨店にしちゃおう。(笑)1階から12階までありますとか言ってさ。あっはっは。

編集部:福本先生は恐らく熊本高校時代からずっと同じことをやられているんですよね。

福本先生:そうです。結局僕はベネッセの情報紙でよく、「受験生である前に人間であれ」って書いてたんですよ。

編集部:明星のもともと持っているいいところに大学の入試の対応力(ベネッセの持ついいところ)が加わる。これによってさらに世界を広げてあげようっていうことですよね。

福本先生:そうそう。

編集部:熊本高校の場合には大学入試への対応力ばかりだったから、バランスを取って人間力であるとかそういったところをつけられたと。ベネッセの場合にはそれを水平展開でもっと広くやられてましたと。それをもう一回明星の中で集中的にやられるということですよね。

福本先生:だから熊本高校だからできたことではなくて、僕は明星でもできると思っていて。

編集部:どこでも。

福本先生:どこでも本質的なものは変わらないと思うんですよね。

編集部:わかりました。ありがとうございました、長時間。

福本先生:いえいえ。

加登谷:ありがとうございました。

↓(参考資料:2017年度第1学年年間学習指導計画)

編集部注釈:考査、模擬試験、芸術鑑賞教室、職業観について考える、レステーションコンテストなど、いろいろなプログラムが4月から3月まで揃っています。

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