× ×
母校取材
2016年12月13日

「アクティブラーニング型授業の導入で授業スタイルも大きく転換しました。」

取材日:2016年12月13日
インタビュイー: 数学科 学年主任 松井講介先生
インタビュアー:東京大学教養学部文科一類1年 岡野源

岡野:先生になった一番の動機はなんですか?

松井先生:教えることと、子供たちが成長していく過程を見るのが好きだからという、この2点です。

岡野:これまでに習った中で尊敬できる先生を、具体的に教えてください。

松井先生:中学校の頃の部活の先生です。サッカー部の顧問だったんですけれども、とても怖くて甘えは絶対に許してくれない半面、生徒達の考えてることをよく汲み取ってくれる先生でした。自分自身も、そういうところにすごく影響を受けましたね。

岡野:松井先生は、確かに怖いところもあったんですけど、それよりも、すごく親身になってくれる先生だなと感じました。

編集部:例えば、どういった場面でそう感じることがありましたか?

岡野:私は松井先生の授業を受ける機会が多かったんですけど、すごく分かりやすい授業をしてくれる先生だと思いましたし、あと、大学進学の時に1回だけ相談をさせていただいたことがあり、そういうところでもすごくお世話になりましたね。

岡野:教師になった直後と現在とで先生ご自身で大きく変わったことはありますか?

松井先生:端的に言えば、最初の頃は生徒に人気がある先生になりたかった。今は、生徒の人気だけではなく生徒が力をつけるには何をすればいいのかを考え、導いてあげられる先生になりたいと思うようになりましたね。

岡野:なるほど。そういえば先生って、学年ごとに生徒に対する接し方が変わりますよね。

松井先生:そうですね。成長に合わせて変えています。

岡野::それこそ、私が中等1年生の時の先生はすごく怖かったです。課題を出していない人に対しては傍から見ても縮み上がってしまうくらいの剣幕で怒ったりして。

一同:(笑)

岡野:ある時なんかは説教で1時間ぐらい使ったんじゃないかな。それがすごく印象に残っています。

松井先生:今はしないけどね、そういうことは。(笑)

岡野:それこそ、中等5年生まではみんなすごく怯えきっていたんですけど、慣れてくるとだんだん優しく接してくれることも多くなりましたよね。

松井先生:6年間という長いスパンでの教育なので、そこはあえて意識的に変えていますし、あとは生徒達が成長してだんだん大人同士の会話ができるようになってくると、今度はそれに合わせて接するようにしています。

岡野:好きな本、影響を受けた本を教えてください。

松井先生:山ほどあります。今、生徒たちに薦めている冲方丁の「天地明察」もその一つ。この本は、江戸時代の暦を作った人が主人公なんですけど、元々囲碁の専門家で、数学や天文学を学ぶことも好きだったんですね。その彼が、先輩や周りの人達に支えられ、ついには歴史に残る大仕事を成し遂げたというストーリーなんですけど、こういう生き方って面白いなと思いました。

「天地明察」冲方丁(著)

岡野:大学に行くとどんな良いことがあるかと生徒から質問されたら、どう答えますか?

松井先生:自分の将来の可能性が広がる、この一言に尽きますよね。大学に行くのと行かないのとではやっぱり大きく違います。今のご時世、大学に入学していなければ就けない仕事が山ほどあるので。

岡野:それはいろいろなところで痛感しますね。大学では専門的な勉強ができることはもちろん、勉強以外にもいろいろなことに挑戦できる機会が多いので、僕自身はとても楽しみながら大学生活を送っていますが、今と昔とでは大学のあり方って違ってくるものなんですか?

松井先生:大学の授業や教育そのものが昔とだいぶ変わって来ているところもあって、僕らの頃は出席だけ取れればなんとかなりましたけど、今の大学ではそういうわけにもいかないですし、やっぱり学問を追究していく楽しさをしっかりと教えてくれるので、そういう意味では良い時代になったなっていう気はしますね。

岡野:中高一貫校にあって、一般の中学校にないものといったらなんでしょうか?

松井先生:僕自身、桐蔭学園に来る前は公立中学で教員をしていたので、やはり3年間と6年間の差は非常に大きいなと実感しますね。6年間一緒にいた仲間との繋がりは卒業した後でも続くけど、3年間だけだと1回離れればそのまま疎遠になってしまうことの方が多いです。あと、私立は常に同じ先生がいてくれる。公立だと、3年経てばその先生は他の学校に移ってしまうので、そういう意味では、「魂のふるさと」のようなものが中高一貫校にはあるのかなと思います。

シンフォニーホール:これだけの大きさのホールは稀

岡野:桐蔭学園にあって他の私立にないものといったらなんですか?

松井先生:施設で言うと、シンフォニーホールでしょうか。一流のオーケストラの生演奏を聴いたり、芸術作品や映画も見ることができます。あれだけのホールを有している学校は、他にないんじゃないでしょうか。

岡野:そうですね。特に映画は、最近上映された作品も見ることができますよね。

松井先生:あれも専門のスタッフが、中学生や高校生には何を提供すれば喜んでくれるのかを考えてチョイスしてくれているんですよ。情操教育というのは、今はまだ分からなくても経験していくことで後に活きてくるものだと思います。

【編集部注釈: 桐蔭学園には、学内にオペラも上演できる本格的な舞台装置を備えた桐蔭学園シンフォニーホールがあり、松竹大歌舞伎やバレエ公演、劇団四季のミュージカル、国内外の有名オーケストラによる演奏会、映画鑑賞会など、年間を通して様々な質の高い芸術・文化に触れることができます。】

岡野:中学に合格した生徒に、勉強以外で一生懸命取り組んで欲しいことは何でしょうか?

松井先生:別に何でもいいと思います。部活動や委員会活動でもいいし、本が好きなら読書でもいいし。何か1つ、「僕はこれを一生懸命やったんだ」というものがある生徒とない生徒では、やっぱり大きく違ってくるんじゃないでしょうか。限られた時間の中でダラダラと過ごすのではなく、「あれもこれもやりたいし、やるからには一生懸命頑張りたい」と思ってくれる生徒をどんどん育てていきたいなと思っています。

岡野:そういえば中等前期の頃、勉強、部活、読書、何でもいいから一定時間使って取り組むように言われたことをすごく覚えていますね。

松井先生:1日の生活時間の中で4時間ほど勉強も含めた「知的な活動」に使い、自身を高めていこうという取り組みは今でも続いています。勉強しかり、部活動しかり、読書しかり。それ以外でも、テレビを見て感動したことも教養としてカウントしていい。

岡野:生徒達がタメになったなと思えるような経験を養ってもらうという意味では、すごく良い取り組みだなと思いました。

岡野:生徒からの相談で印象的な内容があったら教えてください。

松井先生:そういえば、岡野くんの相談も印象に残っていますね。理系のクラスなのに文系の大学に行きたいと言われて。結果的に推薦で東京大学の文科一類に受かったけれど、普通はどうしても推薦入試に頼ってしまう気持ちが少なからず出てくるし、もしうまくいかなかった時にリスタートすることがとても難しくなってしまうのですが、それもすべて踏まえた上でのあの決意と行動力はすごいなと今でも思います。

岡野:ありがとうございます。あの時は自分でも思うところがあって、推薦だけに頼らず自分の力でも頑張らなくてはというのをすごく感じていて、もしものためにちゃんと受験勉強も続けて行こうと思った時に、先生が後押ししてくれたのですごく心強かったし嬉しかったですね。おかげで今大学生活を楽しめているので、とても感謝しています。

岡野:どんな教材を使って授業をしていますか?

松井先生:学校全体でアクティブラーニングを導入し、iPadや電子黒板を使用する場が多くなってきていて、すごく電子化されてきたなとは感じます。生徒1人1人にiPadを持たせていますし、以前は板書をしてそれをノートに写すという教育をずっとやっていましたが、今ではほとんど板書はしなくなりました。覚えなければいけないことや必要なことをプリントにまとめて、それを電子黒板、もしくはiPadに送信し、そこに答えを書き込ませて、あとはその答えを使って1つの問題をみんなで話し合うという、そういう授業スタイルに大きく転換しましたね。

岡野:やっぱりその電子黒板とiPadの導入は、生徒にとっても良い効果をもたらしましたか?

松井先生:一概に良いかと言われると難しいですね。アクティブラーニングにしても電子黒板やICT機器にしても、結局はただのツールなので、教員自身にこれらを使ってどう授業を展開していくかを考える力がなければそれこそ宝の持ち腐れですし、だから、昔よりも教員の腕が余計に問われてくるのかもしれませんね。

「授業で使う教材について」

岡野:生徒の観察を日々どのようにしていますか?

松井先生:中等教育学校では、毎日必ず学習カードというものに、1日をどういう風に過ごしたかを記録して、提出してもらったらそれに先生がコメントを書いて返すという、要は交換日記みたいなことをしています。その中で見えてくるものもあるし、生徒のさまざまな変化に気付くことができます。

岡野:いじめがあった時、どう対応しますか?個人で対応するのか、チームで対応するのかというところを具体的に教えていただきたいなと。

松井先生:桐蔭学園では年2回、いじめ・いやがらせ調査というものを実施しています。それは、その場でなく必ず家に持ち帰って書いてもらいます。何故かと言うと、書いているところを見られるとそれがいじめの発生源になってしまう可能性があるからです。書いてもらったら、教員が1つ1つ手渡しで受け取って確認するという方法を取っています。まず、1個1個の事例に対して、担任が直接話をするか、それともグループで話し合うかを決めます。いずれにしても、当事者の生徒に一番寄り添える教員が話を聞いてあげるようにしています。

具体的な報告内容としては、「いじめの被害を受けてます」「自分が加害者になってしまったかもしれません」「いじめの現場を目撃しました」と、大きく分けてこの3つになりますが、世間一般で言われている「悪質ないじめ」に発展する前の状態で、遊びの延長だったり、力関係を示すためにやっていることの延長だったりする場合もあります。知らない間に加害者という報告をされてしまった生徒に対しては、そのつもりはなくても周りの生徒達がどういう風に見ているのかをちゃんと伝えてあげることが大事だと思います。そうすれば、それが抑止力になってくると思うし、自分の行動を見直す良い機会になるかと思っています。

岡野:授業についていけない生徒にはどのように対応をしていますか?先生方で対応する仕組みはありますか?また、逆に長所がある生徒にはどう対応しているかということも併せて教えてください。

松井先生:低学年のうちから、授業についていけなかったり特定の教科で苦手意識を持ってしまったりという問題を解決してあげるのがとても重要になってくると思います。中等後期生になった時に解決したのとしないのとでは大きく違ってくるので、学年全体として課題を出すこともあるし、去年からは卒業生が土曜日来て、授業についていけない生徒達の面倒を見てもらう取り組みをしています。年齢が近いこともあって親近感がわくのかな。我々教員よりも質問しやすいみたいで、今まで分からなかったところを理解できるようになる生徒が増えましたね。

【編集部注釈:eフォロー(チューター制度)・・・土曜日の放課後に桐蔭学園卒業生の現役大学生がチューターとして個別に指導を行っています。】

岡野:先生はご自身で人気があると思いますか?また、人気のある先生とはどんな先生でしょうか?

松井先生:さっき少し話しましたけど、教員になりたての頃はみんなから好きと言ってもらえる先生になりたかった。だけどある日、それは違うなと気付いて、「怖い先生と思われても、彼らが大人になった時に気付いてくれるものが何か1つでも残せたら、自分の教師像としてはありだな。」という気持ちで、そこからは心を鬼にしていろいろやりましたね。だから、私は自身が人気のある先生だとは全く思ってないですし求めていない。むしろ、「あの先生は怖いから絶対にヘタなことはできない」と思ってもらう方がありがたいです。(笑)それで、僕が思う人気のある先生とは、在学中の生徒だけではなく、卒業して彼らが大人になった後も、何かあれば相談しに訪ねて来る、そういうものだと思います。

岡野:それこそ、先生が学年主任としての学年集会で、先生のスピーチの中に教育信念みたいなものが垣間見える瞬間があって、すごく熱意のある先生だなと思いました。だからこそ、今でも先生のもとに訪ねる時があるんですけど、そういう意味では、先生も意外と人気がある先生なんじゃないかな。

松井先生:ありがとうございます。(笑)

岡野:学校の好きな点、もっとこうしたらいいのにという点を教えてください。

松井先生:学校の好きなところはいっぱいありますよ。例えば、先生達がとても熱心で、僕が学年主任として提示したものに対して期待以上の対応をしてくれる、そういう教員集団というのはとてもありがたいなと思います。教員が活性化すればその雰囲気は生徒にも伝わって、その結果いろんな場面で良い学校だと思ってもらえるし、卒業してからも、この学校が好きだと言ってもらえたら、ありがたいですよね。

岡野:桐蔭学園はOBとの繋がりがすごく強いですよね。

松井先生:そうですね。逆に、もっとこうしたらいいと思う点は、学校の規模が大きすぎてなかなか動きにくいところです。私の個人的な感想ですけど、今、学校全体がアクティブラーニングに転換している過渡期でもあるので、いろんなものがたくさん入って来てとにかく忙しすぎる。もう少し時間的、あるいは精神的な余裕があってもいいなという気はします。

岡野:僕の時はまだアクティブラーニングは取り入れられてなかったんですけど、やっぱりすごい変化だったのかなと思います。

松井先生:そうですね。一部の先生方が先行してやっているけれどもまだ学園全体には浸透しきっていないというのが現実です。

岡野:桐蔭学園に進学した生徒にはどんな成長を望みますか?

松井先生:この学校を卒業した後、大学生、あるいは社会に出てから大きく人生を転換して成長していく生徒もたくさんいるし、もっと言えば、中学高校の6年間は人生の核を作る時期でもあるし、たとえ在学中にその芯をしっかり確立できなくても、最終的に人生の拠り所になるものを持ってくれたらいいなと思います。

岡野:自分のお子さんを勤務している学校に入学させたいと思いますか?

松井先生:実を言うと、私の子供はもう別の学校に入学しているんですよね。やっぱり学校選びってどうしても縁や運があるので必ずしも自分の勤務校に入学させるというわけではないけれど、実際に入るか入らないかは別として自分の子供や自分の親戚であっても、良い学校だよと言えるよう自分も頑張りたいとは思っています。

岡野:それこそ、学校全体で良くなろうとしている意志をすごく感じるので、そういう意味ではこれからもっと良い学校になっていくんじゃないかなと思いますね。

岡野:僕自身この学校に入って良かったなと思っているし、学校生活の中で得られたこともたくさんあるんですけど、ただ、人に薦めるかと言ったら結構迷います。

松井先生:なぜ?(笑)

岡野:この学校の教育システムって結構好き嫌いが分かれると思うんです。それこそ、習熟度別授業だと成績別でクラスを分けるので、実際に下位クラスに入ると、この先自分は上がって行けるのだろうかと悩んでしまい、そこでずっと低迷してしまう生徒もいたし、上位にいたのに途中で折れてしまった生徒もいたので、人を選ぶ学校だなっていうのは当時から少し思っていました。

松井先生:システム上、どうしても最上位、最下位という格差が出てきてしまう。そこは本当にジレンマだよね。ただ、我々が目標としてやらなければならないことは、下位クラスの生徒が、自分は最下位だからダメなんだと思わずに、そこでその悔しさを自分の糧にして、これからしっかり学んでいこうと思えるようにしてあげることだと思います。

岡野:そうですね。それこそ、みんな最下位クラスに行きたくないと思っていますけど、最下位クラスの先生方だって生徒の成績が上がるよう、すごく頑張ってくれると思うんです。やっぱりそれは個々の性格の問題が出ちゃうのかなって。

松井先生:そうだね。良い結果も悪い結果も、生きていればあると思う。それをどう受け止めるのかというのはその人次第だから、たとえ悪い結果であっても、落ち込んで終わりではなく、次頑張ろうというモチベーションを上げるための糧にできたとしたら、その失敗は決して負けではない。そんなことも伝えてあげたいなとは思っているんだけど、なかなか難しいですよね。

岡野:伝わるか伝わらないかは生徒によって結構違うじゃないですか。

松井先生:そこが教育の難しいところでもあり、面白いところでもあります。100%にはほど遠い世界の中で、どれだけ我々教員自身が意識を持って100%に近づけるよう努力し続けていけるか、それを汲み取って伝わってくれる生徒、あるいは保護者の方がどれだけいてくれるかが重要になってくると思います。

【※編集部注釈:習熟度別授業・・・英語、数学、国語など教科ごとに習熟度別に授業を行います。習熟度別クラスは年4回の定期考査の成績で入れ替わりがあります。 α・・・成績上位クラス β・・・成績中位クラス】

  • 在校生インタビュー
  • 母校インタビュー
  • 生徒会長
×

Document request 資料請求

各学校のパンフレットなどご請求いただくことができます。
ご請求は下記ボタンをクリックください。

資料請求をする

PAGETOP